6月4日
スーパー“トトイチ”は、1日で1年分の売上を達成するようになった。
どうやったか不思議に思うかもしれない。けど、やり方は至極簡単だ。
私がレジに立って、トマトを買おうとした客が「値札がついてなかったぞ! これいくらだ!?」と怒ってきた時に、「財布1個分の価格だ」と言い渡すだけでいい。
店員の教育も徹底した。「最高の客というのは、何も言わず、何も商品を持たずに、レジに万札を置いて帰る客だ」と教え込む。
これが功を奏したのか、入店した客から、まず財布を預かるということを自主的に行うようになった。
財布の中身が空の客は、店員がつきそってATMや、即金無人契約機のとこまで連れて行く。
こんなことをすれば客足が遠のくと思われるかもだが、店員たちは町へと繰り出し、駅前や商店街から客を捕まえて来るようになった。今も投網に入った客がバックヤードからトラックで運び込まれている。
次第に店員たちの雰囲気も変わっていった。最初は地味なエプロン姿だったが、今では客に舐められてはいけないと、肩にトゲパットをつけ、革ジャンを着て、自転車のチェーンを全身に巻き付けたり、ソリコミを入れたり、カラフルなモヒカンヘアーになっている。
今も釘バットで客を殴打しながら、「いらっしゃいませぇー! いらっしゃいませぇー!」と狂ったように連呼している。なんとも前衛的な接客だ。
コスト削減のために納品トラックも廃止した。品薄になったら、検品部隊が隣のスーパーへ調達に向かう。
入口にいた立ってるだけのジジイ警備員もクビだ。店員が鉄パイプを持ってバイクで巡回した方がよほど効率がいい。
品出しも効率化させるため、バイク通勤から、そのまま店内もバイク移動を認めた。
棚なんて邪魔なものは全部取り壊させたので、品物は地面に直置きだ。品分け整理はしない。客に探させればいい。
こうして店員たちも活き活き仕事ができるようになった。「ヒャッハー!」なんて言っててとても楽しそうだ。
次第に店員たちが私のことを『メシヤ』とか呼んで来るようになったんで、『私は
バトルに勤しんでいたガチムチ店長が、唖然として、「私のお店が……」とか呟いてたけど、店員たちはシカトしていた。