6月10日
ヒゲが「ちょっと待ったー!」と現れた。
え? 昨日の話だろうって? そうだよ。認知症? うちのおじいちゃんみたいだね。でも昨日、私に小遣いをあげたかどうかはちゃんと覚えてるから困ったものだ。
そう。これは説明するまでもなく昨日の続きだ。あのままだと文字数がオーバーするから、続きは今日にさせた。証拠に、スーパー“トトイチ”には国家権力の車が多数止まっていて、エリマネが青服相手に土下座している。
ヒゲがこっちを見てるんで、「なんだよ。さっさと続きをやれよ」と促したら、何とも気まずそうに頷いた。
「2人の交際は認められない! うちの公式はBoys Loveはなしだ! 二次創作で充分だろ!」とヒゲが叫んだ。
カラテは真面目な顔をして、「我々は愛し合っているんでごわす」と、メガネは「カラテの元に戻るために呪いを解いたんだ」と説明する。
呪いを解いたのは私の功績のはずだが、まあBL展開だから許す。ワニンゴが気を利かせてポップコーンと炭酸飲料を持ってきたが、トトイチの汚染された食品だったのでビンタした。
ヒゲはプルプルして、「し、子孫だって……つ、作れないじゃないか」というBL禁止ワードを使った。
私は手を上げる。ヒゲが「はい。勇者くん」と指差してきたんで、「勇者様だろ。頃すぞ」と怒っておく。
「子孫の問題は大丈夫。魔王を倒した暁には、男でも妊娠できるように人類を強制進化させてやる。“強制進化の秘術”というやつだ」と説明した。
カレキが「そ、そんなものがあるので?」と聞いてきたんで、「知らない」と答えると、全員が首を傾げる。
「魔王なんだからそれぐらいの秘術は知っていて然るべきだろ。なかったとしたら、無理やりにでも作らせる。不可能を可能にさせるのが勇者だ」と言うと、ワニンゴが「またか」とか言い出したんでビンタした。
「それはそうと、ヒゲ。お前の後ろで誰かが見てるぞ」と言うと、ヒゲが振り返る。ヒゲの後ろには、電柱の陰で中折帽子にトレンチコート姿のチビデブのオッサンがいた。
ヒゲが「デブロ警部……」とか言って驚いているが、私は「ちょっと待って」と止める。
そう。日記の問題だ。デブロ警部には「悪いけどまた明日来て」と言って、全員に解散を命じた。
エリマネはちょうど手錠を掛けられてパトカーに乗るところだった。