6月11日
私の日記に細工しやがった。
赤黒い染みがページの端についていたから、なんだろうと思って調べたら、ページとページの間に書き込みをしてやがった。
そういや以前にコソコソ馬車の中で何かしていてビンタしたことがあったけど、まさかこんなことをしでかしていたとは。
ワニンゴを睨むと、「まずい!」とか言い出したんで、「何がまずい? 言ってみろ」と近づいて行く。
ワニンゴは「神様! 助けてぇ!」とか叫んでるけど、「神などいない。いるのは、私か、私でないものだけだ。ということは私が神だ」と言ったら今度は念仏を唱え始めた。
「お前は勘違いしている。私のことをまるで分かっていない」と言ったら、カレキが同意して頷いた。
「私はお前を“女の子にして”、また“男の子”に戻して、そしてまた“女の子にする”ことも造作もない」と伝えた。カレキが嬉しそうにバナナを皮を剥いたり、元に戻したりを繰り返して、どういうことか簡単に説明してくれる。
「よく聞け。私の力を持ってすれば、お前を“成れの果て”にした後に元の姿に戻すことも、またカートリッジに詰めた後に元の姿に戻すこともできる。私は間違えない」と説明したら、ワニンゴは「どこのボン〇ルド!?」と喚いた。失礼な。あんな人格破綻者と私を一緒にするな。
これからワニンゴは数日間、男の子と、女の子と“成れの果て”とカートリッジを行ったり来たりする忙しい日々が続くことになるだろう。期間は私が飽きるまでだ。
カレキが「ね? ワニンゴ、ごめんなさいしよ? ね? 素直にごめんなさいすれば許して貰えるかも知れないから」と説得している。
私も“鬼”ではない。使えないからって部下を皆頃しにしたりはしない。したとしても、復活させて、カートリッジして再利用だ。
ワニンゴが私に向かって直立不動の姿勢を取ると、90度直角に頭を下げて「ごめんなチャッピーニ!」と謝ってきたんで、「なんだその謝罪はふざけてんのか」と思いっきりビンタしたら、“トトイチ”の店先に突っ込んで店が崩壊した。
営業停止の紙を貼っていた役所の人たちも巻き込んでしまったが、これは天災だ。天災にでも当たってしまった運の悪さを呪うといい。
ヒゲが「あの」と声をかけていたんで「あ。いたのか」と言うと、メガネとカラテとトグロ警部は頷く。
「今日はおしまい。また明日にしろ」と言ったら、全員が「えー」とか言ってたんで、ビンタしようとしたら慌てて宿へと戻って行った。