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6月24日

6月24日


 ダーマス御殿にやって来た。


 受付に行くと、すだれハゲの黒縁メガネにアームカバーをしたオッサンが「転職希望? ならこれとこれとこれを書いて。そこの番号機から番号札とって、呼ばれるまで待ってて」と言われる。


 結構、書く書類って多いんだな。待っている人も多い。100人はいる。


 書類を書いて待合席に行ったら、オバハンが「もう、1時間以上も待ってるのに!」と怒り狂って受付に行ったが、すだれハゲに「順番ですから」「待ってるのは他のお客様も同じなんで」とか言われて、不完全燃焼という顔で戻って来る。


 人が待ってる割には、オッサンの後ろの偉っぽそうな上司は特に何もやってない。立ち話をしているヤツらもいる。


 20分くらいして呼ばれて、書いた書類を持って行く。すだれハゲは「確認しますんで、少しお待ちを」と言って、また10分後くらいに札番号で呼ばれ、「こことここ、記入漏れがあるから書いて。あとハンコも必要」と言われる。


 最初から説明しろよと少しイライラしながら、指摘されたところを書き足し、ハンコも押して持って行く。


 すだれハゲは、また「確認しますんで、少しお待ちを」と言って、やっぱり10分後くらいに札番号で呼ばれ、「身分証明書と、証明写真は? え? 写真がないと申請できないよ。そこに機械あるんで撮って。あと、勇者だと示す国からの証書とかはある?」とか言われる。


 「そんなものない」と言うと、「では、まず勇者登録確認謄本を出す必要があるんで、これとこれとそれとあれとこれにも記入して」と山のような書類を渡される。


 「最初に言えや」という言葉を怒りと共に呑み込もうとして、奥の従業員が「今日、オッパブ行っちゃう?」「いーね、5時上がりで即イッちゃう♡」とかいうやり取りが聞こえて怒りが限界突破した。


 すだれハゲを往復ビンタする。カウンターに乗り込み、仕事もせずにエロ話に華を咲かしているクソ野郎にダブルラリアットをキメる。


 「殿様商売だな! 無駄なことやらせねぇで、さっさと手続きしろや!」と怒った。


 1分後、“正統派ヒロイン”の資格カードが渡される。なんだ。やればできんじゃないか。


 注意書きまで渡してこようとしたんで、「SDGsだろうが! 無駄な紙なんてやめちまえ!」と蹴り飛ばした。


 さっきのオバサンが立ち上がって「よく言ってくれた! あなたは勇者よ!」と言い、待っていたお客さんたちが褒め称えてくれたが、残念だけど、私は今は正統派ヒロインなんだよね。

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