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6月29日(その4)

『ドーピング・ちゃんこ鍋とは』


とある回復系力士が、白味噌と赤味噌によるスタンダードな合わせ味噌を使い、鶏ガラをベースにしつつ、カツオと昆布による出汁の完璧な配合、そして寸分も狂いのない計算され尽くした丁寧な煮炊きを行い、偶然に生み出された究極霊薬ウルトラエリクサー。別名、不死鳥フェニックスちゃんこ鍋。


いわゆる万能薬。不老不死になるのは当然、HPエッチポイントSPサドポイントMPマゾポイントの完全回復のみならず、毒状態、石化状態、ED、AGA、少子高齢化、失われた年金問題、物価高騰、自然環境問題、この小説が書籍化しない問題、そして隣の奥さんに告白する勇気が出ない…等々、諸々のすべてを解決する奇跡の薬。


長年の放置で熟成され、なぜか様々な高レベルなモンスターのエキスまで入って、効力がさらにパゥワーアップしている。


とある武神から、とある勇者に授けられたとされる伝説の課金アイテム。




──道草書房刊『これで脱童貞!② オタク系女子をベッドで満足させるエロアイテム知識大辞泉』より




★★★


6月29日(その4)


 「そんなわけで、これを一口飲むと私はレベル99に戻る。いや、限界突破して999になるかも知れない」と言うと、ワニンゴはすでに後ろを向いて走り出していた。


 知らなかったのか? 大勇者からは逃げられない。


 ページ数的にこの後のことは省略するが、ワニンゴは教会で神父に、「おお、ワニンゴよ! タヒんでしまうとは……なんじゃこりゃー!!!」と、“原型をとどめないカタチ”になったことに驚かれた。


 「魔王(性欲)が悪い」と説明したら蘇生してくれたけど、たくさんの神官たちが集まって「生き返らせても複数のバッドステータスが?!」とか、「なんだこの強烈な呪いは?! 魔王め! ここまでヒドイのは見たことがないぞ!」とか訳わからんことで揉めていた。


 まあ、時間がかかりそうなんで、あとはアナルゴとフグリ田だな。


 2人は人生が終わってしまったように真っ白に燃え尽きていた。“明日のジ●ー”みたいだった。


 「そうだな。一方的なのは好かないから、お前たちもドーピング・ちゃんこ鍋を食え。対等な状態でやろう」と言ったら、「これ食べたら我々もレベル999に?」とか聞いてきたんで、「なるわけないだろ。これ勇者専用アイテムなんだから。食ったら、あそこのワニンゴみたいになる」と言ったら静かに泣いていた。


 こんなに旨いのに食わないのか。もったいないな。

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