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7月3日(その1)

7月3日(その1)


 またヤツが、ワニバスでヨガ教室に行ったタイミングで侵入する。


 「しかし、こう毎日、自由にさせてるのか?」と聞いたら、「専業主婦だし、上流階級の嗜みってやつで」とかフグリ田は言っていたが、いまコイツが着ているのは某デパートの格安の量販スーツだし、革靴もフェイクレザーで、1,980円くらいで地元のファッションセンターとかで売ってるやつだ。どこが上流階級だ。


 「サ●ゼで飯食ったりしないの?」と尋ねたら、「とんでもなぁい! うちの妻は、全自動乳搾り器で搾った母乳しか飲まないようなセレブだよぉ!」と半狂乱になって騒いだんでビンタで沈静させた。


 どうやら、とんでもない勘違い女っぽいな。私なんて、おじいちゃんのスズメの涙ほどの年金でお小遣いを捻出しているってのに。ムカつく。


 平屋の中は荒れ放題で、掃除している形跡もない。専業主婦の仕事もろくにしてないようだ。


 ロボット掃除機はあったが、居間に転がっていた2つの白骨死体を途中まで吸い込んだところで停止していた。


 子供部屋の方に行くと、「ひどいやん! 姉さん!」と騒いでる声がした。フグリ田が「びゃああ!」とか奇声を上げて、廊下をナイロン靴下で滑りながら向かった。しかし、コイツは本当に足が臭いな。


 「エノキちゃん! カエンタケくん! サルノコシカケちゃん!」とフグリ田が叫び、「ダディDeath!」と、「「チンポウゲ兄さん」」と、荒縄に縛られたガキどもが喚いた。


 フグリ田チンポウゲ……チッ。テメェのフルネームなんか知りたくもなかったし、日記にも書きたくなかった。


 なんかムカついたんで、フグリ田とガキどもをビンタした。なんて不愉快なファミリーなんだ。


 そうしてるうちに、玄関の方であの熊みたいな雄叫びが聞こえてきた。


 「か、帰ってきた! ヤツが!」とフグリ田とガキどもが震える。


 「早くね?」って聞いたら、イガグリみてぇな頭の小学生……たぶん、カエンタケが「痩せないことに腹を立てて、コーチをぶん殴って帰ってきたんだよ!」とか言い、ナスみてぇな頭をした小学生……たぶんサルノコシカケが、「月に一度は揉めてるのよ!」とか言う。


 「ダイエット効果ないって分かってんなら、さっさとやめろや」って言ったら、「ムダだと分かっていても、やっちまうんDeath!」と、ボリューミーな七三分けをした園児……たぶん、エノキが言うた。


 ……本当に不愉快なファミリーだ。


 ページもまた跨ぐじゃないか。本当にクソが。

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