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7月3日(その2)

7月3日(その2)


 「あー、あそこの若奥様は怖いからなぁ〜」とか言いつつ、御用聞きのために原付バイクが走って来る。


 「ヴオオオオォッ!」という野太い咆哮がピタッと止まり、玄関前の黒いシルエットがそっちの方向を見やった。


 「あんた...今アタイのこの頭のこと、なんつった!」とか言い、「ちわぁ〜、み……エエッ?!」とかバイクから降りてきた男がびっくら仰天している。


 「このヘアースタイルが、ジ●ジョの主人公たちみてェーだとォ!?」、「そんなこと誰も言ってませんよぉ! 若奥様ぁ!」とかそんなやり取りをしてる最中に、巨大なリボルバーが火を噴いた! もちろん、シルエットがぶっ放したわけだ。


 ワニンゴ(呪)が馬車の方で、「あ、あれは.500マグナム弾を撃ち出す世界最強のリボルバーだぞ! 大型熊を倒すための銃を片手で撃っただとぉ!?」とか喚いていた。フグリ田が「東洋の最強スナイパーなんだ! 古今東西の重火器は全部扱えるぅ!」とか、今になってそんな情報を言いやがった。


 そして、御用聞きを始末したシルエットがこっちを向く……頭に3基のパラボラアンテナを装着した、血走った目をしている専業主婦。


 これがベニテング・武子らしい。


 顔はゴツゴツした岩のようで、体格は人間山脈と呼ばれるくらいはありそうだ。


 「チンポウゲ! テメェ! 勇者をうちに連れて来るとはどういう了見だぁい!?」とか口の端にアブクをためて怒鳴り、フグリ田が「ち、ちがうんだぁ! 誤解だよぉ! 武子ぉ!」と泣いて土下座している。


 ん? いま、膝がチクッとした……ぞ?


 「こ、これはボス・バトル突入ですよねぇ! でも、こっちには勇者様がいますからぁ!」とかロリコ。カレキとアナルゴと、キノコなガキどもも期待の眼差しを私に向けてくる。


 「ムリ。蚊に刺されたっぽい」と言うと、全員がキョトンとした。


 膝小僧のとこだ。くそ。よりにもよって、一番かきづらい窪んだところを刺しやがって。痒い。


 カレキが「いや、回復魔法か解毒魔法を使えば……」とか言ってるけど、そういう問題じゃない。


 「私を勇者と知ってて刺したならとても許すことはできない」と言うと、ヤツは私の鼻先をかすめてプゥーンと飛んで行きやがった。


 「お前らであの女を始末しろ。私は蚊を倒す」と命じる。


 カレキが「は? か、蚊なんてどうでも…」とか言うんで、「マラリアとかデング熱とか、年間60万もの人がタヒんでるんだぞ! どうでもいいはずあるか!」とビンタした。

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