「はいはい、問題ありません!」
『ハートシグナル』番組チームの責任者である藤田監督は最後の電話を切り、少し呆然とした。
さっき立て続けにかかってきた4本の電話は、すべて番組への出資を条件に「うちの社長をゲストとして出演させてほしい」というものだった。
この恋愛バラエティ番組は当初4人の男性ゲストと4人の女性ゲストで構成される予定だったが、今や男性ゲストはすべて超大物経営者揃い。
話題性という点では、二三線級の芸能人よりずっと強い——第5シーズンがヒットしないわけがない!
ただ一つ気になるのは、なぜこれら実業界の大物たちがぞろぞろ参加したがるのか?
おそらく誰か特定の女性ゲスト目当てだろう。
女性ゲスト4人は既に決定済み:映画女王のAnna、新進気鋭の若手女優・鈴木早紀、純粋な新人・白石香澄、そして「スイートハートさん」。
藤田監督の推測では、おそらくAnna目当てだろう。
何と言っても彼女は「男性が最も抱きしめたい女性」ランキングの第1位なのだから。
ゲストリストが確定し、収録が始まった。
男女ゲストは一つの別荘に共同生活し、女性ゲストは2階、男性ゲストは3階に住むことになっている。
篠宮初音はスーツケースを引きながら別荘に入り、スタッフの案内で自分の部屋へ向かった。
入ってからというもの、トイレ以外のあらゆる場所に設置されたカメラがずっと作動している。
監視されているような不快感はあったが、まあ来たからにはと、少しずつ慣れていくしかなかった。
手持無沙汰で、彼女はスーツケースから本を取り出し、ソファに座ってページをめくった。
読書は最近身につけた習慣で、彼女の心を落ち着かせてくれる。
どれくらい経っただろうか、スタッフが声をかけてきた。
「全員揃いましたので、下りて自己紹介してください」
篠宮初音は返事をして部屋を出ると、下の階には既に3人の女性ゲストが座っていた。
3人は揃って彼女を見つめ、好奇心に満ちた視線を向ける。
初音だけが仮面を着けていたのだ。
白石香澄は半面を覆う仮面姿の初音を見て、どこかで見覚えがあるような気がしたが、思い出せない。
篠宮初音も白石香澄を見た瞬間少し驚いたようだったが、すぐに平静を取り戻し、会釈してから席に着いた。
この4人の女性ゲストはそれぞれ個性的だった。
アンナーは圧倒的な存在感、鈴木早紀は愛らしさ、白石香澄はピュアな魅力、そして篠宮初音は半面を隠していながらも、仮面の下の絶世の美貌がうかがえ、まさに百花繚乱といった趣だった。
その時、階段から足音が聞こえた。
みんなが顔を上げると、4人の長身で抜群のスタイル、並外れた風格の男性たちが一緒に降りてくるのが見えた。
全員190cm近くあり、完璧な体型は芸能人以上に輝いていた。
今シーズンのゲストのルックスのレベルは歴代最高と言えるだろう。
東雲たくまを見た瞬間、白石香澄の目が輝いた。
彼が来てくれたんだ!私のため?すぐに駆け寄った。
「たくま、私に会いに来てくれたの?」
番組スタッフはモニターでこの光景を見て、納得した。
なるほど、大物たちが来た理由は白石香澄だったのか。
しかし次の瞬間、東雲たくまは嫌悪感たっぷりに半歩下がり、まるで香澄がウイルスであるかのように避けた。
「近寄るな」
たくまの視線は人々を飛び越え、まっすぐ篠宮初音に向けられた。
東雲明海と九条天闊も同じで、その熱い視線は隠す様子もなかった。
番組スタッフは即座に考えを改めた。
大物たちのターゲットは「スイートハートさん」だった!
3人の男が1人の女を争うという修羅場、これは視聴率の保証だ!
しかし篠宮初音は少しイライラしていた。
東雲たくま、東雲明海、九条天闊が来るとは思ってもみなかった。
彼らがここにいるということは、「スイートハートさん」が自分だと知っているということだ。
東雲たくまに公の場で叱責され、白石香澄の目はすぐに赤くなり、今にも泣きそうだった。
アンナーが早速雰囲気を和ませようとした。
「初対面ですから、まずは自己紹介しましょうか?」
Annaから始まり、順番に自己紹介が行われた。
最後は三井健治で、彼はH&Gチームのeスポーツ選手で、母親に無理やり参加させられ、純粋に休暇を楽しみ友達を作りに来ただけだった。
自己紹介の後は「ときめきセッション」ーー女性ゲストは第一印象で最も良かった男性ゲストに花を贈る。
アンナーは九条天闊を選び、鈴木早紀は東雲明海を選んだ。
白石香澄は無理やり花を東雲たくまに押し付けたが、彼に睨まれて手が震えた。
東雲たくまは緊張と期待でいっぱいだった。
篠宮初音は自分を選んでくれるだろうか?東雲明海と九条天闊も同様に、息を殺して見守った。
篠宮初音の視線は東雲たくまの顔には留まらず、東雲明海を素通りし、九条天闊に止まった。
天闊先輩が自由に歩けるのを見て、心から嬉しく思った。
この一幕を見て、東雲たくまと東雲明海は胸が締め付けられるような危機感を覚えた。
初音は九条天闊を選ぶつもりか?
しかし篠宮初音は最終的に三井健治の前に歩み寄り、花を手渡した。
3人の冷たい視線が一斉に三井健治に向けられ、敵意を真正面三井健治に向けた。
三井健治は最初は興味なさそうにしていたが、この状況を見て急に面白がり始めた。
白石香澄もようやく気づいた。
だから「スイートハートさん」を見覚えがあると思ったんだ、篠宮初音だったのか!
香澄は歯を食いしばり、番組収録中でなければ仮面を引き裂いてやりたいほどだった。
篠宮初音、これで終わりじゃないわ!