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第69話

4回にわたる「ハートシグナル」の第1回の収録が終盤に近づいた。


毎回の収録は5日で、今回も4日間の収録が終わった。


東雲たくまの負傷により、5日目の団体活動は個人インタビューに簡素化され、第1期の締めくくりとなった。


篠宮初音が最初にインタビュールームに入った。


番組スタッフの質問は単刀直入で深みがあり、男性ゲストたちが最も関心を持つ肝心な問題をほぼ網羅していた。


「スイートハートさん、4人の男性ゲストの中で、一番かっこいいと思うのは誰ですか?」


「スタイルが異なり、それぞれ魅力があります」と篠宮初音は巧みに答えた。


4人とも顔立ちは最高レベルで、甲乙つけがたかった。


「どのゲストが最も印象的でしたか?その理由は?」


「三井健治さんですね。明るく親しみやすく、弟のようでした」


「年の差は受け入れられますか?許容できる最大の年齢差は?」


「純粋な愛であれば、年齢は障壁になりません」


これらの質問はまだ序章に過ぎず、真の焦点はその後すぐに訪れた。


「4人の中から1人を選んでキスしなければならない場合、誰を選びますか?理由も教えてください」


「九条さん」篠宮初音は少し間を置いてから答えた。「理由は……言葉では説明できません」


これはごまかしではなかった。


東雲たくまや東雲明海、三井健治とあんなに親密な接触を持つことを想像することはできず、九条天闊だけは、その抵抗感がそれほど強くないように思えた。


「ここ数日の交流で、ときめきを感じた瞬間はありましたか?」


「ありません」


番組スタッフが各ゲストに投げかける質問は必ずしも同じではないが、「ときめき」は必答問題だった。


東雲たくま、東雲明海、九条天闊のときめきの対象は言うまでもなく篠宮初音、三井健治とアンナはときめきなしと回答、鈴木早紀は東雲明海にかなり好感を抱いていると打ち明け、白石香澄は東雲たくまに惹かれたと率直に語った。


第1期収録が正式に終了し、ポストプロダクションに入り、第2期は1週間後に始まる予定だった。


松本玲子が車で迎えに来て、スタッフと簡単に別れを告げると、篠宮初音を乗せて去った。


車内で篠宮初音はあの特徴的な仮面を外し、疲労がはっきりと顔に表れていた。


「疲れた?」松本玲子がルームミラー越しに彼女を見た。「帰ったらしっかり寝なさい」


身体の疲れはまだ我慢できるが、精神的な消耗が彼女をより疲弊させていた。


東雲たくまという掴みどころのない男に加え、東雲明海と九条天闊と向き合わなければならないあと3期もの収録が待っていると思うと、前途遼遠に思えるばかりだった。


……


北の街、時雨家の邸宅。


時雨快晴が荷物の整理をしていた。


明日から南の街に出張する予定で、10日から15日ほど滞在する見込みだった。


ノックの音がして、時雨桜が顔を出した。


「兄さん、明日南の街に行くの?私も連れて行ってよ」と。


「ふざけるな、仕事で行くんだ」


「約束する、絶対邪魔しないから!」時雨桜はベッドに座り、いつものように甘えた。


「家で大人しくしてくださいよ。絶対邪魔になるから」


「兄さん!ひどいよ!」


これまでならこの手がよく通ったが、今回は時雨快晴の態度が固かった。


「今度遊びに行く時は必ず連れていくから、今回は本当に駄目だ」時雨快晴はスーツケースを閉めると、彼女の頭を軽く撫でた。


快晴の今回の南の街行きは、公務が一つ目の目的だったが、それ以上に重要なのは篠宮初音の身元を徹底的に調査することだった。


あの不思議なすり替え事件について、快晴は既に調査を開始しており、鍵となる人物である鈴木看護師は既に退職し、行方が分からなくなっていた。


快晴は篠宮初音がかつて預けられていた暁の光児童養護施設を訪れ、何か手がかりを見つけられることを期待していた。


「連れて行ってよ……」時雨桜はまだ諦めきれなかった。


「早く寝ろうよ、おやすみ」

時雨快晴は微動だにせず、彼女を軽くドアの外に押し出した:


ドアが閉まり、時雨桜の心には疑念が渦巻いた。


兄さんは絶対に何かを隠している。


連れて行ってくれない?


ならば自分でなんとかするしかない!


時雨快晴は自分で車を運転して南の街に到着し、少し休んだ後、翌日には早速篠宮初音に連絡を取った。


「時雨さん、ご用ですか?」

篠宮初音は朝のジョギングを終えたばかりで、額の汗をタオルで拭きながら電話に出た。


「声を聞く限り、運動したばかりみたいだな?」

時雨快晴はホテルの明るい窓際に立ち、陽光が彼の輪郭を浮かび上がらせていた。


「ええ、走り終わったところです」

篠宮初音は冷たい水を一杯飲み、水滴が首筋を伝った。


「まだ『時雨さん』呼び?この前、呼び方を変えるって言ったじゃないか?」彼はそう念を押した。


「快晴さん」初音は少し躊躇してから、小さな声で呼んだ。


「君が以前暮らしていた暁の光児童養護施設に行きたいんだけど、一緒に行ってくれないか?」時雨快晴は口元を緩めた。


篠宮初音は意外に思いながらも承知した。


彼女自身も藤原院長や子供たちに久しぶりに会いに行くべきだと思っていた。


時雨快晴は住所を聞き、車で迎えに行くと伝えた。


電話を切ると、篠宮初音自身も少し驚いていた。


この時雨快晴という人物に対して、初音はどうやら自然と警戒心を抱かないようだった。

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