転移魔法陣をくぐった瞬間、剣に切りかかられていた。
俺は魔神王の剣で防いだ。
だが、襲い掛かってくる剣は一振りではない。次々と襲われる。
防ぎながら敵の様子を観察する。
数は五体ほどのヴァンパイアだ。アークヴァンパイアよりも強そうにみえる。
ロードかもしれない。一般的なアークの斬撃よりも鋭いのだ。
どちらにしろ、黙らせるのが先決だ。
俺は何度か剣をふるい、その場にいた全員の首をはねた。
五つの転がった首に向かって俺は言う。
「この奥に、お前たちの神がいるのか?」
「…………」
答えないので、一つの頭を剣で突き刺す。灰になった。
灰を一応確認する。メダルはなかった。
魔石の輝きはロード級、大きさはアーク級だ。
「ふむ。ロードではないか」
そして、四つの頭を見る。
「お前らは神とやらに強化されたアークヴァンパイアってところだな」
「……」
ヴァンパイアたちは何も言わない。
通常、魔物の強さと、魔石の大きさ、輝きは比例する。
強い魔物ほど、大きくなり輝きが強くなる。
アークヴァンパイアとヴァンパイアロードでは魔石の質がまるで違う。
アークヴァンパイアが成長しロードになる場合、通常長い時間がかかる。
その間に魔石は徐々に輝きを増していき、大きくなるのだ。
急激に強くなったので、大きさの成長が追いついていないのだろう。
それで輝きだけ増したのだ。
「貴重なサンプルだな」
そう言って、俺は四体の頭にとどめを刺した。
「そもそも、ここはどこだ?」
ごつごつした岩の壁。窓は無く、扉も一つしかない。
調度品はほとんど無い。あるのは転移魔法陣の描かれた大きな姿見鏡だけだ。
どこか先日倒したヴァンパイアハイロードの本拠地に似ている気がする。
「ヴァンパイアどもは洞窟が好きなのか?」
俺は扉を開けて奥へ進む。
廊下を歩いて、奥へ進む。数体のヴァンパイアと遭遇した。
問答無用で倒していく。ゴブリンなどの下等妖魔もいた。
もちろん倒す。魔石の回収などは後回しだ。
倒しながら進んでいくと、洞窟中が大騒ぎになっていく。
あえて身を隠していない。
転移魔法陣を通過したということは、王都からかなり離れた場所だろう。
おそらく、周囲に人里はない。
もしかしたら、かつては人里があったかもしれない。
だが、これだけヴァンパイアが大勢いるのだ。
周囲の人里が存在していたとしたら、確実に全滅しているだろう。
どちらにしろ暴れるのに支障はない。
「お前らのボスはどこにいる?」
首をはねたヴァンパイアに尋ねる。
「…………」
やはり何も言わない。もとより答えは期待していない。
「いう気はないか」
俺はヴァンパイアにとどめを刺した。
俺の侵入を防ごうとしているのだろう。ヴァンパイアたちの動きが活発になる。
その動きを見れば、どこに進ませたくないのか読むことができる。
(その動き自体が罠の可能性もあるか)
とはいえ、他に手がかりがないので、進むしかない。
捨て身で襲いかかってくるヴァンパイアどもを皆殺しにしながら進んでいく。
しばらく歩き、特に厳重に守られた一つの部屋を発見した。
その扉に手をかけて、俺は開けるのをためらった。
ヴァンパイアどもの動きを見る限り、この部屋の中には大事なものがあるのだろう。
例のヴァンパイアどもの神がいる可能性もある。
もしくは、神を召喚するのに重要な呪具がある可能性もある。
どちらにしろ、敵が厳重に守っている場所だ。
当然、昏き神の加護を警戒しなければならない。
「……どうするか」
そうつぶやきながら、後ろから襲いかかってきたヴァンパイアの首をおとす。
転がった頭を剣で貫きながら、俺は天井に向けて小さな
岩の天井を貫いて、魔力弾は飛んでいく。
そして、天井に空いた穴からわずかに光が漏れた。貫通したのだ。
空いた穴から、
人間は通常動くものだ。
だから一定の大きさの動くものを探知すれば、人のいる可能性は探れる。
人と同じぐらいの大きさの動くものと、人の区別がつかない点が厄介ではあるのだが。
「念のために調べてみたが、少なくとも人間大の大きさの動くものはないな」
それなら人を気にせず暴れられる。
「天井の厚さは……大人五人分ぐらいか」
俺が本気で爆発系の魔法を使えば崩落は免れない。
人がいないので、崩落しても構わないと言えば構わない。
だが、後の調査が面倒になる。
「よし。決めた」
俺は扉に向けて魔力弾をぶっ放す。扉が一瞬で吹き飛んだ。
同時に、
周囲全体が、絶対零度に近い温度まで下がった。
極限結氷を使う際は、味方を守るために防衛魔法を使う必要がある。
だから、ソロ行動中でもないと使う機会はそうそうない。
使い勝手の悪い魔法だ。だが、周囲を荒らさずに敵を無力化するには最適だ。
後ろから俺に襲いかかろうとしていたヴァンパイアが凍り付いて地面に転がる。
転がった拍子に砕け散った。凍ってもろくなっていたのだろう。
周囲でヴァンパイアやゴブリンが転がり砕けていった。