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167 残党狩りと後始末

 巨大昏竜イビルドラゴンを倒し、ハイロードは逃亡した。

 後は残党を狩ればいい。


 俺は水竜たちと力を合わせて、昏竜やヴァンパイアを狩っていった。

 残党の全てを狩り終えたころ、ケーテが到着した。


「遅れたのである」

「ケーテ。遅すぎるぞ。何をしていた」


 ドルゴに叱られている。

 風竜王の宮殿から駆けつけたドルゴと比べて遅すぎる。

 ケーテは俺の屋敷から駆けつけたはずだ。


「すまぬ。ただ、集落の方で昏き者どもを相手にしていたら、手間取ったのである」


 俺はケーテの気持ちはわかる。

 目の前で戦っているものがいれば、素通りは難しい。


「優先順位というものがある。レッサーなら水竜の皆さんで対応できるだろう」

「そうなのであるが……、でも!」


 ケーテはしょんぼりしつつも、反論しかける。

 そこにゴランが到着した。


「はぁはぁ。こっちも終わった後ってやつだな。何よりだ」

「エリックはどうした?」


 ゴランより、秘密の地下道を使えるエリックの方が、早く到着できるはずだ。


「エリックは念のためにリーア殿下の護衛だ」

「門以外から襲撃してきたのってレッサーかアークだろう?」


 エリックが残る必要性がないように思える。

 ゴランはゆっくりと首を振る。



「だったらよかったんだがな。ロードやハイロードまで入ってきやがった」

「なに? ……神の加護を誤魔化す魔道具のようなのをつかってきたのか?」

「恐らくな。そのうえ、魔装機械が十機入ってきやがった」

「……それはまずいな」

「集落の方には昏竜が来なかったから、まだましだ」


 昏竜がいなくとも、魔装機械にハイロードがいれば、恐ろしいことだ。

 門だけ防衛していればいいというものではなくなった。


「集落の方は無事なんだろうな?」

「もちろんだ。俺がこっちに来たってことは、無事撃退したってことだからな。それで、ケーテと一緒に走ってきたんだ」


 ゴランの話を聞いていたドルゴがケーテに向かって頭を下げた。


「ケーテ。申し訳ない。父が間違っていた」

「……うむ。わかればよいのである!」


 しょんぼりしていたケーテが元気になった。

 尻尾が上下に揺れ始めた。


 ケーテは巨大昏竜の死骸に興味を示した。


「それにしても、でかいのである!」

「強かったぞ」

「それはそうであろうな!」


 侍従長モーリスが周囲の枯れた木を調べる。


「毒のブレスのようですね……」

「もちろん猛毒ではありましたが……」

「ラックさまは、毒だけではないとお考えなのですか?」

「猛毒に強酸を加えた……そんなブレスに感じました」


 そんな危険なものを大量の魔力と一緒に口から出すのだ。

 おそろしいことこの上ない。


 後始末を水竜たちにまかせて、俺たちは宮殿の方へと戻る。


「ラック、おかえりなさい」

 リーアが出迎えてくれる。リーアは人の姿に戻っていた。


「ただいまもどりました。こちらも激しい襲撃に襲われたようですね」

「エリックが助けてくれたの。それにセルリスやシア、ニアも!」


 セルリスたちもヴァンパイア狩りで活躍したそうだ。

 エリックは魔装機械を破壊したようだ。


 俺に気づいて近づいてきたエリックは深刻な表情だった。 


「ラック。強いものをはじく結界だがな、魔装機械は作動していなければ、弾かれないらしい」

「それは厄介だな」


 強いものを弾く結界は魔力を感知して作動する。

 どんな生物だろうが、生物である以上魔力がある。

 強いものは保有する魔力が高い。それは戦士でも同じだ。

 体内で魔力を使うのが戦士。体の外でも魔力をうまく使えるのが魔導士だ。


 だから、強いものを弾く結界ならば、体内の魔力回路で判断すればいい。

 魔力の巡りが激しいものが強者といえるのだ。


 だが、作動していない魔装機械は武器などと同じ。魔力が巡っていない。

 生き物であれば、魔力が巡っていないということは死んでいるということになる。

 結界は、作動していない魔装機械を単なる金属の塊や、ただの魔石と判断する。


「魔装機械を結界内に運び込んで、作動させればいいということか」

「作動させる前に潰せればいいんだがな」

「魔装機械は固いからな……」

「ああ」


 それでも三機ほど、動き出す前につぶしたようだ。

 それで動いたのが七機だ。


「ヴァンパイアの死骸も見せてくれ」

「こっちだ」


 俺はエリックに案内されて、宮殿から少し離れた広場に向かう。

 そこにはセルリス、シア、ニアがいた。


「ロックさん、ご無事で何よりであります」

「シアたちこそ、無事でよかった」


 セルリスたちは水竜たちと力を合わせて、ヴァンパイアと戦ったようだ。


 俺はヴァンパイアの死骸、つまり灰を調べる。

 灰の量から言って、三十体ぐらいだろうか。

 その中に、ヴァンパイアロード以上の死骸であることを示すメダルは三枚あった。


 俺はロード以上に結界を越えさせた魔道具を探す。

 しばらく探して、腕輪のような魔道具を見つけ出す。

 かなり強力な魔力を感じる。


 その魔道具には愚者の石がふんだんに使われているようだった。

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