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191 夕食

 ガルヴとしばらく遊んだ後、俺は立ち上がる。


「がう?」

 ガルヴはまだ遊び足りなさそうにも見える。


「そろそろ夜ご飯の時間だからな。準備しないと」

「がう!」


 ガルヴは興奮気味だ。尻尾もものすごく揺れている。

 ご飯という言葉に反応したのだろう。


「ミルカはフィリーの助手で忙しいからな」

「がーう」


 ガルヴと一緒に外にでて、適当に食材を買ってくる。

 そして、調理するのだ。


 とはいっても、肉を焼いたり適当にスープを作ったりと簡単なものだ。

 ガルヴは俺が料理している間、周囲をぐるぐる回っていた。


「がうー」

「ガルヴの分も作ってるから安心しなさい」


 だいたい料理が終わったころ、台所に風呂上りのセルリスが入ってきた。

 肩にゲルベルガさまを乗せたニアも一緒だ。


「手伝うわ!」

「ありがとう、でも大体もう終わったからな」


 徒弟のニアは申し訳なさそうに頭を下げた。


「本来は私がやるべきでしたのに、気づかずに申し訳ありません」

「それは気にしなくていい。手の空いているものがやるべきだからな」


 夕ご飯の匂いに気づいたのか、ミルカとルッチラもやってくる。


「夕食の準備してもらって、ありがとうだぞ!」

「ロックさん、ありがとうございます」

「フィリーの手伝いはうまくできたか?」

「うん。色々教えてもらいながらだけどね!」

「魔法とは違ったところがあって、興味深いです」


 ミルカとルッチラは錬金術に興味を持ったようだ。

 色々学べばいいと思う。


「じゃあ。食堂に運ぶのを手伝ってくれ」

「まかせておくれ」


 みんなで手分けして食事を運ぶと、食堂にはシアとフィリーとタマがいた。


「タマの分もあるからなー」

「わふ」


 タマは元気に尻尾を振った。

 そしてみんなで夕ご飯を食べる。


「そういえば、シアたちは昨日何もらったんだ?」

「勲章と褒賞金であります」


 昨日は王宮に狼の獣人族の族長が集まり、エリックから褒美をもらったようだ。

 ちなみに俺は欠席している。目立つのは良くないからだ。


陞爵しょうしゃくはさせてもらえないのか」

「爵位を上げるとなると、他の貴族との関係もあるし、そう簡単にはいかないのだろうな」

 フィリーが真面目な顔でそう言った。確かにフィリーの言う通りかもしれない。


 半分ぐらいご飯を食べたころ、

「あ、ご飯を食べているのであるな! 失礼失礼! また、夕食時に遊びに来てしまったのである!」

 元気いっぱいなケーテがやってきた。ケーテは大体夕食時にはやってくるのだ。


「ケーテも食べるか?」

「よ、よいのか?」

 いつも食べていくのに、遠慮して聞く。だから、俺もいつものように言う。


「いいぞ」

「嬉しいのである!」


 ケーテに食事を出すと、お礼を言って食べ始める。


「うまい、うまいのである!」

 作った俺が言うのもなんだが、それほどうまくはない。


「そんなでもないだろう」

「いや、うまいのである!」


 たとえお世辞でもうれしいものだ。

 それにケーテは食べっぷりがいいので、気持ちがよい。


「そういえば、ケーテは今日何してたんだ?」

「昏き者どもの動きがないか、水竜の集落の周囲を巡回していたのである」


 本拠地をつぶした日、水竜の集落の結界は破られた。

 壊された結界は俺と水竜の精鋭総出で修復し、さらに強化しておいた。

 隕石を落とされても大丈夫なように、物理防御も強化してある。


 とはいえ、まだ警戒が必要なのは確かだ。

 ケーテの見回りはとてもありがたい。


「なにか動きはあったか?」

「レッサーヴァンパイアとかゴブリンはいたが、それだけであるな」

「……大丈夫か?」

「なにがである?」

「ゴブリンと人族を間違えたりしてないよな?」

「それは大丈夫である」


 堂々とケーテは胸を張る。


「我は人族とゴブリンを見分けることが出来るようになったのだ」

「おお、それはすごい」

「ふふん。ロックたち人族と毎日会っているのである。そのぐらいは出来るようになって当然である」


 それはとても良いことだ。

 お肉を食べていたセルリスが言う。


「どうして、水竜の結界は破られたのかしら?」

「基本は従来の方法だ。起動前の魔装機械を中に持ち込んでってやつだな」


 敵の侵入を察知する魔法陣もある。

 水竜たちは当然気づき、持ち込まれまいと抵抗を開始する

 それと同時に門からも急襲をかけ、戦力を集落の中心から外周へとおびき出した。

 その隙に結界のコアを破壊したのだ。


「毎日襲撃をかけてきてたのは、結界のコアの位置を探るためだったんだろうな」

 昏き者どもの本拠地を守る結界は、強力だが隠蔽は不十分だった。

 強力ゆえに、コアを隠す必要性を感じなかったのだろう。


 だから、すぐにコアの場所が分かったし、隕石を落とすことも出来た。

 だが、水竜の集落の結界のコアはうまく隠蔽されていた。

 それを探るために何度も何度も襲撃が必要だったのだ。


「水竜の結界のコアの隠蔽はさらに強化して、場所も変更した。そう簡単に破られることはないだろう」

「ロックさんでも難しいでありますか?」

「何の情報も無ければ、俺でも難しいな。相当時間がかかる」

「それなら大丈夫でありますね」


 シアは安心したようだった。

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