ガルヴとしばらく遊んだ後、俺は立ち上がる。
「がう?」
ガルヴはまだ遊び足りなさそうにも見える。
「そろそろ夜ご飯の時間だからな。準備しないと」
「がう!」
ガルヴは興奮気味だ。尻尾もものすごく揺れている。
ご飯という言葉に反応したのだろう。
「ミルカはフィリーの助手で忙しいからな」
「がーう」
ガルヴと一緒に外にでて、適当に食材を買ってくる。
そして、調理するのだ。
とはいっても、肉を焼いたり適当にスープを作ったりと簡単なものだ。
ガルヴは俺が料理している間、周囲をぐるぐる回っていた。
「がうー」
「ガルヴの分も作ってるから安心しなさい」
だいたい料理が終わったころ、台所に風呂上りのセルリスが入ってきた。
肩にゲルベルガさまを乗せたニアも一緒だ。
「手伝うわ!」
「ありがとう、でも大体もう終わったからな」
徒弟のニアは申し訳なさそうに頭を下げた。
「本来は私がやるべきでしたのに、気づかずに申し訳ありません」
「それは気にしなくていい。手の空いているものがやるべきだからな」
夕ご飯の匂いに気づいたのか、ミルカとルッチラもやってくる。
「夕食の準備してもらって、ありがとうだぞ!」
「ロックさん、ありがとうございます」
「フィリーの手伝いはうまくできたか?」
「うん。色々教えてもらいながらだけどね!」
「魔法とは違ったところがあって、興味深いです」
ミルカとルッチラは錬金術に興味を持ったようだ。
色々学べばいいと思う。
「じゃあ。食堂に運ぶのを手伝ってくれ」
「まかせておくれ」
みんなで手分けして食事を運ぶと、食堂にはシアとフィリーとタマがいた。
「タマの分もあるからなー」
「わふ」
タマは元気に尻尾を振った。
そしてみんなで夕ご飯を食べる。
「そういえば、シアたちは昨日何もらったんだ?」
「勲章と褒賞金であります」
昨日は王宮に狼の獣人族の族長が集まり、エリックから褒美をもらったようだ。
ちなみに俺は欠席している。目立つのは良くないからだ。
「
「爵位を上げるとなると、他の貴族との関係もあるし、そう簡単にはいかないのだろうな」
フィリーが真面目な顔でそう言った。確かにフィリーの言う通りかもしれない。
半分ぐらいご飯を食べたころ、
「あ、ご飯を食べているのであるな! 失礼失礼! また、夕食時に遊びに来てしまったのである!」
元気いっぱいなケーテがやってきた。ケーテは大体夕食時にはやってくるのだ。
「ケーテも食べるか?」
「よ、よいのか?」
いつも食べていくのに、遠慮して聞く。だから、俺もいつものように言う。
「いいぞ」
「嬉しいのである!」
ケーテに食事を出すと、お礼を言って食べ始める。
「うまい、うまいのである!」
作った俺が言うのもなんだが、それほどうまくはない。
「そんなでもないだろう」
「いや、うまいのである!」
たとえお世辞でもうれしいものだ。
それにケーテは食べっぷりがいいので、気持ちがよい。
「そういえば、ケーテは今日何してたんだ?」
「昏き者どもの動きがないか、水竜の集落の周囲を巡回していたのである」
本拠地をつぶした日、水竜の集落の結界は破られた。
壊された結界は俺と水竜の精鋭総出で修復し、さらに強化しておいた。
隕石を落とされても大丈夫なように、物理防御も強化してある。
とはいえ、まだ警戒が必要なのは確かだ。
ケーテの見回りはとてもありがたい。
「なにか動きはあったか?」
「レッサーヴァンパイアとかゴブリンはいたが、それだけであるな」
「……大丈夫か?」
「なにがである?」
「ゴブリンと人族を間違えたりしてないよな?」
「それは大丈夫である」
堂々とケーテは胸を張る。
「我は人族とゴブリンを見分けることが出来るようになったのだ」
「おお、それはすごい」
「ふふん。ロックたち人族と毎日会っているのである。そのぐらいは出来るようになって当然である」
それはとても良いことだ。
お肉を食べていたセルリスが言う。
「どうして、水竜の結界は破られたのかしら?」
「基本は従来の方法だ。起動前の魔装機械を中に持ち込んでってやつだな」
敵の侵入を察知する魔法陣もある。
水竜たちは当然気づき、持ち込まれまいと抵抗を開始する
それと同時に門からも急襲をかけ、戦力を集落の中心から外周へとおびき出した。
その隙に結界のコアを破壊したのだ。
「毎日襲撃をかけてきてたのは、結界のコアの位置を探るためだったんだろうな」
昏き者どもの本拠地を守る結界は、強力だが隠蔽は不十分だった。
強力ゆえに、コアを隠す必要性を感じなかったのだろう。
だから、すぐにコアの場所が分かったし、隕石を落とすことも出来た。
だが、水竜の集落の結界のコアはうまく隠蔽されていた。
それを探るために何度も何度も襲撃が必要だったのだ。
「水竜の結界のコアの隠蔽はさらに強化して、場所も変更した。そう簡単に破られることはないだろう」
「ロックさんでも難しいでありますか?」
「何の情報も無ければ、俺でも難しいな。相当時間がかかる」
「それなら大丈夫でありますね」
シアは安心したようだった。