俺は自分の夜ご飯を食べながら、ご飯を食べるタマとガルヴの様子を見る。
「わふかふかふ」
「がふががふがふがふ」
結構勢いよく食べていた。タマとガルヴは俺の足元の床で食べている。
一方、ゲルベルガさまはテーブルの上で食べている。
神ということもあって、床で食べさせるのは気が引けるのだ。
体が小さいからテーブルのうえでも邪魔にならないというのもある。
「こっこっこ」
ゲルベルガさまも機嫌よく食べていた。
ゲルベルガさまのご飯は、葉菜類やとうもろこし、肉などである。
ガルヴのご飯は肉中心だ。タマはそれに加えて、イモを混ぜてある。
ちなみに、今日もゲルベルガさま、タマ、ガルヴの順番で食べ始めていた。
俺は食事中のタマの背中と肋骨辺りを撫でた。
「わふがふがふ」
タマはうなることもなく、食べつづけている。
「だいぶ肉ついたかな?」
「タマも少し太ってきたので安心なのだ」
フィリーが嬉しそうに言う。
タマは痩せていたからみんなが心配していたのだ。
「タマ、足りなかったらおかわりもあるぞ」
「わふ」
タマが物足りなそうにしていると、ガルヴが自分の餌を分けてしまうのだ。
ガルヴもまだ子狼なので、いっぱい食べる必要がある。
「ガルヴもご飯いっぱい食べろよ。おかわりもあるぞ」
食事中のガルヴのことも撫でておいた。
少ししてタマとガルヴは食べ終わる。
タマとガルヴも最初に与えた量で、満足したようだ。
「水を入れてあげよう」
俺が立ち上がろうとすると、ミルカが立ち上がる。
「ロックさんは座っていてほしいんだ! 水はおれが入れてくるぞ!」
ミルカは水入れからタマとガルヴの器に水を入れる。
タマもガルヴは美味しそうに水を飲んでいた。
「こっここ」
食べ終わったゲルベルガさまは、テーブルの上を歩いて俺のひざの上にぴょんと乗る。
「ゲルベルガさまは、おかわりしなくていいのか?」
「こぅ」
大丈夫らしい。
ゲルベルガさまは、もぞもぞと俺の服の中に潜り込んできた。
「ゲルベルガさま、どうしたんだ?」
「ゲルベルガさまは、ロックさんに甘えたいんですよ」
ルッチラがそんなことを言う。
「そうなのか」
俺はゲルベルガさまをそっと撫でる。
「こここ」
ゲルベルガさまは、気持ちよさそうに鳴いていた。
俺たちが夜ご飯を食べ終わり後片付けを終えたころ、エリックとゴランがやってきた。
「エリックもゴランも、夜ご飯食べたか? まだだったら用意するぞ」
「おお、ありがたい。もらおう!」
「まかせておくれ!」
ゴランがそういうと、俺が立ち上がる前にミルカが走っていった。
「エリックはどうする?」
「気持ちはありがたいが、やめておこう。レフィがな。怒るからな」
「あぁ。そういえば、そうだな」
エリックの妻、王妃レフィはエリックの健康を心配しているのだ。
王宮と、俺の屋敷で夕ご飯を二回食べるのはさすがに食べすぎである。
俺も、レフィからエリックにやめさせるように言われていた。
「では、エリックさんにはお茶を入れますね。皆さんの分も」
ニアとルッチラが立ち上がってお茶を入れに行く。
「ニア、ルッチラ、ありがとう」
「いえいえー」
「お気になさらず」
「ここぅ」
俺の懐に入ったままのゲルベルガさまが顔だけ出した。
それをみてエリックが笑顔になる。
「ゲルベルガさま、楽しそうなところにいますね」
「こ」
ゲルベルガさまは心なしかどや顔をしていた。
「エリック、王都の後始末はどうなった?」
「ああ、王都各所の点検を近衛騎士団総出で今日の午後済ませておいた」
「仕事が早いな」
「ゆっくりはできないことだからな」
実は俺たちが昏き者どもの本拠地をつぶした日。王都にも襲撃があったのだ。
水竜の集落への襲撃の規模に比べたら、小規模なものだ。
一体のヴァンパイアロードに率いられたレッサーとアークの群れだ。
総数四十匹ほどだったという。
ゴランが言う。
「狼の獣人族を騎士として召し抱えていなかったら、被害がどれだけ出たかわからねーな」
「ああ、エリックの施策が功を奏したな。さすがだ」
俺が褒めるとエリックは首をゆっくりと振った。
「むしろ近衛にロックとフィリーの作ってくれた魔道具を配っておいたのが大きいだろう」
そして、エリックは俺とフィリーに頭を下げる。
「ロック。フィリー。非常に助かった。王国を代表してお礼を言う」
「俺は大したことはしていない。大体フィリーの手柄だ」
「と、とんでもないことでございます」
「わふ」
とても恐縮していた。フィリーは上級貴族としての教育を受けているので仕方がない。
タマも主であるフィリーの緊張が伝わったのか緊張している。
俺はエリックに尋ねた。
「アークとロードは王都の神の加護を魔道具で突破したんだよな」
「そのとおりだ」
「数を揃えてきやがったか。面倒だな」
「もちろん、それも看過できない。だが俺が最も危惧しているのは、それとは別のことだ」
そう言ったエリックは険しい表情をしていた。