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255 朝ご飯のあとのミーティング

 俺はシアたちに尋ねる。

「おはよう。みんなで訓練してたのか」

「そうであります!」

「実戦に参加した後には復習を兼ねて訓練するのがいいと思うの」

 セルリスは真剣な表情だ。

 確かに忘れないうちに訓練するのは効果的かもしれない。

「昨日の戦闘は激しかったからな。学ぶことも多かっただろう」

「ルッチラさんに手伝ってもらったのです」

 ニアの尻尾がばっさばっさと揺れている。

「ルッチラに手伝ってもらったというと、幻術か?」

「そうなの! ルッチラはすごいわね!」

「ルッチラにあたしとセルリスが昨日の戦闘の話をして幻術で再現してもらったであります」

 その訓練はシアたちだけでなく、ルッチラにとってもいい練習になるだろう。

「ルッチラは流石だな」

「ありがとうございます。でも、どれだけ再現できたか……」

 ニアと同じくルッチラも留守番組だ。実際に見ていないのだから、再現は難しかろう。

「ロックさん、あとで幻術で見せていただけませんか?」

「ぼくからもお願いします!」

 ニアとルッチラに頭を下げられた。

 徒弟の二人に頭を下げられたら、是非もない。

「わかった。任せてくれ。ガルヴとタマの散歩が終わったら訓練しよう」

「ありがとうございます!」「嬉しいです」

「あたしも訓練に混ぜて欲しいでありますよ!」

「私も!」

「シアとセルリスは休憩した方がいいと思うが……、すべては散歩が終わってからだな」

「わかったであります」

「私は元気だわ!」

 名前を呼ばれたことに、もしくは散歩という言葉に反応したのかガルヴとタマがやってくる。

 俺の周りを尻尾を振りながら、身体をこすりつけるようにしながらぐるぐる回る。

「散歩は後だ」

 そう言って俺は空いていた長椅子に座る。

「がぅー」「わふう」

 ガルヴが俺の右ひざに、タマが俺の左ひざにあごを乗せてくる。

 甘えたいのだろう。俺はガルヴとタマをモフモフと撫でる。

 すると、フィリーがゆっくりと話し出す。

「ロックさん。そろそろよいかの?」

「ああ、待たせた。説明だったな」

 ちょうど、ミルカがやって来た。全員分のお茶とお菓子を持ってきている。

「お茶を淹れて来たぞ!」

「ありがたい」

「気にしないでおくれ!」

 お茶を配り終わると、ミルカは俺の右隣りに座った。


 これで今度こそ、この屋敷にいる全員がこの場に揃った。

 俺はミルカが淹れてくれたお茶を飲みながら説明を始める。

「今回、くらき者どもは大爆発とその直後の転移という作戦を用いたわけだが」

「話を聞くだけで、恐ろしい」

 フィリーは眼鏡に右手を添えた。

「ああ、厄介だ。しかもそのトリガーが魔力探査マジック・エクスプロレーションだからな」

「はい。魔力探査をかけなければ、爆弾かどうかわからないですし……」

「ここ」

 ルッチラが困った表情をするので、ゲルベルガさまがそっと寄り添う。

「ふむ。で、その魔道具の素材はなんなのだ?」

 錬金術士のフィリーは、やはり素材に興味があるようだ。

「メインの素材は両方とも愚者の石だったな」

「ほう? 構造はどうなのだ? わかる範囲でよい」

 フィリーに問われて、ルッチラは困ったような表情を見せる。

「……えっと。ぼくが魔力探査を担当したのですけど……」

「わからなかったのか?」

「魔力探査自体は成功したのですけど、その瞬間に……」

「爆発してしまったということなのだな?」

「はい」

「ふーむ」

 フィリーは真剣に考えこみ、ルッチラは少し申し訳なさそうにしている。

「ルッチラをかばうわけではないが、魔力探査の難度自体がとても高かったんだ」

「ふむ?」

「だから、魔力探査自体に集中して構造解析する余裕がなかったとしても仕方がない」

「なるほど……。そうなのだな」

 フィリーは俺の言葉を聞いてまた考え始める。

 するとミルカが首を傾げた。

「ロックさん、一つ聞いていいかい?」

「ん? 何でも聞いてくれ」

「なんで、敵はその魔力探査とかいうのの難度を高めたんだい?」

「魔力探査に失敗したら爆発しなくて、敵の作戦も失敗してしまうじゃないかってことか?」

「そう! それだよ!」

 ミルカの問いは当然だ。

 ルッチラが優秀な魔導士だったから魔力探査に成功したが、並の魔導士では魔力探査に失敗しただろう。

 その場合、魔力探査の成功がトリガーとなる爆発は起きない。

「ミルカは賢いな。いい質問だ」

「えへへ、そうかい?」

「今回の罠は、最初の魔力探査は失敗するのを前提にした作戦だったんだ」

「どういうことだい?」

 俺は自分の推理をミルカに説明する。

 敵の狙いは王都であること。

 そのためには失敗させて、詳しく調べられる研究機関に持ち込ませる必要があること。

 もし成功していたら、王都が火の海になっていたこと。

 そんな俺の説明を聞いて、ミルカは慌てた。

「まずいんじゃないかい! もし他の冒険者が同じ爆弾を持ち込んだら、大変なことになるじゃないか!」

「確かにそうなったらとても困るな」

「だ、大丈夫なのかい?」

 そのとき、ちょうどエリックとゴランが居間に入って来た。

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