だから俺はケーテにいう。
「歩いて行こう。精々三時間程度だ。ケーテもついてくるなら人型になってくれ」
「わかったのである。」
行きの三時間とゴブリン退治でアリオとジニーもケーテに慣れるだろう。
そうなれば、帰りはケーテの背に乗せて貰えばいい。
それだけで充分時間の短縮になるだろう。もしかしたら日没までに戻れるかも知れない。
「じゃあ、人の姿になってくるのだ」
そういって、ケーテは近くの森の中へと走って行った。
ケーテは急に裸になることはなくなった。人の風習に慣れてくれたらしい。
すぐに人の姿になったケーテが戻ってきて、俺たちは村へと歩き始める。
ケーテはジニーに楽しそうに話しかける。
「ジニーはゴブリン退治が得意なのであるか?」
「得意ってわけではないけど……」
「我は得意なのだ。人族とゴブリンの見分け方もばっちりであるからなー」
「うん? そうだね」
ジニーは、ケーテの言葉の意味がわかっていなさそうだ。
「ケーテ、一匹二匹のゴブリンを倒すだけなら簡単だ。だが、それだけではダメなんだ」
「そうなのか? 倒せばいいと思っていたのである」
「ゴブリンは群れを作るからな。群れ全体を退治する必要がある」
被害は一つの群れによるものか、複数の群れによるものか。はぐれゴブリンによるものか。
また、どこの巣から来たゴブリンの群れなのか。それらをしっかり調べる必要がある。
そして、巣ごと退治しなければならない。
そんなことを伝えると、ケーテはうんうんと頷いた。
「勉強になるのである」
「ケーテは強いが冒険者としては初心者なのだし、俺の言うことをしっかり聞かないとダメだからな」
「了解したのである」
村までの道のりは三時間とたっぷりある。
その時間を利用して、俺は歩きながらゴブリン退治についてケーテに語る。
「ほうほう! そういうものなのだな!」
「勉強になります」
「ああ。ためになるな」
ケーテだけでなく、ジニーとアリオも真面目に聞いてくれた。
途中で休憩を挟みながら、歩いて三時間後、村が見えてきた。
「あの村ですね」
元狩人にして弓スカウトのジニーは目がいいので、すぐに村に気づいた。
「小さな村ですね」
「ああ、何か物が不足しても村で補充することは期待できなさそうだな」
アリオはそんなことを言う。
冒険者の常識として、基本的には補充なしでやれるように準備してある。
だが、不測の事態というのはよくある。
そういうときに現地で補充できると、すごく助かるのだ。
「アリオ、ジニー。交渉は基本そっちに任せる」
「はい! 任せてください」
「俺たちも、あれから何度か冒険しているからな。交渉も慣れたもんだよ」
「それは頼もしい」
そんなことを話しているうちに村の入り口のすぐ近くまで来る。
「……がう」
突然、ガルヴが俺の袖を咥えた。
「どうした?」
「ガウウゥーー!」
ガルヴは村の中を睨みながら、低い声で唸り始めた。