俺はセルリス、シア、ガルヴとゲルベルガさま、そしてケーテとモルスと一緒に自宅に戻る。
エリックの居住エリアから俺の屋敷には秘密通路がつながっているので、そこを通った。
屋敷に戻ると、
「ロックさん! お帰りなんだぞ!」
「お帰りなさい!」
「ご無事でなによりです」
俺の徒弟であるミルカ、ニア、ルッチラが出迎えてくれた。
「ただいま。皆無事か?」
俺の懐からゲルベルガさまが出て、ルッチラの方へと飛んでいった。
「はい! 無事です! そしてゲルベルガさま、お疲れさまです」
「フィリーは?」
「先生は、爆睡中だぞ! 脳みそを使いすぎたって言ってた!」
ミルカが教えてくれる。
フィリーはその天才的な頭脳をフル回転させて、疲れ果てたのだろう。
俺たちも戦っていたが、フィリーも屋敷で戦っていたのだ。
それはフィリーを手伝っていた徒弟たちも一緒だ。
「みな、お疲れ様。詳しいことは明日話そう」
「はい!」
そして俺はガルヴと一緒に自室に戻った。
魔法を大量に使ったが、ドレインタッチで魔力を存分に吸ったので消耗は少ない。
とはいえ、身体を沢山動かして、頭も沢山使った。
「疲れた」
俺がベッドに倒れ込むと、ガルヴもベッドに乗った。
「ガルヴもお疲れ」
「がーう」
今日はガルヴはとても活躍した。
ガルヴの散歩に出かけて、色々あって、邪神を倒すことになるとは。
人生何が起こるかわからないものだ。
「がうがーう」
ガルヴが俺の顔を舐めまくる。まだ子狼なので甘えたいのだろう。
俺はガルヴを撫でまくりながら、眠りについた。
次の日の午前中にエリックから国民に向けて大々的に発表があった。
昏き者どもの侵攻があったが、無事防いだ。
リンゲイン大使館の話しは伏せられているが、それ以外は大体発表となった。
狼の警護兵たちや、活躍した冒険者たちに報奨が与えられる。
ゴラン、シア、セルリス、フィリーにも当然与えられた。
ゴランは伯爵から侯爵に、シアは男爵、セルリスは騎士爵の爵位が与えられた。
侯爵令嬢のフィリーは子爵に叙された。
フィリーがマスタフォン侯爵家を継ぐことになれば、子爵位は従属爵位となるのだろう。
フィリーを手伝った、ミルカ、ルッチラ、ニアにも報奨金が与えられた。
そして風竜と水竜にも、エリックから正式に感謝状が贈られる。
アリオとジニーにも、早期発見の功で金一封が与えられたようである。
ちなみに俺は報奨を全て断った。ラックの存在がばれたら面倒だからだ。
俺が昼ご飯を食べに食堂に行くと、徒弟たちが揃っていた。
シアとセルリス、フィリーもいる。
皆で楽しく昼ご飯を食べていると、ミルカが尋ねてくる。
「ロックさん。先生から聞いたんだけど、邪神ってのを倒したのかい?」
「倒したな。シアとセルリスも一緒にな」
「すげー」
「とはいえ、邪神は神だ。倒して死ぬような存在でもないだろう」
「そっかー。また攻めてくるのかい?」
「だが、当分先になるだろう。それが数十年後か、数百年後か数千年後かわからないがな」
「そうなのかー」
それに昏き神は、俺たちの倒した邪神だけではないはずだ。
「ミルカ、ルッチラ、ニアもフィリーとレフィの手伝いをしたんだろう?」
「ああ、ミルカもルッチラもニアも、すごく役立ってくれた」
フィリーがうんうんと頷いている。
「えへへ。照れるんだぞ」
「すごく勉強になりました」
「そんな、私はそんなたいしたことは出来なかったです」
徒弟たちも充実した表情をしている。
昨日はそれぞれ自分の出来ることを全力でやったのだろう。
「ロックさん、お疲れが癒えてからでいいので、稽古をつけてください!」
ニアが尻尾をピンと立たせてそう言った。
姉の大活躍に刺激を受けたのだろう。
「いいぞ、今日から訓練するか」
「え? お疲れでは?」
「大丈夫だ。寝たら元気になった」
「では、僕もお願いします」
「ああ、ルッチラ訓練しよう」
「わ、私も——」「あたしも——」
「セルリスとシアはお休みしなさい」
「「えー」」
「えーじゃない。昨日の戦闘で大量の魔素を浴びただろう? 落ち着くまで安静にした方が強くなれる」
「わかったわ」「そうかもしれないであります」
セルリスとシアは納得したようだった。
「あ、ロックさん。お返しそびれていたわ」
そういってセルリスが魔神王の剣を差し出してきた。
「セルリスが持っていてもいいぞ」
「いや、私にはまだ荷が重いわ。その剣を奪いに、私の手に負えない奴が襲いに来るかも知れないし」
「そうか」
俺は魔神王の剣を受け取った。
エリックとマルグリットはきっと今頃忙しく戦後処理を行っているのだろう。
後で愚痴でも聞いてあげよう。
そして俺は徒弟と訓練したり、ガルヴと遊んだりしてのんびり過ごそう。
そんなことを考えていると、お昼ご飯を食べ終わったガルヴが散歩したそうな表情でこちらを見つめていた。
了