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115 ファルコン号の帰還

 古竜たちが眠るのを見て、

「……かわいい」

「ふぁる〜」

 コラリーとファルコン号は目を輝かせていた。


「さて、出発の準備をしようか」

「……どうすればいい?」

「コラリーは剣の心得はあるか?」

「……すこし」

「よし。ならば、剣が欲しいな。それに防寒具も」

「……わかった。でも」


 コラリーはためらいがちにこちらを見る。

 言いたいことはわかる。コラリーはお金を持っていないのだ。


「もちろん金はこちらで用意する。必要なものだからな」

「…………ありがとう」

「気にするな」


 そのときファルコン号は入り口の方を見て、羽をバサバサさせた。


「ふぁるるる〜〜」

「どうした?」

「ふぁる!」


 ファルコン号は、お礼をするかのように、ぺこぺこと頭を下げる。


「もう帰る時間なのか?」

「ふぁる!」


 ファルコン号は力強く頷く。

 きっとケイ先生から、いつ頃出立しろと言い含められているのだろう。


「大丈夫か? 疲れは取れたか? お腹は空いてないか?」


 ファルコン号は立派な鳥だが、心配になる。

 そんな俺に、大丈夫だと伝えるかのように、力強くファルコン号は鳴いた。

「ふぁるる!」

「そうか。大丈夫なのか」

「ふぁる」

「それじゃあ、遠距離通話用魔道具を持っていって欲しい」

「ふぁる」

 ファルコン号は胸に下げたポーチをクチバシで指す。


「ありがとう、入れさせて貰おう」

「ふぁる」

 ポーチの中に遠距離通話用魔道具を入れた。


 どうやら、そのポーチは魔法の鞄となっているようだった。

 なかなかの収容能力を持っているらしい。

 俺が作ったものではない。ケイ先生の作った魔法の鞄だ。


「ファルコン号、食べ物も持って行きなさい」

「ふぁ〜る」

 すると、ファルコン号は朝食の残りであるパンをクチバシで指す。

 俺の開発したパン焼き魔道具で焼いたパンだ。


「パンで良いのか? 肉とかの方が良いんじゃないか?」

「ふぁる!」


 ファルコン号はパンで良いと言っているかのように鳴いた。


 パンを魔法の鞄につめると、ファルコン号は

「ふぁる」

 最後にもう一度頭を下げると、ファルコン号は魔法の鞄の中にクチバシを突っ込んだ。

 そして紐の付いている魔道具を取り出す。

 その魔道具についている紐を、首に掛けて、クチバシで操作する。

 途端にファルコン号の姿と気配が消えた。

 魔法で隠された罠を見つけるときのように、魔力を探知しながら、目をこらしてみれば、そこにいることがやっとわかる。

 そのぐらい見事に隠れている。


「おお」

「……なに?」


 そして、ファルコン号は

「ふぁるふぁる」

 と鳴いて、頭を下げる。

 俺が結界を解除すると、ファルコン号は入り口から外に出て飛び立った。


「…………急に扉があいた。もういないの?」

「コラリーでも見えなかったか」

「……どういうこと?」

「姿を隠すための魔道具だな。途中でファルコン号が狙われないようにするために持たせたんだな」


 前回ファルコン号がお遣いに来た時、そのような魔道具は持っていなかった。

 つまり、ケイ先生の警戒度が上がっていると言うことだろう。


「それにしても……。どういう仕組みだ?」

「……ヴェルナーにもわからないの?」

「推測はできるが……」


 即座に仕組みを完全に把握することはできなかった。


「コラリー、姿が消えた後ファルコン号が鳴いたのは聞こえたか?」

「聞こえなかった」

「光と音を防いでいるってことは、波を透過するってことか? いや、違うな」


 向こう側が違和感なく見えたのだ。

 つまり、光を屈折させているということか。


「俺の作った結界発生装置に仕組みは似ているのかも?」

「……アレンジ版?」

「改良版かもしれない」


 前回、ファルコン号に結界発生装置の魔道具を持たせた。

 それをみて、改良したのかもしれない。


「まだまだだと言われているみたいだな」


 ケイ先生は旅立つ前にファルコン号が魔道具を使うところを俺が見ることを読んでいたのだろう。

 手紙では、べた褒めに近いレベルで褒められた。

 だが、開発した魔道具をみせることで、「わしの方がすごい」とはっきり言われている気がする。


「あれを作ろう」

「……いまから?」

「いや、さすがに古竜の里から帰ってからかな」

「…………そ」


 その後、俺とコラリーはオイゲン商会に出かけた。

 ハティは置いていこうか悩んだが、出かけている間に目覚めたら泣きそうなので連れて行く。

 コラリーにハティを抱っこして貰い、俺はユルングを抱っこして、歩いて向かった。



 オイゲン商会では、コラリーのために短めの剣と防寒具を買った。

 そしてハティの実家へのお土産としてお菓子も買った。


 商会から研究所に戻り、お昼過ぎになった頃、ハティが目覚めて、ロッテが戻ってきた。

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