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ロミオに転生した僕はジュリエットを愛する呪いから逃れられない
ロミオに転生した僕はジュリエットを愛する呪いから逃れられない
発芽
異世界恋愛ロマファン
2025年06月10日
公開日
10.2万字
連載中
病院で入院していたはずの僕が目を覚ますと、そこは『ロミオとジュリエット』の世界だった。 舞踏会の前日にひとりの少女と出会う。 ジュリエットは「結婚の話から逃げてきた」と僕に助けを求めてきた。 会うつもりなんてなかったのに。 彼女を見た瞬間、僕の意思に反して心が惹かれていく。 この気持ちは本物か? そう悩みながらも、僕は結婚を誓い、仮死の薬を飲んだあと、彼女を連れて逃げた。 けれど、逃げ切れたと思った矢先—— ジュリエットを探しに、パリス伯爵とティボルトが追ってきてしまう。 僕はジュリエットと生き残るために、なにができるだろう? (※ロミジュリの話なので、キスやイチャイチャ、死ネタあり。性描写は朝チュンくらい ※本作公式のカプリングは一周目の二人であり、航生は一途です。

1回目

長い夢の始まり



 そう、これは夢だ。

 うっすら目を開けて、なぜか僕はそう思った。だってさっきまで、病院のベッドの上で苦しくなって、ナースコールを押したはずなのに。

 気づけば真っ暗な世界にいて、体がどこまでも沈んでいく。ここはどこだ?




 何も見えない完全な暗闇の中で、ぼんやりした人影が映った。


「――おま……に、託し……。俺はもう……だ。あんなものはもう二度と……。お前なら、……を死なせず……。好きにならずに……か? ジュリ……会わず、別々の――」


 これは死に瀕した最中での、夢なのか。若い男の声で何かを語りかける。でもあまりよく聞こえない。なんで、この人は悲しそうな声なんだ?


 まだ呼吸が乱れていて、あまり目をしっかり開けられずにいた。意識が混濁したなか、声の主に助けを求めて、あいまいに頷いたような気がする。伸びてきた影は僕の額に触れて、なにかを植え付けて消えた。




 ――それからずっと夢の中を生きてる気分だ。僕が『高校の時から病院に入院していた夢』をみているのか。それとも病院にいた僕が『イタリアに住んでいる別の人間の夢』を見続けているのか。

 幼い時から、ふわふわして変な感じだった。


 僕はロミオと呼ばれ、イタリアのヴェローナと言う町に暮らす。石でできた、彫刻や模様が綺麗な建築様式。ローマに次ぐ大きさの歴史的な闘技場。小麦でできたものやリゾットを食べる。


 これら全部、僕にとってリアルだけど、映画の中を生きている気分だった。僕には航生こうきという名前だってある。……この記憶はどこから? 本当に僕は、航生なのか?

 幼かった僕が生み出した架空の人物が、頭の中にいるのかなと思っていた。


『モンタギュー?』『ロミオ?』

 七歳の時にやっとそれが『ロミオとジュリエット』の世界だと気づいた。やっぱり僕は元々日本で生きていたんだ! 十七年間の記憶も全部、思い出した。


「僕が……航生」

 自分を取り戻したみたいで嬉しかった。けれど、同時にロミオであることを思い出して、気落ちした。このままいけば、僕はジュリエットと死ぬことになる。


 なんで僕がロミオに選ばれたのか。僕は入院中に読んだことはあるけど、たくさんある本の中の1つに過ぎない。少ししか覚えてないし。適任は僕じゃなくても良かったんじゃないか? 今からロミオをやめられないのか。


「僕の名前はこうき。僕の名前は航生」

 ロミオになんか、なりたくなくて、自分の名前を呪文のように繰り返した。


「あーもう夢なら覚めてくれ!」



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