ここまで聞けば、もうわかるだろう?
僕は、ほんの些細な誤解と、たった一度の裏切りで──
そう、間違いなくそうだ。
どれほど「信じない」と決めても、その言葉を胸に刻んでも、
僕の心は最後まで、『彼女』を信じ続けていたんだ。
それほどまでに、『彼女』という存在は、
僕の心の中で大きくて、温かくて、壊せない光だった。
だけど、最後の最後に、裏切りは──残酷にも、完全だった。
悲しみは胸の奥底で激しく渦巻き、
苦しみは、骨の髄まで染みわたり、
張り裂けそうな胸に、呼吸すら困難だった。
世界は灰色に染まり、
希望は粉々に砕け散った。
現実は、あまりにも冷たくて、
涙は止まらず、
何もかもが嫌になった。
その時、僕の中で何かが切れたんだ。
自分でも気づかぬうちに、
──僕は、『彼女』を殺した。
それは、形のない、手で掴めない“何か”だったかもしれない。
けれど確かなことは、
僕の手で、僕の意思で、
僕の中にあった“物語”の主要な存在が消え去ったということだ。
その瞬間、僕は静かに、物語の幕を下ろした。
もう、戻れないことを知りながら。
物語は、悲しみに包まれたまま、終焉を迎えたのだ。
……どうだい?
僕の話を聞いて、どんな感情を抱いただろう?
惨めだろう?
小さくて、取るに足らない存在だろう?
本当に、バカみたいだよ。
見てくれよ。
今も、この手は震えている。
自分で終わらせた物語の結末を知りながら、
今なお、深い後悔が胸を締めつけている。
僕が殺したのは、ただの“彼女”ではない。
僕が殺したのは、かつて信じていた希望であり、
心の中の神だったんだ。
だから、僕は言う。
ーー神は、もう死んだんだ。だって、僕がその神を殺したのだから。