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犬面人のポチ
犬面人のポチ
寄道ゆらり
現実世界現代ドラマ
2025年06月11日
公開日
1.5万字
完結済
 私は犬面人である。  生まれた時から二足歩行でスーツを着ている。  名前はまだない。 「あなたの名前はポチでどうでしょうか?」    お嬢様の楓に拾われたポチはペットとしての日常を送ることに。  彼女は犬か人間か、それとも都市伝説か……。

第1話

 私は犬面人である。

 生まれた時から二足歩行でスーツを着ている。

 名前はまだない。

「あなたのお名前はポチでどうでしょうか?」

 私の名前が決まった。

「ポチか。……よいぞ」

 私に名を付けた少女は微笑む。

「決まりですわね! ポチ、私のお家にいらっしゃい」

 私は名前を貰う代わりに彼女の望みを叶えると約束した。

 約束は果たさねばならぬ。

「だが、その前に一つ教えてくれ楓殿。私は何故生まれたのだ?」

 楓殿は頬に手を当てて考える。

「わかりませんわ。でも、私昔から犬を飼いたかったのです」

「質問の答えになっていないが?」

「今私の住んでいるところは犬禁止令が出ているのですわ」

「……」

 それと私の疑問がどう繋がるかわからぬが大人しく聞くとしよう。

「ですが、あなたは体が人間なので、犬扱いにはならないのですわ! 多分!」

「うむ。私は生まれたばかりの都市伝説のはずである」

 私は何なのか、私は知りたい。

「都市伝説とかはどうでもいいですわ。顔だけでもワンちゃんであればいいのですわ!」

「ワンちゃんではない。私の疑問に答えるがいい楓殿。何故私は生まれた?」

 すると楓殿は満面の笑みを浮かべた。

「そんなの決まっていますわ。きっと私の飼育欲を満たすためですの!」

 ふむ、なるほど。

「わからぬ」

「まあまあ」

 楓殿はバッグから首輪とリードを取り出した。

「何故私の首に嵌める?」

「え、だってワンちゃんには首輪が必須ですわよね? マナーですの」

「楓殿、私はワンちゃんではない。犬面人だ。都市伝説だ」

「ポチ、お家に帰りますわよ~」

「まて楓殿、私はまだ質問の答えを貰ってな――」

 こうして私の名前はポチになった


 駅前にあるタワーマンション。

 そこが楓殿の自宅だった。

「楓殿はお金持ちか?」

「私のお父様とお母様がそうなだけですわ。ここは海外で働いているお母様とお父様が私に与えたお家ですの」

それをお金持ちというのではなかろうか。

「ポチにもわかるように言うと犬小屋ですわ」

「わからぬ」

 私が思い浮かべる犬小屋とはだいぶ違う。

 エレベーターの扉が開く。

「つきました。最上階ですわ。ポチ、まずはお風呂に入りましょうか?」

「お風呂はわかる。人間が体を清めるとこだ。私は犬面人だがお風呂に入っても良いのか?」

「当たり前ですわ。ポチはこれから室内犬になるのですよ? 汚れた体でお部屋に入れるわけにはいきません」

「室内犬ではない。私は犬面人――」

「はいはい。行きますわよ~」

 いつの間にかタオルとお風呂用品をその手に、楓殿は私を引きずっていく。

 ふむ……犬面人は室内犬なのか?


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