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第6話 あるまじき行為

 私は突き放そうとしても先生の方がもちろん大きいし、力が強い。



 私の体に腕を回し、私を抱きしめる。温かい体温が伝わる。心臓のばくばくが伝わる。


 ようやく先生は離れてくれた。少し顔が赤い。私なんてもっと赤いだろう。

 私をベッドから起こしてくれて服の乱れを直してくれた。

「ごめん、教師としてあるまじき行為をした」

 私のドキドキはおさまらない。急にキスされたっていうのもあるけど……。


「自分からこの場作ったのに謝るなんてあれだよな」

 苦笑いしてる先生。すると保健室の先生が帰ってきた。ドアの開く音で私たちはびっくりした。


 少し早かったら抱き合ってる姿を見られたかもしれないが、私が座ってるところはベッドだ。どうしよう、どうみても……私たち何かした後って……。


「水城さん、また体調悪かったら横になっててもいいのよ。」

 よかった、怪しまれなかった。鈍い人でよかったわ。


「明里さん、僕は戻ってます。」

 でも先生の顔はまだ赤くなってる。足を引きずるフリをして去っていく。


 私は横になった。私は保健室の先生とは反対の方を向いて。


 なぜか涙が出てきた……。キスもびっくりだったけど、足に当たった先生の膨らみにも……。





 その日は一日中モヤモヤしていた。晴れたり雨降ったりの空と同じように。

 隣の席の高橋に

「ま、まだ……調子よくないんじゃ……ないのかな?」

 と心配されるし。


 誠也先生とも目があっても私は逸らしてしまう。


 ……。





 放課後、また大雨だ。止みそうにもない。ぼーっとまた図書館で雨の音を聞きながら本を見る。


「明里さん、やっぱりここにいた。」

 ……誠也先生が立っていた。他に数人ほど生徒はいたけどみんな本に集中してる。


 私も先生に返事をすることなく本棚を見る。

「ちょっと話がしたい。」

 私は先生が近づいてきても離れる。

「本当に悪かった。その、なんというか。」

 それでもついてくる。懲りない人。


「図書館は私語は禁止です。外に出ませんか」

 やはり誰かに見られてる気がして、ていうか見られてるけど。図書館から出た。


「……しばらく雨が続くな。帰りは大丈夫か?」

 ……大丈夫じゃないから図書館で待ってたの。先生はなんかそわそわしている。


「送っていくよ。……今度は下心なしで、車の中の方が他の人に聞かれないし。」

 2人きりってのが一番あれなんだけど。まだ雨が強く、さらにさっきよりも強くなった。


「……はい、じゃあ……お願いします。」

 私がそういうと、先生が少しびっくりした顔してたけど。自分で言っておきながら。


「裏の玄関に車を持ってくるんで……待っててください。」

「はい……。」

 なんだかわからないけど2人の間に何かあるというか、何度も目を合わせて……こんなところ誰かに見られちゃヤバイよ。

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