私は突き放そうとしても先生の方がもちろん大きいし、力が強い。
私の体に腕を回し、私を抱きしめる。温かい体温が伝わる。心臓のばくばくが伝わる。
ようやく先生は離れてくれた。少し顔が赤い。私なんてもっと赤いだろう。
私をベッドから起こしてくれて服の乱れを直してくれた。
「ごめん、教師としてあるまじき行為をした」
私のドキドキはおさまらない。急にキスされたっていうのもあるけど……。
「自分からこの場作ったのに謝るなんてあれだよな」
苦笑いしてる先生。すると保健室の先生が帰ってきた。ドアの開く音で私たちはびっくりした。
少し早かったら抱き合ってる姿を見られたかもしれないが、私が座ってるところはベッドだ。どうしよう、どうみても……私たち何かした後って……。
「水城さん、また体調悪かったら横になっててもいいのよ。」
よかった、怪しまれなかった。鈍い人でよかったわ。
「明里さん、僕は戻ってます。」
でも先生の顔はまだ赤くなってる。足を引きずるフリをして去っていく。
私は横になった。私は保健室の先生とは反対の方を向いて。
なぜか涙が出てきた……。キスもびっくりだったけど、足に当たった先生の膨らみにも……。
その日は一日中モヤモヤしていた。晴れたり雨降ったりの空と同じように。
隣の席の高橋に
「ま、まだ……調子よくないんじゃ……ないのかな?」
と心配されるし。
誠也先生とも目があっても私は逸らしてしまう。
……。
放課後、また大雨だ。止みそうにもない。ぼーっとまた図書館で雨の音を聞きながら本を見る。
「明里さん、やっぱりここにいた。」
……誠也先生が立っていた。他に数人ほど生徒はいたけどみんな本に集中してる。
私も先生に返事をすることなく本棚を見る。
「ちょっと話がしたい。」
私は先生が近づいてきても離れる。
「本当に悪かった。その、なんというか。」
それでもついてくる。懲りない人。
「図書館は私語は禁止です。外に出ませんか」
やはり誰かに見られてる気がして、ていうか見られてるけど。図書館から出た。
「……しばらく雨が続くな。帰りは大丈夫か?」
……大丈夫じゃないから図書館で待ってたの。先生はなんかそわそわしている。
「送っていくよ。……今度は下心なしで、車の中の方が他の人に聞かれないし。」
2人きりってのが一番あれなんだけど。まだ雨が強く、さらにさっきよりも強くなった。
「……はい、じゃあ……お願いします。」
私がそういうと、先生が少しびっくりした顔してたけど。自分で言っておきながら。
「裏の玄関に車を持ってくるんで……待っててください。」
「はい……。」
なんだかわからないけど2人の間に何かあるというか、何度も目を合わせて……こんなところ誰かに見られちゃヤバイよ。