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第12話 イケメン大好きモモカちゃん

     なんか夏木くんが叫んでたけど、しーらないっと。

     廊下を歩く。なんだか落ち着かない。ここはどこだ?

     あの日以来俺は視線に敏感になっていた。人からの視線がビシビシ当たる。指先が少し震えているのがわかる。俺は手を固く握る。そして、足早に人が居ないところを探す。なんだか見慣れた所まで戻ってきた、階段をたくさんのぼって、のぼって、一番上まできた。この扉は……。


     ガチャ


     扉を開けると、そこには青空が広がっていた。


「 うわぁー、ここは屋上かな? 」


     俺は端の柵がある場所まで行く。

     ここは、ゲームで見たことがある。夏木くんが、風太に自分の思いを伝えるシーンで出てきた場所だ。ゲームでは夕方で夕日が綺麗な少し寂しげな場所だったが、今は満面の青空で雲一つない快晴だ。


「 綺麗だな……。 」






「 誰かいるの? 」


「 え…………。 」


     少し時間が経って声が聞こえた。

     振り向くと後ろにある扉の向こうの日陰から女の子が出てきた。















     私の名前は朝日奈桃花( あさひなももか )前世の名前も朝日奈桃花、なぜ前世のことを知ってるかって?そーれーはー、私には前世の記憶があるからなのです!つまり私はこのゲームの転生者なのです。私はこのゲームを知っている。このゲームは私の前世で有名だったBLゲームの季節風というゲームなのです。別に私は腐女子ではないです。ただ私は生粋のイケメン好きなのです!イケメン最高!イケメンしか勝たん!私はイケメンが好きで好きで仕方がなかったのです。腐女子ではない私がBLゲームを買った理由の一つがその私のイケメン好きなのです。もう、ほんとに、このゲームのキャラクター達が私のどタイプなイケメン達なんですよねぇ〜。ボイスが聴きたくて色んなルートをやりまくった。BLに対して偏見はないし、スムーズにゲームをすることができた。私はある日、不運な事故で死んでしまった。そして転生した、前世の私と同姓同名の朝日奈桃花として生まれ変わった。前世にはもう未練などない。だってこの場所には、私の大好きなイケメン達がいるのだもの、三度の飯よりイケメンが好き♡

     私は今ゲームの学校に入学しています。実は私、ゲームの攻略対象の青葉夏木様と同い歳なのです!早速、青葉夏木様を、見ようとしたが、人が多すぎて全く見れなかった。仕方なく、人が少なくなるのを待とうと、屋上へきた、ここはゲームで私が一番好きなシーンの場所……。うふふ、なんかゲームで見たのとは違うけれど、やっぱりすっごく綺麗だなぁー。


「 綺麗だな……。 」


     その時唐突に風のような声が聞こえた。

     びっくりしたあああ、ここに人が来たんだ、気づかなかった。声を聞いた感じ、男の人かな?私の知っているキャラクターではないみたい。私の思っていることと、同じことを思っているんだ。そうだよね、やっぱり綺麗だよね。なんだか気が合いそう。運命だったりして、くひひ。そうだ!運命的な出会い、一度してみたかったんだよね。ここに来た人がどんな人か気になるし、まぁ、この世界ではメインキャラクターしかイケメンはいないから、あんましイケメンは期待できないかな。友達……とか……なれるかな?

     私こうゆう感じだから、前世でも友達も恋人もできなくて、なんて言うかな、理想が高すぎるって言うのかな。

     そう思いながら腰をあげる、向こうの方にいるのかな、暑いから日陰にいるけど向こうの方の景色すっごく綺麗なんだよね。


「 誰かいるの? 」


     後ろ姿が見える。なかなか様になっている。なんかイケメンな気がする、いやいや雰囲気に流されるな、でもでも、私のイケメンレーダーにビンビン反応しているよ。


「 え…………。 」


     相手の男の子は少し拍子抜けしたような声を出して急いで振り返る。なんだか心臓がバクバクしてきたぞ。友達ができるチャンスを無駄にはできない!

     そうして、日光を反射して少し光っている、サラサラの髪の毛がふわりと揺れて、男の子がこっちを見る。その瞬間私は目が釘付けになった。その吸い込まれそうな青色の瞳を見つめながら。

     私が何も言わないので男の子は少し困ったような顔をした。心臓の音が大きい。

     たった、数十秒見つめあっただけなのに、私は何時間も時間が過ぎている気がした。やっと私は口を動かした、彼の困った顔がだんだんおろおろと心配したような顔になってきたからだ。


「 えっと、急に話しかけてごめんなさい。他に人がいるなんて思ってもみなかったから。えっと、その、ここの景色いいよね。 」


「 ううん、大丈夫だよ。君もこの景色が好きなの? 」


「 ええ、とっても大好きなの!空がよく見えて、きっとこの場所ならどんな空でも綺麗だと思うの!あっ、ごめんなさい喋りすぎちゃったわ。 」


「 俺も同じ気持ちだよ。ここは風も心地いいね、同じ気持ちの人がいて良かった。 」


     そう言って彼は微笑む。少しだけ他愛のない話をする。


「 あっ、そろそろ戻らないと、もうすぐチャイムがなるし。君も制服の色同じだから、一年生だよね、同じクラスかどうかは分からないけど、また会えるといいね。少しだけど話せて楽しかった。」


「 私はもう少ししたら戻るよ。私も話せて楽しかった! 」


     彼はそう言って屋上からでていく。私は彼に別れの言葉を言い、彼が見えなくなるまでその背中を見ていた。彼の背中が見えなくなった頃、私は床に倒れ込んだ。


     なにあれなにあれなにあれーっ!知らないんですけど、あんなイケメンがいるなんて聞いてないんですけど!めっちゃ運命の出会いじゃん!ゲームの攻略対象よりも先に、イケメンを見ることができた。ゲームではあんなイケメンなんて出てこなかったんですけどおおおお!もしかして新キャラ?私の知らない隠れキャラってやつ?!


     そんな感じに興奮していたら、


「 あっ……名前聞くの忘れてた。 」


     キーンコーンカーンコーン


     私は無事間に合わなかった。



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