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     エピローグ

 アメリカ大陸の北の方、カナダに近い所に、『神官王国』という国があります。

 その国の、ある地方に、むかし、セメタリータウン(お墓の多い街)という街がありました。そこの街にはあるステキなうわさがありました。


 この街には、むかーしむかしから、『白き魔女』というステキな魔女が住んでいたそうな。

 その白き魔女は、『人々をシアワセにする』のが大の得意でした。

 ひとりぼっちの人には『お友達ができる力』を与えたり、ウソがやめられないひとを『正直者』に変えたり……もっともっと語りつくせないほどのステキな力をもっていたんだそうです。そう、ひとを幸せにするためなら、どんな努力も労力も惜しまない、そんな魔法使いのおばあちゃんでした。


 ある雪の深い日の事でした。父親が戦争で亡くなり、母親が出産と同時に力つきて他界してしまった、不憫な女の子がおりました。

 おりしも、その日は聖なる日。十二月二十四日。前夜祭の日でした。

 白き魔女は、自分の老い先があまり長くないことは重々知ってはおりましたが、自分にとって最後の大仕事だと思って、自分の娘の産んだその赤ちゃんを引き取って大事に大事に育てました。

 その彼女ももう五歳になり、来年からは小学生です。でも、彼女はひと見知りがはげしくて、近所のひとが「おはよう」といってくれても、すぐに自分の後ろにかくれてしまうのです。

 そこで、白き魔女は考えました。この子が立派になるには、まず『おともだち』が必要だと。おともだちができれば、たくさんのことを学び、成長してくれることでしょう、と。



ある晴れた日曜日。今日も今日とてロップちゃん。シンシアと一緒にお散歩です。もちろんハロウィンポーチのジャックと子ネコのペロも一緒です。

「こんにちは、シンシアちゃん、ロップちゃん」

 道すがらスミスさん家のロールおばさんが二人に声をかけます。

「ごきげんよう。おばさま」

「こんにちは。ロールおばさん」

 二人はなかよくほほえんで、きちんとごあいさつしました。

「あら、ロップちゃんがごあいさつしてくれるなんて、おばさんとってもうれしいわ」

「うん。わたしちゃんとごあいさつできるよ。だからこれからはもっとなかよくしようね」

「ええ、もちろんですとも」

 ロールおばさんはとても嬉しそうにニッコリしました。

「そうそう、今朝お庭を見ましたら、みた事のないかわいいお花が一輪咲いておりましたの。ふしぎですわ」

「シンシア。それはきっと大地の精霊さんがお花の種をこっそりまきにきたのよ。きっと」

「まあ、ステキね。ウチにも来てくれないかしら」

 ロールおばさんはうらやましそうにいいました。


『あいさつ』はなかよしのまほう。あいさつのおかげで……ほら、話しに花が咲きました。


 おばあちゃんは今日も、ロップちゃんの成長を日記に書き記します。この日記がとまるまえに、彼女にせめて、『いつでも自分の力でシアワセを作れる』女の子になってほしいな、とおばあちゃんはつよく、つよくおもいました。


 もし、ロップちゃんが、『白き魔女』になりたいと願うなら、おばあちゃんは彼女を立派な魔女にすることでしょう。よい心がけを積み重ねればいつの日か、きっと『白き魔女』になれるはずです。


でも、おばあちゃんが本物のまほう使いだって事は……だれにも、だーれにもナイショですよ。いいですね。約束ですよ。



めでたし、めでたし。 

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