「わあ、ホントに絵画がある。ロップちゃんありがとう。さかさまだけどとってもうれしいよ」
「あちゃあ」
ロップちゃんは自分のおでこをピシャリと叩きました。
大きな絵画はたしかにもとの場所にもどっておりました。が、上下がさかさまでした。
おそらく、コウモリのまほうがいけなかったのでしょう。絵画をコウモリにした時は、バサバサと空中に現れて、戻った時に逆さまにとまって役目を終えたのでしょう。大失敗です。
彼は神殿の大きな絵画を見るなり、そう言ってロップちゃんの両手を握りました。ロップちゃんのかたわらにいるシンシアは、彼以上に嬉しそうです。
「何かお礼をしないといけないね。僕にできることなら何でも言ってよ」
彼は瞳を輝かせながらいいました。するとシンシアはちょっとくやしそうに下くちびるをつきだしました。
もう、わかってるわ、シンシア。ロップちゃんの願いはもう決まっていました。
「じゃあ、わたしとシンシアとロバート、これからはずっとなかよしのおともだちでいてね」
「それは、できないなぁ」
「えっ?」
「どうして……」
彼の口から出た言葉に彼女は耳を疑いました。シンシアはもっとショックでしょう。なんで、なんでダメなんだろう。
「君とシンシアと僕はいままでずっと前から友達じゃないか。いまから友達になるなんて出来ないよ、ね」
「ええっ?」
なんてイジワルな、でもあったかい言葉なんでしょう。ロップちゃんは悲しいのかうれしいのか分からないままに泣き出しました。
「ゴメンね、びっくりさせて。こちらこそよろしくね」
彼はロップちゃんとシンシアの手を取るといいました。
「今日、僕は君を探していてハロウィンパーティーのダンスをしてないんだよ。一緒に踊ってくれるかい?」
「わ、わたしダンスなんてしたことないから……」
そういってロップちゃんは固まってしまいます。でも、
「ダンスはね、ステップなんてどうでもいいんだよ。みんなで楽しむことが一番大事なんだ。そのうちお互いの気持ちがきっと一つになれるから。そうだよね、シンシア」
「えっ? ええ、そうね」
急に話しかけられて、シンシアはちょっととまどってしまいました。
そして三人は踊り続けました。ロップちゃんは心から思いましたこのままの時がずうーとずうーと続けばいいな、と。
もしこのステップに名前をつけるとしたら……『おともだちのワルツ』でしょうか、ね。
「でもね、ロップちゃん。わたくし『負けません』ことよ」
シンシアは、ロップちゃんにだけ聞こえるようにちいさな声で彼女の耳にささやきました。
ロップちゃんは思います。シンシアがもっともっとロバートとなかよしになって、大きくなって彼のとなりで真っ白キレイなウエディングドレスを着ることになったら、なんてステキなんでしょう。そのときの彼女の笑顔はきっと世界中のどんな宝石よりも輝いているだろうな、と。そしてそれを見られれば、自分はとってもとってもシアワセに思うんだろうな、ってね。ガンバレ。シンシア。
ロップちゃんは彼女にウインクを送りました。
そんなロップちゃんたちを、彼女のおばあちゃんは、愛用の水晶玉を通して見ていました。
「ロップや。いいおともだちができたね。本当におめでとう。よかったね」
そして、そっとつぶやきました。