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四国を拠点とし、室町時代からつづく、祓い屋の一族である。
元は都で守護についていたが、帝の勅命で四国地方の守護に就く。
刀や槍にとどまらず、薙刀や弓など、さまざまな武具を扱うことに長けている。
自らの霊相から霊具を介して、武具を生成する事が可能だとされている。
そして、新たな当主となった燐が使用している輝刀、[
四輝院の本家は、百年前に羅刹によって凄惨な被害を受けた。
そのとき、当時の当主も討ち死し、四輝院家は壊滅寸前となる。
しかし、それを分家である濱元家の燐の先々代から、さらに先代にあたる曽祖父が立てなおす。
その後は、形式的に濱元家が本家として四輝院家を引き継ぐ事となり、順調に体制を取りもどすことができた。
だが、その孫である先代の燐の父親も、九十八年後となる二年前に、羅刹によって殺されてしまう。
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東北地方の山間部にある小さな集落で、ひっそりとかくれるように暮らす、小さな祓い屋の一族である。
その歴史は長く、古き平安時代にはすでに存在しており、当初は呪術での暗殺を生業にしていたという。
そんな一族には、特別な特徴がある。
祓い屋とは別に、【
鬼戸一族によって今までに、数おおくの呪具や呪物が制作されたのである。
そして、蓮葉が使用する小さな水晶玉と呪符の札で構成される呪具[
これは、蓮葉が自らの手で制作したものだそうだ。
現在は、東北北海道方面鬼霊対策室の室長であり、睡蓮の名をかざる鬼戸睡蓮が当主である。
◆◇◆◇
燐の持つ輝刀の光が、どんどん輝きを増してゆく。
鮮やかな翡翠色をした刀身が、同色の綺羅びやかな燐光を纏いはじめる。
燐が待つ[明翠燐光]は、古くから四輝院家の当主へ、代々受けつがれてきた。
戦闘のスタイルとしては、直接相手へ斬撃を与えることが、主な攻撃方法である。
だが、輝刃は刀身の長さを調整することが可能である。それ故に、スタンスにバリエーションが生まれる。
そして、霊相を大きく消費することとなるが、刃を真空波のように、飛ばすことも可能なのだそうだ。
しかし何度見ても、とても美しい刀だと見る度におもう。まだ二度目やけど。
もちろん、それを使いこなせれば、尚ええんやけど……。
次に、蓮葉へと視線を移す。
左手には、掌に収まるサイズのの黒い水晶玉を握っている。
そして、右手には数枚の呪符の札を、指に挟んで持っているのがみえる。
蓮葉が使用する呪具[獄札門]は、蓮葉が自ら制作した呪術具らしい。
数種類の術を発動する札を所持し、状況にあわせて対象者へ飛ばしたり、罠として設置することが可能らしい。
そして、水晶玉へ霊相を送ることによって、己のタイミングでの発動が可能なのだそうだ。
起こせる現象はさまざまだそうだが、まだ見たことがないので未知数である。
どちらも、シェアハウスでの共同生活初日に、ふたりから実物を見せてもらった情報である。
サクヤが只者ではないことは、ふたりは既に本能的に理解しているのだろう。
油断はないようにみえる。そろそろ、燐が動きそうやな。
燐が、刀を構えた状態で、さらに腰を落とし一気に飛びだす。
「だんっ!!」
三メートル程あった合間が、一気に縮まる。
一撃で終わらせるつもりなのだろう、躊躇のない本気の横薙ぎを繰りだす。
サクヤは、微笑みながら軽く後ろへ跳び、寸のところでそれを躱す。
燐は止まることなく、さらに踏み込み、強烈な縦一文字を放つ。
サクヤは、それを体をくるりと九十度回転し、余裕で躱してしまう。
「まだまだっ!!」
それからしばらく燐の連撃が続くが、サクヤは微笑みながら、それをことごとく躱しつづける。
燐の横薙ぎに対して、サクヤが大きく空中へ跳ぶ。
そこへ、燐が好機とばかりに、袈裟斬りと同時に、翡翠色の光の刃を飛ばす。おお……かっけぇ……
しかし、それをサクヤは、まるで地面に足がついているかのように、体を反らして刃を躱してしまう。イナバウアーかよ。
「!?」燐の顔から驚きが出てしまう。
トンッと、サクヤが地面へ降りてくると、同時に燐が再び走りだす。
その時、サクヤの頭上から、紫色をした光の柱が現れる。
直後、直径一メートル程の光柱が、サクヤを包みこむ。
「これは……」サクヤから、微笑みが消えた。