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112 村に戻ろう



 ミナト達は、ゆっくりと廃村の中心へと進んでいく。

 すると、コボルト達の元気な声が聞こえてきた。


「この家は建て直した方良さそうだ」

「大半は建て直すべきかもしれんな。綺麗に見えても木が腐りかけているかもしれん」


 どうやら、住居の大半は建て直さないといけないらしい。それでもコボルト達の声は明るい。


「調べてみたが、このカボチャ畑は、相当疲れているぞ! 休ませた方が良さそうだ」

「小豆を植えるのに適した畑は見つかったかね?」

「それならこっちの畑が――」


 畑を調べているコボルト達の声も明るかった。


「みんなー! ただいまー!」「わふわふ~」

 ミナトとタロが元気に挨拶すると、

「あ、ミナト、タロ様! お帰りなさい!」

 コボルト達が尻尾を振りながら集まってくる。


「と、虎だ! でかい!」「おお! すごい!」

 コボルト達は虎3号を見て、驚いている。

 だが、ミナトとタロと一緒にやってきたからか、怯えてはいなかった。


「みんな! この人は氷竜のレックスだよ!」

「氷竜様ですと!?」

「そう! レックスは氷竜王の山に登ったときに、僕たちとパーティを組んでくれたんだ!」

「なんと! それはそれは、コリンがお世話になりまして……」

「そして、この子がコトラのお姉ちゃんの虎3号だよ!」

「コトラさんの姉上ですか、コリンがいつもお世話になっております」


 ミナトが紹介すると、コボルト達は順番にレックスと虎3号に挨拶していく。


「魔猪さん、みんなにも紹介しよう!」「ばうばう」

「ぶぼぼ~」


 魔猪が吠えると、廃村を守ってきた魔獣達が集まってくる。


「ぶぼぼぼぼ~」


 魔猪が、レックスと虎3号のことを紹介すると、魔獣達は皆驚いたようだった。

 レックスを見たことのない魔獣達も少なくなかったからだ。


「ぶぼぼ~」「きゅいきゅい」

「おお、俺が氷竜のレックスだ。ここの主をしている。よろしくな」

「がうがう」


 魔獣達はレックスに挨拶をし、それから虎3号にも挨拶をした。



 みんなの挨拶が終わった後、ミナトがコボルト達に説明する。


「えっとね。魔獣さん達はみんなに協力するから、収穫物の一割をあげてね!」

「おお、ありがとうございます!」

「何か問題が起こったら、俺に言ってくれ。俺は人族と魔獣達の言葉がわかるからな」

「レックスは、魔猪さん達の主なんだよ!」

「おお! なんと!」


 それから、レックスとコボルト達で細かい条件などを話し合った。

 その話し合いには、聖女であるアニエスが立ち会って、契約書の草案としてまとめる。


 その間、ミナト達は果樹園を走り回っていた。


「リンゴがおいしそう!」

「ばうばう!」「りゃ~」

「おいしそうです!」「んにゃ~」

「ブドウもある!」

「わふわふ!」「ぴぃ」「ぴぎ」

「ブドウもおいしそうです!」「な~」


 ルクスを頭の上に乗せたミナトは、面白いものがないか走って見て回る。

 その後ろをタロとピッピとフルフル、コリンとコトラがついて行く。


 さらにその後ろを、魔狸がついてきた。

 ちなみに魔猪と魔鼠と魔山羊、魔梟は契約が気になるようで、レックス達の近くにいる。


 虎3号はコトラについてきたそうではあったが、話し合いを優先した。


「ぴぎっ!」


 ミナトが走っていると、突然、フルフルが鋭い声で鳴いた。


 フルフルは少し離れた林の中にいる。

 果樹園ではなく、防風林の役目を持っているらしい林の中だ。


「フルフルどうしたの?」

「ぴぃぎ~」

「あ、キノコを見つけたんだ……。これは松茸?」


 ミナトは松茸を食べたことがない。だが、スーパーマーケットで見たことがあった。


「ぴぎ~」

「変わった匂いだねぇ」「わふわふ」

「あ、松茸です! これおいしいですよ! 香りもいいですし!」「りゃむ!」

「そうなんだ!」「りゃむ~」


 ミナト達が松茸らしきキノコの匂いを嗅いでいると、魔狸が鳴く。


「きゅ~」

「え? みんなは、松茸は、あんまり好きじゃないの?」

「きゅきゅ」


 魔狸は食べられなくもないけど、別に好んで食べるわけではないという。

 畑になる野菜や果樹園の果物、それにどんぐりの方がおいしいらしい。


「きゅいきゅい?」

「僕は好きなのかって? 食べたことないからわかんない」

「ミナトは食べたことないです? 結構おいしいですよ? 魔狸さん、採っていいです?」

「きゅい~」

「いいって!」


 魔狸から許可をもらってコリンは松茸を採取する。


「僕も採る! 松茸じゃない茸もいっぱいだねー」

「わふわふ!」「りゃあ~」


 ミナトが松茸を探し始めると、タロとルクスも探し始めた。


「松茸は見分けやすいですけど。茸は基本的に毒茸と見分けるのが難しいですよ」

「そなんだ! あ、僕は【毒無効】があるからね! 食べて確かめてもいいかも」


 スライム達にもらった【毒無効】のスキルがあるのでミナトは、毒茸を食べても平気なのだ。


「【毒無効】があっても、毒があったら気づけるからね!」

 苦かったり、舌に違和感があったりする。


「ぴぎ~」

「フルフルは毒茸に気づかないの? そなんだ!」

「ぴぎぴぎっ」


 フルフルは毒茸もおいしく食べられるのだ。


「あ、コリン! 採った松茸はサラキアの鞄に入れておこう」

「はいです! それにしても、いっぱい生えているですねー」


 魔獣達は松茸をあまり食べないから、豊富になっているのかもしれなかった。


「松茸は焼いてもおいしいし、炊き込みご飯にしてもおいしいです。作ってもらうです!」

「そうなんだ! 楽しみ!」「りゃっりゃ!」


 ミナトの頭の上にいるルクスも、嬉しそうに尻尾を振った。


「ルクスもたべたい?」

「りゃ~」

「ばう!」

「あ、そっちにあるの? さすがタロ、鼻がいい!」「りゃ~」

「わふ~」


 ミナトとルクスに褒めて撫でられて、タロは嬉しくなって尻尾を振った。


「こっちにもあるです」「んにゃ~」

「おおー、コリンもコトラも鼻がいいね! すごい」「りゃ~」

「そんなそんな、普通です!」「ゴロゴロゴロ」


 コリンとコトラも褒められて、嬉しそうだった。


「松茸はこのぐらいかな? 大分採れたねー?」

「はいです! これだけあれば、全員分の松茸ご飯を作っても、まだ余裕があるですよ!」


 そのとき、松茸採取を見物していた魔狸が鳴いた。


「きゅっきゅい!」

「え? 松茸よりもっといい物があるの? おしえておしえて!」

「きゅ~」


 魔狸は先頭に立って走り出す。

 その後ろをミナト達は走ってついて行った。







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