目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報

??? 編

Opening

「ユトス……?」


 震える声。返ってきたのは、機械のように平坦な一言だけだった。


「……誰だ?」


 裂け目が地平線まで広がり、むき出しとなったアンダーネストがその惨状を晒していた。 地下都市が崩壊したその跡は、地球そのものが引き裂かれたかのような無残な姿をしていた。巨大な亀裂の中には垂れ下がった配管や、地震で隆起した地層が鋭くむき出しになり、瓦礫と残骸が複雑に絡み合っている。

 腐敗した触手や骨格が地面を覆い、不気味な蒸気が霧のように亀裂を漂っている。その死骸は地上の荒廃をさらに際立たせ、人々がかつて信じた「地下の安全」という幻想を完全に打ち砕いていた。瓦礫の隙間から冷たい風が吹き抜け、亀裂全体に低く唸る音を響かせている。

 その頭上には、巨大な球体は冷たい虹色の輝きを帯びており、かつて未来への希望とされていた。だが、その輝きは今や荒廃した地上を見下ろし、冷徹で無情な象徴に変わっていた。投げかける光が亀裂を優しく照らすほど、地上の荒涼とした風景は逆に際立っていた。


「……待って!」


 彼女はさらに声を張り上げる。

彼は答えもせず、振り返るとその虚ろな瞳はマリナではなくどこか遠くを見つめている。イリスが一歩前に出る。その足音は静かだったが、突き刺さるような威圧感を帯びていた。


「あなたの声は届かない」


 冷たい風が三人の間を吹き抜けた。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?