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第6話 ひとりかくれんぼ

これは私が高校生の頃に体験した話です。



「ねえ、知ってる?“ひとりかくれんぼ”ってマジでやばいらしいよ」


学校でそんな噂が飛び交っていたのは、つい最近のこと。

流行りの動画サイトをきっかけにまた話題になったらしい。


私は怖いもの見たさというより、ただ話題についていきたかっただけだった。



実際は霊とか信じてないし、どうせ何も起こらない。

ただやったって言えばみんなに注目されるかもしれない。

それくらいの軽い気持ちだった。


放課後、私はスマホで“ひとりかくれんぼのやり方”を調べ、家にあったぬいぐるみを引っ張り出して準備を始めた。


赤い糸、米、水、そしてぬいぐるみの中に自分の爪を入れる――

ルールは意外と細かかったけど、全部ちゃんとやった。

時計が午前3時を指したとき、私はひとり薄暗い部屋の中で儀式を始めた。


「私が先に鬼だから――」


手順通りに進め、ぬいぐるみを風呂場に置いて部屋に戻った。


何も起きるはずがないと思ってはいたけど

それでも心臓はどくどくと脈打ち、妙に背筋がぞわついていた。


そのときです。


突然スマホの着信音が鳴り響きました。


あまりのタイミングにびくっとなり、

口に含んでいた“結界用の塩水”を思わず吹き出してしまったのです。


「あ……やば……」


"ルールでは塩水を口に含んだままが“安全圏”とされている。

それを吐き出したとなると私は今――無防備な状態。


私はパニックを抑え込み、こんな時間に誰だろうとスマホを手に取った。


(……?)


……履歴がない。


何度見ても着信の記録が一切残っていなかった。


(さっき鳴ったよね? 絶対……)


不気味さが一気に広がっていきました。


私は慌てて風呂場に向かい、ぬいぐるみをビニール袋に詰めてゴミ箱に捨てました。

もう終わった。そう思いたかった。


――でも、部屋に戻ったそのとき。


天井の明かりがチカチカと点滅し始めたのです。


(え……?)


電球切れ?いや、さっきまでは普通だった。

目を細めてライトを見上げたその瞬間――


視界の中に“何か”が入り込んでいるのが見えました。


明かりがチカチカと点滅する中、

その合間に、一瞬ずつ“男の顔”が浮かび上がるように現れていたのです。

怖いほど近くにそれはいました。


とても不気味な、見たことのない男の顔。

肌は土色で、唇は裂けたように吊り上がっている。

その顔が――私の目の前でニヤリと笑ったのです。


「……ッ!!」


私は叫ぶこともできず、そのまま意識を失いました。


気がついたら朝になっていて私は床にそのまま倒れている状態。


カーテンの隙間から差し込む朝日。

ぬるい空気。

明かりは普通についていたし、あの顔はどこにもありませんでした。


まるで夢だったかのように部屋は静まり返った状態。


でも、私は絶対に忘れることはありません。

あの夜、確かに“何か”を見たことを。


ひとりかくれんぼが原因だったのかは分かりません。

でも、あの夜を思い出すだけで今も足がすくむのです。


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