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第72話 絶対に後輩ちゃんを守る


さっき、星野侑二は本当に心底から怖かったんだ。


怖かった――愛する人を、永遠に失ってしまうことが!


今、彼の愛する人は、まだ生きている。

それはつまり、まだ償うチャンスがあるということだ!


星野は身をかがめ、そっと私の額にキスを落とし、低く囁いて約束をくれた。

「これからは、必ず君を大切に愛するから。」


ジェイムズは複雑な表情を浮かべ、思わず感嘆した。

「これで死なないなんて、本当に運がいいな!」


ジョン医師も同じく驚いた様子で言った。

「そうだな、彼女はまさに幸運だ。あれだけ銃弾が飛び交う中で、腕と足だけの怪我ですんだなんて。」


しかも、腕の二発は、どうやら前に撃たれたものらしい。


つまり、オスクーロ会のメンバーたちの激しい銃撃の中で、足に一発当たっただけってことだ。


ジェイムズは嫌悪を隠さず目を細めた。

「そう考えると、オスクーロ会は実にザコだな!」


—――


青野千里はそのとき、大声で嘆いた。


「深山さま、オスクーロ会の人間だって、全員がザコってわけじゃないですよ!僕は、本当に全力を尽くしたんです!」


深山彰人にはいつもの優しさは微塵もなく、無慈悲に青野にそう命じた。

「キャンプへ行って、一年再訓練だ!」


青野はその罰を聞いて、心底絶望した。


彼もまた、宮崎麻奈がソフィアに拉致された現場の観客の一人だった。

ただし、彼は任務を持っている観客だ。

その任務とは、オスクーロのメンバーが宮崎さんに発砲したとき、彼女を守ることだった。


青野は我慢できず、さらに自分の弁護をしようとする。

「深山さま、この世に僕より腕の立つガンマンは絶対にいませんよ!」

現場には少なくとも十数発の弾丸が、宮崎さんを狙っていた。

なのに、結局彼女の足に一発当たっただけなのは、全部自分が必死に、彼女に当たりそうな弾丸を撃ち落としたからだ!


そう!

それは彼が一発一発、強引に弾道をずらしたから!


深山は暗い桃花眼を向け、言葉を区切りながら言った。

「俺の命令は――一発たりとも、彼女を傷つけさせないことだ。」


青野はもう言い返せなかった。

確かに、一発を取り逃がしてしまい、その弾丸が宮崎さんの足に当たったのだ。


青野はため息をついた。

「全く、宮崎様の運ってどうなってるんだ……」


本来なら、彼女はジョイスを利用して、星野侑二とエリクソン・メディチの間に罠を仕掛け、二人の連携を阻止するつもりだった。

だが結局、災難に遭ったのは彼女自身だった。

もしボスが、彼女がソフィアに連れ去られたと知った瞬間、すぐに手を打っていなければ、宮崎さんはとっくに命を落としていたはずだ。


それでも、青野は彼女を心から尊敬していた。

「宮崎様って本当に肝が据わってる。復讐のためなら、自分の命すら惜しまないなんて!」


深山の瞳は一層深く沈む。


まさか、予想外の事態で、後輩ちゃんが捨て身で、自分と子どもの命をも駆け引きにして、星野侑二とエリクソンを分断しようとするとは思わなかった。


彼女は本当に、命がけだった。


深山の中に、抑えきれない怒りが湧き上がる。

「彼女は、俺という協力者がいることを忘れてるのか!ソフィアに捕まっても、俺なら助け出す方法はいくらでもある。もっと時間をかけて冷静に考えればよかったのに!」

うちの後輩ちゃん、どうしてこんなに無鉄砲なんだ!!!


青野は思わずかばった。

「たぶん、宮崎様はボスを巻き込みたくなかったんですよ。」


その一言は、まるでハンマーで打ちつけられたように、深山の胸を強く締め付け、息が詰まりそうになった。


彼はずっと、彼女を利用してきた。

なのに、彼女は彼を善人だと思い、必死に彼を巻き込まないように一人で背負う。


深山は顔を曇らせ、苦しそうに呟いた。

「本当に、馬鹿な子だな……」


青野は横目で深山をちらりと見て、小声でつぶやいた。

「でもボス、前は口を開けば『宮崎様はただの駒だ』って言ってたじゃないですか? でも今は、どう見ても特別に気にかけてるようにしか思えませんよ?」


今日の現場にはあれだけ大勢の人がいて、たくさんの目があった。

それでもボスは迷うことなく、「宮崎麻奈の命を守れ」と命じた。

一度でもボスの正体がバレたら、間違いなくあの連中に目を付けられる。

あの連中の残忍さを考えれば、必ずボスを殺そうとするだろう。


深山は青野のつぶやきを聞き、しばし沈黙に沈んだ。

自分でも、どうしてあんなに衝動的になったのか分からなかった。

だが、あのとき心の中には、たった一つの声しかなかった。

絶対に、後輩ちゃんを危険に晒させない!!!

さもなければ、彼は一生後悔するだろう。


長い沈黙の後――

深山は心の中の感情を押し殺し、淡々と言った。

「今の彼女には、俺が助けるだけの価値があるからだ。」


そうだ!

きっと、それだけの理由だ!

自分が重視しているのは、後輩ちゃんの価値――!!


深山は青野をちらりと見た。

「星野の背後に隠れていた連中、今回やっと姿を現したじゃないか?」


青野の表情は一瞬で引き締まった。

「まさか、『ディヴィーナ』があの連中のものだったなんて……!」


深山は驚いた様子もなく、

「あいつらは、あちこちで自分の勢力を育てるのが好きだからな。でも、一つでも星野侑二のために表に出れば、二つ目も三つ目も表に出せる……」


青野は理解できずにいた。「なぜ、あんなに星野侑二に執着するんですか?」


深山は口元を引き締めた。「星野侑二は、あの人の唯一の血筋だからな。」


星野侑二を見張っていれば、闇に潜むネズミどもを全部炙り出せる。

やはり自分のやり方は、最初から間違っていなかった!

だが、星野が順風満帆なら、あいつらの力を使うはずもない。

だから、状況を打破する鍵は、やはり後輩ちゃんにある。


深山は青野に尋ねた。「病院の様子は?」


「宮崎様の命に別状はありません。病院で救急処置を受ければ、きっと助かるでしょう。」

青野は少し間をおき、不安そうに続けた。

「ただ、彼女の子どもが無事かどうか……それは宮崎様にとって命の次に大事なものですよ!」


深山の表情はさらに沈んだ。

もし子どもがダメになったら、後輩ちゃんにとっては耐え難い打撃だ。

彼女はきっと、持ちこたえられない。


深山は急に立ち上がり、命じた。

「すぐに手配しろ。俺は後輩ちゃんに会いたい。」


青野は困った顔で、思わず忠告した。

「ボス、ここはイタリアですよ、神川県じゃありません!」

自分たちの縄張りじゃないのに、どうやって好き勝手に動けるというのか!


―――


病室の機械が「ピーピー」と警告音を鳴らし続ける中――

星野は真っ赤な目で、ジョン医師を睨みつけた。

「今、なんて言った?」


しゃがれた声には、果てしない苦痛が滲んでいる。

ジョン医師は覚悟を決めて、もう一度繰り返した。

「患者さんは一命をとりとめましたが、体の状態は極めて悪く、すべての数値が警戒レベルを下回っています。妊娠を継続するのは到底無理です……今は、赤ちゃんを諦めて中絶手術をすることをお勧めします。」


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