後輩ちゃんを必ず手に入れてやる!
そうなれば、崩壊した星野侑二は、きっともっと狂い出すだろう。
その時、星野の背後にいる連中を引きずり出せるに違いない。
これぞ、一石二鳥の絶妙な計画!
深山彰人の桃花眼はきらきらと輝き、その奥には隠しきれない大きな波が渦巻いていた。「横取りなんて、案外簡単なことじゃないか?」
もっとも、彼には経験がない。
ネットではよくこう言われている——
「壊せないカップルなんてない。いるのは努力が足りない愛人(第三者)だけ」って。
青野千里は自分のボスの興奮した様子を見て、そっと半歩後ずさりし、おずおずと尋ねた。「ボス、何をするつもりですか?」
ボスが興奮している時は、いつもろくなことがない気がする。
しかも、今度は横取り?
誰を横取りするって?
青野は慎重に探った。「もしかして……宮崎様を?」
深山は横目で青野千里を睨んだ。「ダメなのか?」
できなくはないが……
ただ、宮崎さんが本当に気の毒だと思うだけだ。彼女は前世で一体どんな業を背負っているのやら…
一人目はすぐに発狂する星野侑二で。
今度はまた、うちの性格の悪いボスに目をつけられた。
深山は部下の目にある一縷の嫌悪を読み取り、不満げに言った。
「まさか俺は星野侑二よりも劣るって言いたいのか?」
青野はすぐに最も忠誠心のある態度を見せた。
「いやいや、ボス、これは横取りなんてものじゃありません。ボスこそ、宮崎様を泥沼から救い出す救世主です!間違いなく世界一の善人です!」
そして、魂の疑問をぶつけた。
「でも、ボスは恋愛のアプローチなどができますか?」
深山彰人――深山家の跡取り、「隠門」のボス、二十年以上彼女なしの生粋の独身……恋愛経験はゼロ、女性を口説く経験もない。
威勢よく「横取りだ!」と言っていた本人は、ふいに長い沈黙に落ちた。
―――
ラファエル医療チームは、さすが国際的にも有名なトップチームだ。
彼女たちの治療のもと、私の体のあらゆる数値がようやく安定した。
この時、星野は静かにベッドのそばに座り、片時も離れず私を見守っていた。
病室は、彼の全身から発せられる冷たい気配のせいで、まるで止水のような重苦しい空気が流れていた。
その時、ジェイムズが慌ただしく病室に飛び込んできた。
「ボス、昨夜私たちとオスクーロ会との銃撃戦の動画が、誰かにネットに流されました。既に動画の処理を手配しています……メディアには出ていませんが、まだ多くの人が裏で拡散しています。」
この件については、星野も予想していた。
百人規模の銃撃戦で、しかも死傷者も出た。いくら手を使って一時的に鎮圧しても、火種は絶対に消えない。
ネット社会の今、情報はどんどん広がるばかりだ。
星野は冷静かつ断固とした口調で「処理してくれる人がある」と答えた。
ジェイムズはほっと息をついた。
「ディヴィーナ」はマフィアとはいえ、ここ数年は上の指示に従い、足を洗う道を歩んでいる。
まだ完全に白になっていないのに、こんな大規模な銃撃戦の噂が流れれば、今までの努力が水の泡になる。
今後の処理を誰かがやってくれるなら、ジェイムズも慌てることはない。
ジェイムズはさらに少し悩みつつ、慎重にスマホを取り出した。
「ボス、この動画、たぶんご興味があると思いまして……」
彼はスマホを星野に差し出した。
星野が動画を再生し、画面の中には、顔いっぱいに悲しみと絶望を浮かべながらも、ドローンのカメラに向かって、懸命に美しい笑顔を作る私が映っていた。
「星野侑二、前にも言ったけど、あなたが何をしようと私は応援するよ!」
「あなたがエリクソンとの協力をどれほど重視しているか、私は知っている。」
「だから、私は責めない。あの協力のために、私をオスクーロ会に差し出したとしても!」
星野は、私がこれらの言葉を口にした瞬間――
感情の高ぶりで体が激しく震えた。
動画の中で、ソフィアは明らかに怒りと狂気に満ちていて、今にも殺しそうな勢いだった。
それなのに、死が目前に迫っても、私はなお彼のことを想っていた。
「責めない」だけでなく、
自分を犠牲にしてまで、彼とエリクソンの協力を守ろうとしていたのだ!
星野の心の防御線は、徐々に崩れていった……
彼はずっと、小林ひるみが現れてから私が変わったと思っていた。
もう、彼を黙々と支え続ける宮崎麻奈ではないと。
もう、彼に明るい笑顔を見せてくれる宮崎麻奈ではないと。
だが――この一瞬、
星野は気づいたのだ。
記憶の中で、彼を夢中にさせたあの少女は、ずっと彼のそばにいたのだと。
ただ、偏見のせいで、私が何をしても反射的に「悪女」のレッテルを貼っていただけだった。
動画はまだ終わっていない。
画面の中の私は、優しくお腹を撫で、目には深い愛情と未練が浮かび、カメラに向かって静かに涙を流した。
「ごめんね、まだ伝えてなかったけど、私はあなたの子どもを妊娠してるの……」
その瞬間――
星野は完全に崩れ落ちた!
すべてが自分の過ちなのに、私が死の間際にまで「ごめん」と謝っているなんて?!
彼は私が出所してからずっと、かつて自分を愛してくれたあの女はもう消えたと思っていた。
しかしこの動画は、まざまざと彼に突きつけた――
私の彼への愛は、消えていなかったのだ!
彼が小林ひるみのために復讐しようとして、私を傷つけ、心まで冷え切らせ、愛を口にすることすら怖がらせていたのだ。
星野は私の手を強く握りしめ、目は真っ赤に充血していた。
「俺が悪かった!本当に悪かった!!!」と、心から悔い、私の手を唇に引き寄せて苦しく嗚咽した。
「麻奈、今になってやっと分かったんだ……俺が愛しているのは、ずっとお前だけだ!」
彼は自分が小林ひるみを好きだと思っていた……
だが、あの時小林ひるみの死を知った時、自分はただ怒りしか感じなかった。
だが、本当に誰かを愛しているなら、失うことが何より怖いはずなのだ!!!
今の彼のように、私を失うことが怖くてたまらなかった。
星野の涙が一粒ずつ落ちて、私の指先を濡らし、嗚咽しながら、これまで直視しなかった本心を告白した。
「愛してる!俺がずっと愛していたのはお前だけだ!」
長い長い昏睡の後、私はようやくもがくように目を開けた。
朦朧とする意識の中で、自分が病室にいることに気づく。
じゃあ、私はまだ死んでいないの?
自分がまだ生きていることに驚きながら、耳元で「愛してる」と繰り返し告げる声が聞こえた。
誰が昏睡している私に告白しているのかと、好奇心で顔を向けてみた。
そして――星野侑二を見た!
今、彼は私の手を握り、泣きじゃくっている。
その瞬間、私は自分がすでに死んで、異世界に転移したような気がした。
絶対違う!
きっとまだ目が覚めていないのだ。幻覚だ、きっと。
私は急いで目を閉じて、一度リセットしようとした。目の前の荒唐無稽な光景から逃れるために。
だが、閉じる間もなく、私が目を覚ましたことに気づいた星野が、抑えきれない感情で身をかがめ、私に近づいた。
「目が覚めたんだ!」
そして――
溢れる想いを込めて私の額にキスをし、そっと言った。
「麻奈、愛してる!」