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第74話 一度失いかけた後の告白

後輩ちゃんを必ず手に入れてやる!

そうなれば、崩壊した星野侑二は、きっともっと狂い出すだろう。

その時、星野の背後にいる連中を引きずり出せるに違いない。

これぞ、一石二鳥の絶妙な計画!


深山彰人の桃花眼はきらきらと輝き、その奥には隠しきれない大きな波が渦巻いていた。「横取りなんて、案外簡単なことじゃないか?」

もっとも、彼には経験がない。

ネットではよくこう言われている——

「壊せないカップルなんてない。いるのは努力が足りない愛人(第三者)だけ」って。


青野千里は自分のボスの興奮した様子を見て、そっと半歩後ずさりし、おずおずと尋ねた。「ボス、何をするつもりですか?」

ボスが興奮している時は、いつもろくなことがない気がする。

しかも、今度は横取り?

誰を横取りするって?


青野は慎重に探った。「もしかして……宮崎様を?」

深山は横目で青野千里を睨んだ。「ダメなのか?」

できなくはないが……

ただ、宮崎さんが本当に気の毒だと思うだけだ。彼女は前世で一体どんな業を背負っているのやら…

一人目はすぐに発狂する星野侑二で。

今度はまた、うちの性格の悪いボスに目をつけられた。


深山は部下の目にある一縷の嫌悪を読み取り、不満げに言った。

「まさか俺は星野侑二よりも劣るって言いたいのか?」

青野はすぐに最も忠誠心のある態度を見せた。

「いやいや、ボス、これは横取りなんてものじゃありません。ボスこそ、宮崎様を泥沼から救い出す救世主です!間違いなく世界一の善人です!」

そして、魂の疑問をぶつけた。

「でも、ボスは恋愛のアプローチなどができますか?」


深山彰人――深山家の跡取り、「隠門」のボス、二十年以上彼女なしの生粋の独身……恋愛経験はゼロ、女性を口説く経験もない。

威勢よく「横取りだ!」と言っていた本人は、ふいに長い沈黙に落ちた。


―――


ラファエル医療チームは、さすが国際的にも有名なトップチームだ。

彼女たちの治療のもと、私の体のあらゆる数値がようやく安定した。


この時、星野は静かにベッドのそばに座り、片時も離れず私を見守っていた。

病室は、彼の全身から発せられる冷たい気配のせいで、まるで止水のような重苦しい空気が流れていた。


その時、ジェイムズが慌ただしく病室に飛び込んできた。

「ボス、昨夜私たちとオスクーロ会との銃撃戦の動画が、誰かにネットに流されました。既に動画の処理を手配しています……メディアには出ていませんが、まだ多くの人が裏で拡散しています。」


この件については、星野も予想していた。

百人規模の銃撃戦で、しかも死傷者も出た。いくら手を使って一時的に鎮圧しても、火種は絶対に消えない。

ネット社会の今、情報はどんどん広がるばかりだ。


星野は冷静かつ断固とした口調で「処理してくれる人がある」と答えた。

ジェイムズはほっと息をついた。

「ディヴィーナ」はマフィアとはいえ、ここ数年は上の指示に従い、足を洗う道を歩んでいる。

まだ完全に白になっていないのに、こんな大規模な銃撃戦の噂が流れれば、今までの努力が水の泡になる。

今後の処理を誰かがやってくれるなら、ジェイムズも慌てることはない。


ジェイムズはさらに少し悩みつつ、慎重にスマホを取り出した。

「ボス、この動画、たぶんご興味があると思いまして……」

彼はスマホを星野に差し出した。


星野が動画を再生し、画面の中には、顔いっぱいに悲しみと絶望を浮かべながらも、ドローンのカメラに向かって、懸命に美しい笑顔を作る私が映っていた。


「星野侑二、前にも言ったけど、あなたが何をしようと私は応援するよ!」

「あなたがエリクソンとの協力をどれほど重視しているか、私は知っている。」

「だから、私は責めない。あの協力のために、私をオスクーロ会に差し出したとしても!」


星野は、私がこれらの言葉を口にした瞬間――

感情の高ぶりで体が激しく震えた。


動画の中で、ソフィアは明らかに怒りと狂気に満ちていて、今にも殺しそうな勢いだった。

それなのに、死が目前に迫っても、私はなお彼のことを想っていた。

「責めない」だけでなく、

自分を犠牲にしてまで、彼とエリクソンの協力を守ろうとしていたのだ!


星野の心の防御線は、徐々に崩れていった……

彼はずっと、小林ひるみが現れてから私が変わったと思っていた。

もう、彼を黙々と支え続ける宮崎麻奈ではないと。

もう、彼に明るい笑顔を見せてくれる宮崎麻奈ではないと。


だが――この一瞬、

星野は気づいたのだ。

記憶の中で、彼を夢中にさせたあの少女は、ずっと彼のそばにいたのだと。

ただ、偏見のせいで、私が何をしても反射的に「悪女」のレッテルを貼っていただけだった。


動画はまだ終わっていない。

画面の中の私は、優しくお腹を撫で、目には深い愛情と未練が浮かび、カメラに向かって静かに涙を流した。


「ごめんね、まだ伝えてなかったけど、私はあなたの子どもを妊娠してるの……」


その瞬間――

星野は完全に崩れ落ちた!


すべてが自分の過ちなのに、私が死の間際にまで「ごめん」と謝っているなんて?!

彼は私が出所してからずっと、かつて自分を愛してくれたあの女はもう消えたと思っていた。

しかしこの動画は、まざまざと彼に突きつけた――

私の彼への愛は、消えていなかったのだ!


彼が小林ひるみのために復讐しようとして、私を傷つけ、心まで冷え切らせ、愛を口にすることすら怖がらせていたのだ。


星野は私の手を強く握りしめ、目は真っ赤に充血していた。

「俺が悪かった!本当に悪かった!!!」と、心から悔い、私の手を唇に引き寄せて苦しく嗚咽した。

「麻奈、今になってやっと分かったんだ……俺が愛しているのは、ずっとお前だけだ!」


彼は自分が小林ひるみを好きだと思っていた……

だが、あの時小林ひるみの死を知った時、自分はただ怒りしか感じなかった。

だが、本当に誰かを愛しているなら、失うことが何より怖いはずなのだ!!!

今の彼のように、私を失うことが怖くてたまらなかった。


星野の涙が一粒ずつ落ちて、私の指先を濡らし、嗚咽しながら、これまで直視しなかった本心を告白した。

「愛してる!俺がずっと愛していたのはお前だけだ!」


長い長い昏睡の後、私はようやくもがくように目を開けた。

朦朧とする意識の中で、自分が病室にいることに気づく。

じゃあ、私はまだ死んでいないの?


自分がまだ生きていることに驚きながら、耳元で「愛してる」と繰り返し告げる声が聞こえた。

誰が昏睡している私に告白しているのかと、好奇心で顔を向けてみた。


そして――星野侑二を見た!


今、彼は私の手を握り、泣きじゃくっている。

その瞬間、私は自分がすでに死んで、異世界に転移したような気がした。


絶対違う!

きっとまだ目が覚めていないのだ。幻覚だ、きっと。


私は急いで目を閉じて、一度リセットしようとした。目の前の荒唐無稽な光景から逃れるために。

だが、閉じる間もなく、私が目を覚ましたことに気づいた星野が、抑えきれない感情で身をかがめ、私に近づいた。

「目が覚めたんだ!」


そして――

溢れる想いを込めて私の額にキスをし、そっと言った。


「麻奈、愛してる!」

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