「どうやらあの洞窟が、話に聞いていた
家に帰って来て、お風呂に入って縁側で休んでいた。どうやら……じいちゃんはダンジョンのことを聞いていたらしい。
「知っていたの?」
俺は冷蔵庫に冷えてあったラムネを飲んでいた。瓶に入っていて中にあるビー玉が、振るとカランカラと音を立てた。
ダンジョンから出てくると、もう日は傾いて夕方になっていた。
「いや……。俺の父親から、どこかに洞窟があると聞いたことがあるだけで、ちゃんと説明はされなかった」
じいちゃんの父親……? ひいじいちゃんか……。
「でも洞窟の中にあった古い本、古文書に説明が書いてあったぞ」
「えっ? 本当?」
じいちゃんは少し考えて、縁側で俺の隣に座った。
「お前がここに来たのも、運命だったかもしれんな……」
そう言ってじいちゃんは、麦茶を飲みながら話し始めた。
「古文書に書いてあったのは、我が田所家が代々守ってきた
ふう……と、ため息をついてから続きを話してくれた。
「あの洞窟は……。今で言うと、異世界か。そことつながってしまっていて、魔物がこちらへ侵入してくるのを守っているそうだ。田所家のものは、異世界の者とつながりがあったようで能力を受け継いでると書いてあった」
「つまり、田所家は代々、その能力で異世界からの魔物の侵入を防ぐ役割をしていたようだ」
「えっ? 異世界? 魔物……?」
じいちゃんは麦茶の入ったコップを握りしめながら、庭を見た。俺はまるでファンタジーの世界の話のようですぐには受け入れられなかった。
だけど目の前で見たゴブリンや、じいちゃんの戦う姿を見たし、嘘や作りものじゃない。
「そして封印しなければいけない」
俺はゴクリと、ラムネを飲んだ。――炭酸が喉に染みた。
「コメにも書いてあったけど、封印ってあの割れた水晶のことかな? あの大きさの水晶は見たことあるけど、高かったような……」
また同じ水晶を用意しなければならないなら大変だ。
「いや。同じものじゃなくてもいいらしい。つまり、封印できるものなら何でもいい」
なるほど?
「……明日もワシは行くが、一真はどうする?」
じいちゃんは俺の顔を見て言った。強制ではない、洞窟探検。いや、ダンジョンと言うから地下があるはず。危険なことなのはわかっている。だけどじいちゃん一人で行かせるわけにはいかない。
「俺ももちろん行くよ! 動画を撮るには俺が必要だろう?」
怖いけれどじいちゃんに、二ッと笑ってみせた。
「そうか。じゃあ明日も一緒に行くか」
「うん!」
俺とじいちゃんは明日に備えて、早くご飯を食べて風呂に入って眠った。
◇◇◇◇
「じゃ、始めるね!」
「おお、いつでもいいぞ」
早朝、快晴。俺とじいちゃんはまた裏山の洞窟に来ていた。動画配信をするために、俺はじいちゃんの後について洞窟へ入った。
『今日は朝から洞窟探検します! また怖い魔物が出ると思うので、好きじゃない人は注意してくださいね!』
『【じいちゃん、代々守ってきた裏山を探検する! 2 】です!』
じいちゃんは昨日より、準備して色々道具を持ってきたらしい。手には刀、背中にはリュックサックを背負っている。
俺も念のため、食料や役に立ちそうなものをリュックサックの中へ入れてきた。
「今日は奥へ行く」
サングラスで顔を隠してじいちゃんは進んで行った。
『昨日の配信のじいちゃん!?』
『朝早くからすごくね?』
『気をつけてね~』
『もう配信している!』
『待ってました!』
『え? 洞窟探検?』
『面白そう』
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昨日見てくれた人や、たまたま見つけてくれた人がコメしてくれている!
『今日はさらに奥へ進んで行きます』
解説を入れながら、俺はじいちゃんとはぐれないように気をつけて配信を続けた。
昨日よりも奥へ進むと、緩やかな坂道を見つけた。
「やっぱり地下がある」
両方の壁は岩肌で坂道を降りていくと、入って来た時より広い道があった。
『未知のダンジョンじゃない?』
『大丈夫なの?』
『引き返した方がよくね?』
「進むぞ」
じいちゃんは、引き返すことを考えてないようだ。
『気をつけて――!』
『うわ! 進むの?』
『カッコイイじいちゃん!』
『えっと……。ダンジョン地下一階を、進みますね』
俺はダンジョン内を映した。入ってすぐの所は二メートルくらいの高さと幅だったのに、この地下一階はもっと広くて高さ五メートル、幅も五メートルくらいだ。
『すげ。本物のダンジョンだ』
『まさか昨日のようなゴブリン、出ないよな……』
『変なこと言うなよ』
『やめれ』
視聴者さんが徐々に増えてきて、コメも追いつけないくらい流れている。
「気をつけろ!」
「えっ!?」
じいちゃんが斜めに刀を振った。
ザシュッ!
違う! 何かを切った! 俺は何が起こったか把握できなくて混乱した。
『スライムだ!』
『やばい!』
『逃げて!』
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すごい勢いでコメが!
じいちゃんは、天井から襲ってきたサッカーボールくらいの大きさのスライムを次々と切っていった。これがゲームとかで有名なスライム!
ドロリ……としていて、某有名ゲームと違って可愛くないぞ!
「お、俺も。何かやらなきゃ!」
天井から次々と襲って来るスライム。
『【孫の手】さん危ない!』
視聴者さんが、配信するときの俺の
スライムが上から俺を襲ってきた!