『わあ!』
俺はとっさに手を上げて、自分の頭と顔を庇った。
ボッ! バシュッ!
「え?」
ボトボト……。黒焦げになったスライムが地面に落ちた。えっ? えっ? 何が起きた?
『これは……』
『今、【孫の手】さんから、炎がでたよ……』
『どういうこと?』
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「魔法じゃな。ご先祖様に、魔法の使えた者がいたそうだから、お前が使えても不思議じゃない」
じいちゃんは俺に近寄ってきて教えてくれた。……初耳なんですけど!?
『ええ?』
『魔法が使える家系って、ファンタジーじゃん!?』
『スゴ!』
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視聴者の皆さんのコメが凄い多い。
「一体一体、
じいちゃんは急に年寄りのような事を、チラッと俺を見ながら言った。でも俺、魔法が使えるのなら使ってみたい。
まだまだスライムは無数に地面にもぞもぞと動いているし、天井にもたくさん張り付いている。
「わかった! やってみる!」
俺はスライムがたくさんいる地面へ、手のひらを向けた。
『もしかしたら、俺は魔法を使えるかもしれないのでやってみます!』
俺は動画を観てくれている視聴者さんに話しかけた。
『がんばれ――』
『スライム、倒せ!』
『できんの?』
『マジ?』
これで魔法が出なかったら、それはそれで笑いがとれるかな……。
俺はゴクリと唾をのんで大きな声で叫んだ。
『ほ、炎の魔法!』
「……」
あれ? でないかな? そう思っていたら……。
バシュン――!
大きな炎の塊が、たくさんのスライムめがけて飛んでいった!
ドカン!
「うわっ!」
炎の魔法はスライムたちに直撃した。天井に張り付いていたスライムも炎の魔法に焼かれて消し炭になった。
威力が大きかったのか、地面が
「けほ! けほ! けほ! もう少し加減してくれ……、孫よ」
俺達の周辺は魔法の影響で砂埃が立ち込めた。
「ごめん! じいちゃん!」
加減をしないといけなかった!
『すげ――――!』
『すげ――!』
『カッコイイ!』
『すげ!』
『すごい――!』
『俺、初めて魔法を使う人を観た』
『炎タイプか?』
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視聴者さんは盛り上がっていた。確かに本物の魔法を見るのは、この世界で俺を含めて初めてだろう。
『びっくりした! と、とにかく。魔法を使えたみたいなので、このまま進みます!』
俺は自分で驚いたけど、配信中なので変な使命感があって視聴者さんに話しかけた。
『おお! 頑張れ――』
『どきどき』
『モンスター、いるのかな』
『ヤバいね』
『気をつけろ』
俺とじいちゃんは服についた砂埃を払って、先へ進んだ。
『ダンジョンの中は入り口から変わらず、ゴツゴツした岩肌の壁が続いていてヒカリゴケ? のおかげで明るくて、ランプやたいまつなど必要なく進んで行けそうです』
俺はじいちゃんと歩きながら、実況していった。
『昨日見つけた古文書には、俺のご先祖様が【代々このダンジョンを魔物からの侵入を守っていた】と書いてあったらしいんだ』
『えっ? ご先祖様が?』
『マジ?』
『ホンマ?』
『嘘っぽい……』
『嘘松』
『いや、ゴブリンやスライム見ただろ? CGやフェイク動画に見えなかった』
『マジか……』
:
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俺は手が疲れたので、画面を下へ向けた。
『嘘じゃないです。信じられないのは分かります。でもたぶん……。これから俺とじいちゃんは、魔物を封印しなくちゃならないのでいつまで動画配信できるか、わからないです』
ドンッ、ドガン! 地面が揺れた。また魔物の気配がしてきた。
『動画配信できるところまで、やっていきたいです。正直、怖いです。できたら応援してくれませんか……?』
俺は少し手が震えていた。じいちゃんは心配そうに俺を見ている。
『頑張れ――!』
『応援するぞ!』
『頑張れ!』
『頑張れ――!!』
『応援!』
:
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読めないほどコメントがたくさんきていた。
「じいちゃん! 皆、応援してくれてる!!」
「そうみたいじゃな!」
俺とじいちゃんはお互いを見て頷いた。
『魔物がいます。怖い人は見ないでくださいね』
一応注意をしてから俺は地面に向けていた画面を、まっ直ぐ・正面へ向けた。
俺とじいちゃんの目の前には、大きな壁みたいな
『あれ、まさか……』
『ウソだろ!?』
『うそでしょ!?』
『あの巨人は……』
『トロル!?』
『トロルじゃないか!?』
『マジヤバ! 逃げろ!』
『ヤバい!』
『逃げろ!』
:
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流れていくたくさんの『逃げろ!』のコメ。俺もできれば逃げたかった。でも……。
『孫の手さん! 魔法が使えるなら、じいちゃんに補助魔法とかつけられないか!?』
『そうだ! 肉体強化魔法とか、防護魔法とか!』
『じいちゃんを強くしろ!』
『じいちゃん! 頑張れ』
『孫の手さんは、じいちゃんを補助魔法で強くしてから、後ろから魔法で攻撃しろ!』
『わかりました! やってみます!』
俺は視聴者さん達の助言を見て、やってみることにした。
「じいちゃん! 俺が補助魔法つけるから頑張って!」
「おお! まかせろ!」
俺が肉体強化魔法、防護壁魔法、武器防具の強化魔法を唱えると、じいちゃんは俺達の何倍もある大きな
その後ろ姿は、か弱い老人の姿ではなく、大きな魔物と対峙する
視聴者さんの応援が力になった。