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第2話 女神の贈り物

その夜、翔太は妙な夢を見た


真っ白な空間に、光り輝く美しい女性が立っていた、長い金髪が風もないのに揺れて、神々しいオーラを放っている


「あなたに『異性にモテるギフト』を与えましょう」


「は?いらないです、そんなの」


翔太は慌てて手を振った


「遠慮はいりません!!!これはあなたの運命です!!!!」


「だから、いらないって言ってるでしょ!!!!!」


女神は翔太の抗議を無視して、手をかざした


眩しい光が翔太を包み込む


「待てよ・・・」


翔太は目を覚ました、汗びっしょりだった


「変な夢だな・・・」


時計を見ると午前6時・・・いつもより早く目が覚めた


でも、二度寝する気にもなれず、シャワーを浴びて学校に向かった


学校に着いた瞬間、翔太は違和感を覚えた


通りすがる女子たちの視線が、明らかに翔太に向けられている


いつもなら素通りされるのに、今日は立ち止まって翔太を見つめる子までいる


「気のせいだよな・・・」


そう自分に言い聞かせて教室に入った瞬間、翔太は愕然とした


クラスの女子たち全員が、一斉に翔太を見つめていたのだ

その目は明らかに恋する乙女のそれで、頬を赤らめている子もいる


「おはよう、翔太くん♪」


普段話したこともない女子が、甘い声で翔太に挨拶してきた


「あ、おはよう・・・」


返事をした途端、教室がざわめいた


「翔太くんの声、すてき・・・」

「今日、髪型変えた?」

「一緒にお弁当食べない?」


異常だった・・・明らかに異常だった


翔太は血の気が引くのを感じた


あの夢は本当だったのか?女神の『異性にモテるギフト』とやらが、本当に翔太にかけられたのか?


「ちょっと、トイレ・・・」


翔太は慌てて教室を出ようとした


「待って、翔太くん!」


クラスの女子たちが一斉に立ち上がった、椅子が倒れる音が響く


「どこ行くの?」

「一緒に行く!」

「私も!」


恐怖が翔太を支配した!!!これは尋常じゃない!!!!翔太は走り出した!!!!!


「翔太く~~ん!」


黄色い声援が翔太の後ろから響く


振り返ると、クラスの女子たちが翔太を追いかけてきていた


それだけじゃない!!!廊下ですれ違った他のクラスの女子たちも、なぜか翔太の後を追いかけ始めた


「何で翔太が追いかけられなきゃいけないんだよ!」


翔太は必死に走った


美術室、そこなら安全かもしれない


階段を駆け上がり、廊下を全力疾走する


後ろからは女子たちの足音と声が響く


「翔太くん、待って!」

「どうして逃げるの?」

「私たちと話しましょう!」


美術室の扉が見えた


翔太は最後の力を振り絞って扉に手をかけ、中に飛び込んだ


「はあ・・・はあ・・・」


息を切らしながら、翔太は扉に鍵をかけた


外からは女子たちの声が聞こえる


「翔太くん、開けて!」

「お話ししたいだけなの!」


ドンドンと扉を叩く音、翔太は恐怖で震えていた


「先輩・・・?」


振り返ると、美術室の奥から声がした


1年生の後輩、山田ひなたが画架の前に座っていた


肩まである黒髪に、大きな瞳


美術部の癒し系として部内だけでなく学年でも人気がある子だ


「ひなた・・・助けて」


翔太は情けない声を出した


ひなたは状況を理解すると、すぐに行動に移した


教室の電気を消し、カーテンを閉めて、翔太を画架の陰に隠した


「静かにしていてください」


外からの声は次第に遠ざかっていく・・・どうやら諦めて去ったようだ


「ありがとう、ひなた・・・君がいてくれて本当に良かった」


翔太は心の底から感謝した


ひなたは頬を赤らめながら、小さく微笑んだ


「先輩のお願いなら、何でも聞きますから・・・」

第3話 隠された想い


ひなたは美術部に入部してから、ずっと翔太に憧れを抱いていたようだ


真摯に絵と向き合う翔太の姿、集中している時の横顔、作品について語る時の熱い眼差し


すべてが彼女の心を捉えて離さなかった


何度か告白を考えたこともある・・・でも勇気が出ない


翔太が他の女子に興味を示さないのを見て、諦めかけたこともあった


それでも彼女は翔太のために何かしたいと思い続けていた


美術室の掃除を率先してやったり、画材を整理したり、翔太の作品を褒めたり


でも翔太は気づかない・・・ひなたの想いに全く気づかなかったのだ・・・


「先輩」


ひなたは意を決して口を開いた


「今日、何があったんですか?」


翔太は迷った・・・本当のことを話すべきか


でも『異性にモテるギフト』なんて話したら、頭がおかしいと思われるだろう


「よく分からないんだ、急に女子たちが俺に・・・」


「先輩が急にモテるようになったってことですか?」


ひなたの声には、わずかに動揺が含まれていた


「そう見えるかもしれないけど、俺は何もしてないんだ・・・むしろ迷惑してる」


その言葉を聞いて、ひなたは少しほっとした


でも同時に、新たな不安も生まれた


このままでは他の女子たちに翔太を取られてしまうかもしれない


「先輩」


「何?」


「私・・・私も先輩のことが・・・」


その時、美術室の扉がガラガラと開いた


「翔太!」


美雪が立っていた、その顔は普段の穏やかな表情ではなく、怒りと心配が入り混じったものだった


「何やってるのよ、こんなところで。学校中大騒ぎになってるじゃない!」


翔太は立ち上がった


「美雪・・・」


「女子たちが翔太を探し回ってるよ、何をしたの?」


美雪の目は鋭かった


でも、その中に不安も見え隠れしていた


ひなたは二人のやり取りを見つめながら、胸の奥で何かが締め付けられるのを感じていた


翔太と美雪の間には、特別な何かがある


それは誰の目にも明らかだった


運命の歯車が回り始めた・・・


翔太の平凡な日常は、もう二度と戻ってこないだろうか?


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