その日の帰り道、翔太は重い足取りで家に向かっていた
三人からの告白が頭の中でぐるぐる回る
公園の辺りまで来ると
「翔太、お疲れ様」
美雪が翔太を迎えてくれた
「お疲れ様」
「どうしたの?元気ないじゃない」
「いや、ちょっと疲れて」
「そう?今日は早く休んだ方がいいわね」
美雪はいつものように翔太を気遣ってくれる
その優しさが、今はとても心に沁みた・・・
「そういえば翔太・・・」
「何?」
「私、告白されちゃった・・・」
翔太の心臓が止まりそうになった
「え?」
「学年で一番成績優秀で、スポーツも万能のイケメン先輩よ・・・皆の憧れの的の人」
美雪は少し照れたように笑った
「それで?」
翔太の声は震えていた
「まだ返事はしてないの、どうしようかな・・・」
美雪の言葉が、翔太の胸に刺さった
ひなた、レナ、雅、三人からの告白で悩んでいたのに、美雪が他の男と・・・
翔太は初めて気づいた・・・自分の本当の気持ちに・・・
美雪が他の男に取られるかもしれない
その想像だけで、翔太の胸は締め付けられた
もう迷っている時間はない
「美雪」
「何?」
「真剣な話があるんだ。聞いてくれる?」
翔太の眼差しの真剣さに、美雪も表情を引き締めた
「うん、聞くよ」
翔太たちは公園のベンチに座った、夕日が二人を優しく照らしている
「最初に言っておくけど、これから話すことは信じられないかもしれない」
「大丈夫。翔太の話なら、何でも聞く」
翔太は深呼吸した
「翔太に急に『モテ期』が来た理由・・・実は、夢に女神様が現れて、無理矢理『異性にモテるギフト』っていうのを与えられたんだ」
「え?」
美雪は目を丸くした
「馬鹿みたいな話だろ?でも、本当なんだ。あの日から、急に女子たちが俺に群がるようになった」
美雪は黙って聞いていた
「そして、ひなた、レナ、雅さんから告白を受けた」
「三人も・・・」
「でも、その三人と一緒にいる度に、翔太の頭に浮かぶのは美雪のことだった」
翔太は美雪を見つめた
「幼い頃から、美雪はいつも翔太のそばにいてくれた・・・母さんが亡くなった時も、俺が落ち込んでいる時も、いつも支えてくれた」
美雪の目に涙が浮かんだ
「朝ごはんを作ってくれて、掃除を手伝ってくれて、宿題を一緒にやってくれて・・・まるで家族のように」
「翔太・・・」
「『異性にモテるギフト』のおかげで、俺は気づいたんだ・・・美雪のことが好きだったって・・・大事だったって」
翔太は立ち上がって、美雪の前に立った・・・
「美雪、俺と付き合ってくれ」
美雪は涙を拭いながら、翔太を見上げた
「私も・・・話したいことがあるの」
「何?」
「私、翔太のことを弟のようにしか見てなかったの・・・でも・・・」
美雪は言葉を選んでいた
「翔太の『モテ期』が始まって、他の女の子たちが翔太に群がるのを見て・・・不安と嫉妬で揺れ動いてた」
「美雪・・・」
「イケメン先輩から告白された時、最初に頭に浮かんだのは翔太の顔だった」
美雪は頬に涙を浮かべながら微笑んだ
「その時に気づいたの・・・私も翔太のことが好きだったって」
「本当に?」
「でも、翔太に迷惑をかけないか心配で・・・素直になれなかった」
美雪は立ち上がって、翔太の手を取った
「今、翔太に告白されて・・・とても嬉しい」
「美雪・・・」
「私も翔太が好き!!!付き合ってください」
翔太たちは抱き合った。長い間探していた答えが、ここにあった
・・・・・
翌日から、翔太は三人に会いに行った
まずはひなた・・・美術室で一人絵を描いている彼女に声をかけた
「ひなた、話があるんだ」
「先輩・・・返事ですね」
ひなたは筆を置いた
「ごめん、俺、幼馴染の美雪と付き合うことになったんだ」
ひなたの顔が曇った
「そう・・・ですか」
「君の気持ちは本当に嬉しかった・・・でも、俺の心は美雪にあったんだ」
ひなたは涙を堪えながら微笑んだ
「先輩が幸せなら、それでいいです・・・美雪先輩を大切にしてください」
次にレナ・・・あの山頂で待っていてくれた
「翔太、返事を聞かせて」
「レナ、ごめん・・・翔太には幼馴染がいるんだ」
レナは空を見上げた
「そっか・・・でも、翔太らしいね」
「え?」
「翔太は、いつも大切な人を守ろうとする・・・それが翔太の魅力よ」
レナは寂しそうに笑った
「幸せになってね」
最後に雅・・・生徒会室で待っていてくれた
「田中くん、お返事を」
「雅さん、申し訳ありません・・・俺には幼馴染の美雪がいます」
雅は上品に微笑んだ
「そうですね・・・あなたらしい選択です」
「本当にすみません」
「いえ、あなたと話せて楽しかったです・・・佐藤さんを大切になさってください」
三人とも、翔太たちの行く末を祝福してくれたのだった