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婚約したら幼馴染から絶縁状が届きました。
婚約したら幼馴染から絶縁状が届きました。
黒蜜きな粉
異世界恋愛悪役令嬢
2025年06月17日
公開日
1万字
完結済
婚約が決まった翌日、登校してくると机の上に一通の手紙が置いてあった。 差出人は幼馴染。 手紙には絶縁状と書かれている。 手紙の内容は、婚約することを発表するまで自分に黙っていたから傷ついたというもの。 いや、幼馴染だからってなんでもかんでも報告しませんよ。 そもそも幼馴染は親友って、そんなことはないと思うのだけど? そのうち機嫌を直すだろうと思っていたら、嫌がらせがはじまってしまった。 しかも、婚約者や周囲の友人たちまで巻き込むから大変。 どうやら私の評判を落として婚約を破談にさせたいらしい。 ※『プチコン07・悪役令嬢』参加中です。  よろしくお願いいたします!

第1話

「……なにかしら、これ?」


 いつものようにエミリーが学園に登校してくると、机の上に自分宛の手紙が置かれていた。


「差出人は、アンナから?」


 封筒を手に取り裏返してみると、そこには幼馴染の名前が書かれていた。


「わざわざ手紙なんて……。同じクラスなのだから面と向かって話をすればいいのに」


 エミリーが首を傾げながら手紙を見つめていると、教室の入り口からアンナが姿を現した。


「おはよう。ちょうど良かったわ」


 これはなにかしら、とエミリーはアンナに声をかける。

 しかし、彼女はふんと鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまった。

 アンナはエミリーと言葉を交わすことは、どうしても嫌なようだ。エミリーは仕方なく手紙を開封することにした。


「絶縁状って、これはどういうことなのアンナ?」


 手紙を開いて最初に目に入った言葉を見て、エミリーはつい大きな声が出てしまった。

 すると、教室にいる生徒たちが一斉にアンナへと視線を向ける。

 大勢に見つめられた彼女は、顔を真っ赤にしてエミリーを睨みつけてきた。


「あらあら、ちょっと待ってちょうだいな」


 視線に耐えられなくなったのか、アンナは教室を飛び出して行ってしまった。

 エミリーはアンナの背中に声をかけるが、あっという間にいなくなってしまう。


「えーっとどれどれ。アンナ・ニルセンは今後いっさいエミリー・ゲレンダールとの関わりを持つことをやめることにいたしますって……、ナニコレ。すごく馬鹿らしいわね」


 突然の出来事に呆然としているエミリーから、友人が強引に手紙を奪い取る。友人はそのまま手紙を読み上げはじめてしまった。

 教室中に響く大きな声ではっきりと話すので、エミリーは慌てて唇に人差し指を当てるが、友人は止まらない。


「絶縁の理由は、ルカス・イングスタット様との婚約を私に隠していたこと、ですって」


 そこまで手紙を読んだ友人が、たまらず笑いだした。


「あははははは! 婚約を隠していたって、そんなの当たり前のことじゃない」


「ちょっと、そんな大きな声で話さないでってば。みんなに聞こえちゃうわ」


 エミリーは友人を落ち着かせようと声をかける。

 しかし、周囲でやり取りを見ていた級友たちが、友人の言葉に同意するように頷いているのを見て諦めた。


「お互いの親が決めた婚約でしょ。家同士が内々に進めていたことを、娘がぺらぺらと周りに話すわけがないっての」


 エミリーは笑い転げる友人から、黙って手紙を奪い返す。

 友人はやれやれと肩をすくめながら話を続けた。


「とはいえさ。イングスタット家とゲレンダール家の婚約の話は発表前から噂になっていたわよ。アンナはなにも知らなかったのかしら?」


「あまり人の話を聞かない子だから……ね?」


「……ああ、知らなかったわけね」


 エミリーは友人と深く溜め息をついた。



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