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第4話

 大きなシャンデリアがキラキラとまばゆい光を放ち、十人がけの大きなテーブルには真っ白のクロスが掛けられ、その上にはお寿司、お刺身のカルパッチョ、アボガトとトマトとサーモンのマリネ、カマンベールチーズの温野菜サラダ、トマトと生ハムのブルケッタ、ローストビーフなどが所狭しと並ぶ。


 駒塚と家政婦二人が次から次に料理を運んでくる。料理人の他に、あたしのうちには他に庭師もいて、庭は年から年中、四季の花が咲き誇り、奇麗に手入れがなされている。


 クリスマスの時期には、庭に大きなツリーを出して盛大に飾り付けをするから、イルミネーションを遠くからわざわざ見にくるひとも多い。


 うちは少しだけ、有名な家なんだ……。家族が全員変わってるねって言ってくるひともいるけど、それは多分、事実……、だから気にしない。あたしも変わってる自覚あるし。


 三百坪はあるだろう、豪邸に今は父と母、それに五つ上の兄が住んでいる。白い要塞みたいな家に住んでいるあたしたち。


 あたしには双子の姉がいるんだけど、今は一緒には暮らしてない。大学の近くのマンションで一人暮らしをしている。

 あたしの双子の姉の立花たちばな菜奈ななちゃんは、東大の医学部に入っていて、毎日勉強が忙しいらしい。


 そう、菜奈ちゃんは雪哉くんと同じ大学で、同じ学部なんだ……。


 菜奈ちゃんは才女で、お料理もできるし、あたしと違って、物事を決めるのも早い。そう、決断力があるんだ。

 顔も少ししか似てない、菜奈ちゃんは母似で、すごく美人だ。


 そして菜奈ちゃんは威張っていて、ドSだ。そんな菜奈ちゃんに、なぜか雪哉くんはすごく優しいの……。


「わぁ! すっごいごちそうだね! お父さんもお兄ちゃんも早く帰って来ないかなぁ!」

 あたしははしゃぐ、この家ではなにかにつけてパーティが開催される。菜奈ちゃんはそれがイヤで、この家を出ていったらしい。


「ほんとね! ほんとね! お母さん、雪哉くんたちが来るの楽しみよ~!」

 母がはしゃぐ、はしゃぎ方はあたしに似てると思う。


「ねぇ、そういえば、なんで雪哉くんはこの家で暮らすの?」

 一番肝心なことを聞き忘れていた。


「あら、言ってなかったわね。雪哉くんのお家、もう築百年でしょう? 老朽化で耐震に引っかかって、もう建て替えしなきゃいけないんだって。その建て替えの間だけ、うちに住むのよ。ほら、うちからのほうがあそこの方々も、そんなに生活が変わらないでしょう。こういう時はお互い助け合わないとね」

 母が忘れてたと言わんばかりに手を合わせながら、話し始めた。仕草が上品でお嬢様なのが母だ。


「そうなんだ。最近、すずさん、足腰悪くなって手押し車なしじゃ、キツそうだもんね。外出も難しそうで、聖哉せいやさんがよく車出して、連れてってる。先週もそうだったよ」

 あたしは雪哉くんの祖母の鈴さんを思い出していた。最近かなり腰が曲がってる。歩くのも大変そう。

 たしか今年で八十歳だ。すごく穏やかで可愛いおばぁちゃん。


 ちなみに聖哉さんは雪哉くんの三つ上のお兄ちゃん、市役所で働いてる。


「……星奈ちゃん、お隣さんのこと、ほんとよく見てるわねぇ」

 母が心底感心した声を出す。


 そりゃ、そうだよ。雪哉くんも前はよく一緒に買い物に行ってたんだから。最近めっきり見ないけど、勉強が忙しいのかなぁ……。


 そう、日曜日、あたしは時々お隣の家を眺めてる。一応言っておくけど、よ、予定がない時だけだよ。


 友達からは『彼氏作りなよ。やばいって、アンタ、ストーカーだよ』って言われ続けて、もう十五年。


 どうして? すっごい好きな人が隣に住んでたら、みんなそういう行動とらない? 言い切れる?


 あたしは言い切れない。好きなひとはいつでも見たいし、見れたら、その日ずっとハッピーだもん!


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