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第6話

 みんなが顔を見合わせて、水を打ったように静まり返った。


 今の音はなにかが崩れた音に違いない。


「けっこう揺れたものね」

「ああ、そうだな」


 父と母が互いの青い顔を見た。


 兄が急いでニュースをつけた。

「……なになに、震源地は◯◯で、震度3。この地震による津波の心配はありません。なんか最近もう地震が多すぎて、慣れた感があるよな。ダメだよな。危機感が足りないぜ」


「あ、あのあたし、お隣の雪哉くんのおうち、見てきてもいい⁉︎」

 テーブルの下に隠れていたあたしは、立ち上がり、みんなの顔を見る。


「お嬢様! 今の音を聞いたでしょう。なにかが崩れた音です。もうしばらく、完全に落ち着くまでお待ちください。危ないです」

 駒塚に引き止められる。


「そ、そんなこと言ってたら、助かる命も助からなくなるわ!」

「じゃあ、おれも行くわ」

 兄が立ち上がった。


「じゃあ、わしも」

「なら、わたくしも行くわ。少し怖いけど、お隣さん、無事だといいわね」

「ちょっと、旦那様に奥様まで、もう! ならばわたくしめも行きます」

 駒塚が慌てて、外へ出る準備を始めた。


 こうして結局五人で、お隣の様子を見に行った。


 うちは高い壁に囲まれているので、一度庭を通り抜け、表玄関まで行かなければ、お隣の全容がわからない。


 あたしの心臓がバクバクとイヤな音を立てていた。


 ……もし、もしも雪哉くんになにかあったら、死んだ方がマシよ!! 


 庭を通り抜け、門を出たあたしたちが見た光景は悲惨なものだった。


 お隣はものの見事に全壊していた。


 電気もついていない……。ひとの気配もなにもない……。


 築百年の小さな二階建ての純和風な建物はその面影すら、残していなかった。ただの瓦礫の山になっていた。


「おいおい。嘘だろ? さっきの地震でこれか? ま、まさか、雪哉くんたち中にいるのかよ。こりゃヤバいぞ」

 兄の額から、イヤな汗が流れ落ちている。


 さっきの崩壊音を聞いて、近所のひとたちがどんどん集まりだしていた。


「こんな壊れ方したんじゃ、助からんよ」

「誰か消防と救急車、はよ呼んだれや」

「もちっと早よ、こん家をどげんかするべきじゃったな」

 近所のひとの話声が、イヤでも耳に入ってくる。


 ……え、ウソ……。雪哉くん、星哉さん、鈴おばぁちゃ〜ん!!!! いやぁぁぁぁぁぁぁ!!





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