みんなが顔を見合わせて、水を打ったように静まり返った。
今の音はなにかが崩れた音に違いない。
「けっこう揺れたものね」
「ああ、そうだな」
父と母が互いの青い顔を見た。
兄が急いでニュースをつけた。
「……なになに、震源地は◯◯で、震度3。この地震による津波の心配はありません。なんか最近もう地震が多すぎて、慣れた感があるよな。ダメだよな。危機感が足りないぜ」
「あ、あのあたし、お隣の雪哉くんのおうち、見てきてもいい⁉︎」
テーブルの下に隠れていたあたしは、立ち上がり、みんなの顔を見る。
「お嬢様! 今の音を聞いたでしょう。なにかが崩れた音です。もうしばらく、完全に落ち着くまでお待ちください。危ないです」
駒塚に引き止められる。
「そ、そんなこと言ってたら、助かる命も助からなくなるわ!」
「じゃあ、おれも行くわ」
兄が立ち上がった。
「じゃあ、わしも」
「なら、わたくしも行くわ。少し怖いけど、お隣さん、無事だといいわね」
「ちょっと、旦那様に奥様まで、もう! ならばわたくしめも行きます」
駒塚が慌てて、外へ出る準備を始めた。
こうして結局五人で、お隣の様子を見に行った。
うちは高い壁に囲まれているので、一度庭を通り抜け、表玄関まで行かなければ、お隣の全容がわからない。
あたしの心臓がバクバクとイヤな音を立てていた。
……もし、もしも雪哉くんになにかあったら、死んだ方がマシよ!!
庭を通り抜け、門を出たあたしたちが見た光景は悲惨なものだった。
お隣はものの見事に全壊していた。
電気もついていない……。ひとの気配もなにもない……。
築百年の小さな二階建ての純和風な建物はその面影すら、残していなかった。ただの瓦礫の山になっていた。
「おいおい。嘘だろ? さっきの地震でこれか? ま、まさか、雪哉くんたち中にいるのかよ。こりゃヤバいぞ」
兄の額から、イヤな汗が流れ落ちている。
さっきの崩壊音を聞いて、近所のひとたちがどんどん集まりだしていた。
「こんな壊れ方したんじゃ、助からんよ」
「誰か消防と救急車、はよ呼んだれや」
「もちっと早よ、こん家をどげんかするべきじゃったな」
近所のひとの話声が、イヤでも耳に入ってくる。
……え、ウソ……。雪哉くん、星哉さん、鈴おばぁちゃ〜ん!!!! いやぁぁぁぁぁぁぁ!!