あたしは一人部屋に戻って、ベッドに寝転んだ。
……仲良かったな、あの二人。
そう思うと、大きなため息が出た。
雪哉くんと暮らせるのは嬉しいけど、複雑。
菜奈ちゃんと雪哉くん、やっぱり両思いなんじゃ……。
二人がいちゃつくの見たくないなぁ……。
その時、ドアをノックされた。
「あ、はぁい」
身体を起こして、あたしは返事をした。
「おい、風呂だってよ」
雪哉くんの声がした。
「!!」
あたしはベッドから飛び降り、急いでドアを開ける。
なんと雪哉くんが、あたしの隣の部屋に入ろうとしている。
長年、物置部屋になっていたところだ。母の仕業に違いない。
あたしと雪哉くんは部屋が隣。ここでもお隣さん! ヤッタァ!
「なんだよ?」
あたしの喜ぶ顔を見て、雪哉くんが眉をひそめて不機嫌な顔をした。
「あのさぁ自分の部屋、もしかしてあたしの隣の部屋?」
あたしはわかってて聞いている。
「……そうみたいだな」
雪哉くんが濡れた髪をタオルで拭きながら、たいして興味もない答え方をする。パジャマは数字にうるさい兄のものらしく、白のシルクのパジャマを着ている。
……お風呂上がりの雪哉くん。超、色っぽい……。そのパジャマもとっても似合ってる。
「あ! そうだ! あたしにもなにか手伝えることがあったら言ってよ!」
梅乃宮家の一大事は、あたしの一大事でもあるからね。
「おまえに? ……別にないな」
「えーっ! 菜奈ちゃんの時はあんなに嬉しそうだったじゃん」
あたしは下唇を噛んだ。なんだか、悲しいし、悔しい。
「……おまえは仕事があるだろ」
「え? でも菜奈ちゃんだって、大学があるよ!」
簡単に引き下がらないよ。あたしだって、役に立つとこ、しっかり雪哉くんや、鈴さん、聖哉さんに認めてもらうんだから。
「……ハァ。じゃあ、おまえはあんまりおれを見るな」
雪哉くんが大きなため息を吐き、おでこに手を当てながら口にした。
……なに、それ?
「あ、あたしに見られるの、イヤってこと?」
あたしの足が震える。き、拒絶されてる?
「……イヤだな。普通はイヤだろ? おまえの部屋の窓から、何時間も自分の部屋をのぞかれたり、外出の際、視線を感じたら、いつもおまえがみてる、そんな生活はやだね」
「き、気づいてたの」
「……あのなぁ、何時間も見られてたら、イヤでも気づくぞ」
呆れたように息を吐き出す雪哉くん。
「ご、ごめん。あたし、そんなつもりじゃ……」
うぅ。そんなに嫌われてたなんて……。な、泣きそう。
「おれのこと、好きじゃない女には見られたくはないね。おまえ、おれのこと好きじゃないって言ってたよな?」
雪哉くんの言葉の温度が冷たい。
「そ、それは……」
あんなところで好きなんて言えるわけないじゃん! 女将さんもいたし。
「とにかく、そういう行為、もうやめてくれないか」
雪哉くんが長いまつ毛を伏せて言う。
「無理! あたし、ずっと雪哉くんのこと好きなんだもん!!」
ぎゃ~っ! パニックになって、