それにしても、あたしの部屋の右隣が雪哉くんで、左隣が聖哉さん⁉︎
ちょっとお母さん、これなんか意図を感じるんですけど……。
あ〜あ、今日見ようと思ってた恋愛ドラマ、もう見る気すらしないや。
このまんまではあたし、一生恋なんて、彼氏なんてできないんじゃないかな……。
好きなひとに興味ないって言われたのに、好きなひととひとつ屋根の下って……、神様、少しイジワルすぎない?
そんなことを考えていたら、布団も掛けずに眠ってしまったらしく、ふと目が覚めた。
電気も付けっぱなしだった。時計の針は真夜中の二時を指している。
あ~あ、変な時間に起きちゃった。しかたがないから、ホットミルクでも飲もうかな……。
あたしはスリッパを履いて廊下に出た。
左の方が階段で聖哉さんの部屋の前を通って、下に降りるんだけど、あたしは右の雪哉くんの部屋でなにか声を聞いた。
微かな、女のひとの声……。
え……? こんな時間に? テレビの音?
あたしは雪哉くんの部屋の前に立って耳を澄ます。
あぁ、こういうのをやめろって、さっき言われたよね。でももういいや。彼、あたしにはどうせ興味ないもん。
……でもまだ起きてるんだ。そりぁ、そうよね。今日あんなことがあって眠れるわけがないよね……。
あたしで良かったら、話相手になれないかな……? そうだ! ホットミルク、雪哉くんも飲まないかな?
「あ、あの……」
あたしはノックもせずにそっと、雪哉くんの部屋を開けた。
あたしの目に飛び込んできた光景が、理解できなかった。
たしかに雪哉くんは暗闇の中で起きていたんだ。
雪哉くんが見ていたものはたしかにテレビだったんだけど、そ、それはたぶん父が、うちの父が隠していたアダルトビデオで……。
それを見ていた雪哉くんを、あたしは見てしまったんだ……。
「……おまえ、なにしてんの。ノックぐらいしろよ」
隠そうともせず、慌てることもなく、いつもの冷静な雪哉くんがテレビの前のソファに座っていた。
し、信じられない、信じられないよ……!! 自分の家が壊れた日にこういうことしてんの?
やっぱ、雪哉くんも普通の男の子だったんだ。いや、違う、普通じゃない、こんな日にこんなことはしない。
どちらにしてもショック……。
「あ、ご、ごめんなさい」
あたしは慌てて、自分の部屋に戻った。年頃の男の子の恐ろしさを知った。
こんな日にあんなこと、異常な性欲だ。
二十一歳。キスの経験もないあたしにとって、それは衝撃だった。
……ん? でも待って。彼、ビデオを見ていただけで、他はなにもしていなかったんじゃ……。
普通はアレがああなってて、こうしてるって聞くけど、なんもしてなかった!!!
ただ本当に見てただけじゃなかった⁉︎ もしかして今からするとこだった⁉︎
あたしが邪魔した⁉︎
その時、小さなノック音とともに、ドアに隙間が開いて雪哉くんの顔だけが部屋に入ってきた。
ヒィ〜っ!
「おまえに話がある。すぐに来い」
なにか覚悟を決めた
あたしもそれに応えなきゃ、女が