「え? い、言ったらコ◯ス⁉︎ え、やだ、聞かなきゃよかった。でもおかしくない? 雪哉くん、普通に彼女いなかった?」
彼は見かけるたびに、違う女のコを連れていた。しかもスレンダーから、ぽっちゃり。美人から、そうでもない子まで(失礼)
……え? たしかにいたよね。いろんな種類の子が(失礼)
「いたよ、色々試したよ」
「は? はぁ? 色々試したぁ? 彼女を取っ替え引っ替えしてたのは、自分の治療のため? サイテー!!!」
雪哉くんってば、ありとあらゆることをいろんな女性としたのかしら?
女はものじゃないのよ!! プンプン!!
「おまえの想像とは違う。おれはそんな、おまえが思うようなことはしていない」
彼が否定した。
「じゃあ、なんのために、彼女作ったのよ」
あたしは様々な女性と歩いていた雪哉くんを思い出して、苛立ち始めた。
「……おれさ、ひとを好きになったことがないんだ。誰かを好きになれば、おれの人生も変わるかなって思って、告白された子と遊んだりはしたよ。言っとくけど、おまえの想像する遊びとは違うからな」
「好きになったことがない……の?」
「ああ、ただの一度もな。誰か好きなひとができれば、この病気も治るかもって思ったりもした」
「……そうなんだ」
「そういうことだ。ほら、もう寝ようぜ。さすがにもう眠くなってきたわ」
雪哉くんがあくびをした。
「こ、このままはイヤ。このまま帰るのはイヤ……」
せっかく弱点を握ったのだ。
「は? おまえなに言ってんの?」
「だってあたしだけ、こんな重たい話聞かされて、余計寝れないじゃん。そ、そうだ、この秘密を誰にも言わない代わりに月一でデートしてよ?」
このチャンス、逃してたまるか。
「……おまえ、最低だな」
雪哉くんが頭をかきむしる。
なんて言われてもかまわない、あたし、雪哉くんにそんな機能なくっても好きだもん。
彼のすべてが、存在が好きだもん。
「……おまえに今日見られたのが、運のツキか……。毎月は無理、三ヶ月に一回。一時間だけならいいぞ」
「そんなの少ない、なにができるのよ! いやよ、お断りだよ。毎月、一回、半日でもいいよ。まぁ、できたら一日がいいけど。それにホントは最低でも月三回デートがいい」
「……おまえ、さっきの話聞いてたか? おれ、男の機能ないんだぞ。もう冷めただろ」
雪哉くんが少し寂しそうに、あたしから視線を逸らした。
「ううん! ぜんぜん! むしろ、雪哉くんが童貞ってわかって、俄然やる気でたよ! チェリー、バンザ~イ」
「おまえ、バカ、やめろ! その言葉を並べるな。そして大きな声を出すな」
こうして、あたしは『雪哉くんと月一デート』を無理やり約束させたのだった。