「いま少し食べてもいいかい? 先ほど晩ご飯はいただいたのだけどね」
鈴さんが『魔法の鉱石』を握り締め、優しい笑みを浮かべている。
「うん! 食べてみて! 今回のはあたしが作ったんだよ。良かったら感想聞かせて!」
あたしは雪哉くんに聞こえるように話す。
「そうかい、じゃあ一つ……」
そう言って鈴さんはカラフルな琥珀糖の中から、黄色のものを一つ手に取った。それをゆっくりと口に運ぶ。
「さぁて、ここで鈴さんに質問です。それは何味でしょうか~?」
あたしは鈴さんに問題を出した。
「……おまえ、静かに食べさせてやれよ。ホントにうるさいヤツだな」
雪哉くんが眉を寄せた。
「いいんだよ、雪哉。星奈ちゃんの明るさが私に元気をくれるんだよ……」
鈴さんがニコリと微笑む。
「そうだね、星奈ちゃんはいつも明るいもんね。まるで一等星みたいだよ。僕も明るい星奈ちゃんに救われてる。見てるだけで元気になれるよね」
聖哉さんもあたしを見て微笑む。
「えー! 一等星だなんて、そんなぁ。そんなふうに言ってもらえると、えへへ、嬉しいなぁ……」
あたしはほっぺを両手で囲む。雪哉くんの目の前で言われると恥ずかしいな。株も上がっちゃうかもね!
「兄貴も疲れが出て、おかしくなってんだろ。あんまり褒めると、コイツすぐに調子に乗るぞ」
雪哉くんの毒があたしを襲う。
「なっ! ひ、ひど……」
ひどいと言いかけた時、鈴さんが口を開いた。
「これはレモンだね。なんて優しい味のレモンだ。こんなの、初めて食べたよ……」
鈴さんの目に涙が溜まっていく……。
そんな鈴さんを見て、みんなの眉が下がる。
……昨日から色々ツラかったよね。うんうん。
あたしは鈴さんをそっと抱きしめた。
「いっぱい泣いて、ぜんぶ吐き出そ……」
「星奈ちゃん、ごめんね」
泣きながら話す鈴さんの声は、うまく聞き取れない。
「いいよ、謝らなくて。大丈夫だよ。あたしはこれぐらいしかできないけど、鈴さんが落ち着くまで、ずっとこうしてるからね!」
あたしは鈴さんをしっかりと抱きしめた。
その様子をしばらく雪哉くんも聖哉さんも眺めていた。鈴さんの泣き声だけがこの部屋に広がっていった。