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第19話

「いま少し食べてもいいかい? 先ほど晩ご飯はいただいたのだけどね」

 鈴さんが『魔法の鉱石』を握り締め、優しい笑みを浮かべている。


「うん! 食べてみて! 今回のはあたしが作ったんだよ。良かったら感想聞かせて!」

 あたしは雪哉くんに聞こえるように話す。


「そうかい、じゃあ一つ……」

 そう言って鈴さんはカラフルな琥珀糖の中から、黄色のものを一つ手に取った。それをゆっくりと口に運ぶ。


「さぁて、ここで鈴さんに質問です。それは何味でしょうか~?」

 あたしは鈴さんに問題を出した。


「……おまえ、静かに食べさせてやれよ。ホントにうるさいヤツだな」

 雪哉くんが眉を寄せた。


「いいんだよ、雪哉。星奈ちゃんの明るさが私に元気をくれるんだよ……」

 鈴さんがニコリと微笑む。


「そうだね、星奈ちゃんはいつも明るいもんね。まるで一等星みたいだよ。僕も明るい星奈ちゃんに救われてる。見てるだけで元気になれるよね」

 聖哉さんもあたしを見て微笑む。


「えー! 一等星だなんて、そんなぁ。そんなふうに言ってもらえると、えへへ、嬉しいなぁ……」

 あたしはほっぺを両手で囲む。雪哉くんの目の前で言われると恥ずかしいな。株も上がっちゃうかもね!


「兄貴も疲れが出て、おかしくなってんだろ。あんまり褒めると、コイツすぐに調子に乗るぞ」

 雪哉くんの毒があたしを襲う。


「なっ! ひ、ひど……」

 ひどいと言いかけた時、鈴さんが口を開いた。


「これはレモンだね。なんて優しい味のレモンだ。こんなの、初めて食べたよ……」

 鈴さんの目に涙が溜まっていく……。


 そんな鈴さんを見て、みんなの眉が下がる。


 ……昨日から色々ツラかったよね。うんうん。


 あたしは鈴さんをそっと抱きしめた。

「いっぱい泣いて、ぜんぶ吐き出そ……」


「星奈ちゃん、ごめんね」

 泣きながら話す鈴さんの声は、うまく聞き取れない。


「いいよ、謝らなくて。大丈夫だよ。あたしはこれぐらいしかできないけど、鈴さんが落ち着くまで、ずっとこうしてるからね!」

 あたしは鈴さんをしっかりと抱きしめた。


 その様子をしばらく雪哉くんも聖哉さんも眺めていた。鈴さんの泣き声だけがこの部屋に広がっていった。

















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