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第23話

「え?」

 あたしの頭はこの状況に対応できない! だってこんなことされたことない! 

 雪哉くんのことが好きだから、今までだってずっと交際を申し込まれても断ってきたのに……!!


 こ、この状況はなに?


 いきなりこんなこと……! 


 こ、こんな……!!


 お、おいしすぎる展開~!! まっ、待ってましたぁ!!!


「雪哉くん……」

 あたしは目を閉じた。こういう状態の時はこうするもんだと、昔見ていた少女漫画が教えてくれた。


「……星奈、おまえ……」


 ほらやっぱり雪哉くんも戸惑ってる。お互い、未経験だから慣れないよね。でもあたし、待つよ、いつまでも。

 こういう時は、女からがっつくのはみっともない行為なハズ……。


「……おまえ、ほんとに馬鹿だな。少しはビビった態度見せろよ」

 雪哉くんの手があたしから離れたと思ったら、おでこに軽くデコピンされた。


「あてっ」

 あたしはデコピンされた場所を手でさする。


 雪哉くんはベッドの端に腰かけていた。


 ……なぁんだぁ、つまんないの。キスぐらいしたかったなぁ……。


「星奈、おまえさ、兄貴と飯食い行くの?」

 雪哉くんがあたしに背中を向けたまんま、尋ねてきた。


「え? ああ、うん、行くんじゃないかな?」


「行くんじゃないかなって、おまえ自分のことだろ」


「ああ、うん。じゃあ約束したし、たぶん行く!」


「たぶんか……、結局行くのかよ。まぁSSコンビでいいんじゃね」


「な、なによ~、SSコンビって」


「星奈と聖哉でSS」


「あ、スーパースターだね! 聖哉さんとあたしで」


「つまんね」

 雪哉くんの冷たい言葉が飛ぶ。


「ねぇ、雪哉くんも一緒にいこっ!?」

 あたしは雪哉くんの背中に向かって声をかけた。 


「……行かない」


「なんでなんで。あたし、雪哉くんがいるほうがいい!」

 あたしはどさくさに紛れて、雪哉くんの背中に抱きついた。隙ありぃ~!! やったね! 


 今、ここでは二人きり。振り払われてもいいもん! 初めての雪哉くんの背中……、きゃー! あったかいし、大きな背中~!


「……しかたがないから、行ってやるよ。おまえの世話も兄貴一人じゃ、大変だろうしな……」

 内容は相変わらず塩だが、雪哉くんの声のトーンがおかしい。


 あたしを振り払おうともしない。え? 想像してたのと違う……。『やめろよ!』って言わないの……?

 え、このまま、まだしばらくこうしてていいの?


「……ハァ。おまえさ、用が済んだなら、早く出て行ってくんない……?」

 雪哉くんがなぜか、ため息をつき、すばやくもう一度ベッドに入った。


「せっかく起こしたのに、もぅ……!!」

 あたしが掛け布団を剥がしにかかると、雪哉くんが落雷のような大声を出した。


「今、布団をおれから奪ったら、おまえを許さないからな!! きちんと起きてるから早く、早く出ていけよ!!!!」


 ヒ、ヒィ~!!


 あたしは慌てて彼の部屋を飛び出した。


 ……な、何事? あたしなんかした? あ、抱きついたから、あんな怒ってんのか……。普段、あんなに大声出さないのにな。

 あたしとくっつくの、そんなにイヤだったの……?



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