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第24話

 あたしは雪哉くんの部屋の前に立っていた。涙が出そうだ。


 ……あたしバカだ、調子に乗りすぎだ。


 え、そんなにあたしとくっつくのイヤだった?

 あんな落雷を落とすほど?


 ……あたし、むちゃくちゃ嫌われているんだ。


 泣きそうになるのを必死にこらえて、あたしは自分の部屋に走って戻った。

 ベッドに寝転んで涙を流す。


 ……失恋だね、これは、もう、決定だ。


 しばらくすると、下から「星奈ちゃん、朝ごはんよ~」って母の声がした。


 ……お母さん、応援してくれたのにごめんね。雪哉くん、相当あたしのこと、きらいみたい……。


「う、うん。今行くね~」


 あたしは涙を拭いて、ファンデを塗り直して下に降りた。これで泣いていたってバレないはず。


 下に降りると、父と母と兄、そして梅乃宮一家の方々がそれぞれ席に着いていた。


 みんなで大きなテーブルを囲んでいる。駒塚と家政婦二人がお皿を並べたり、お料理を運んだりしている。今朝は洋食らしい、いつもの如くご馳走だ。 


 気が利きすぎる母のせいで、またしても左の席が聖哉さん、右の席が雪哉くんだ。


 母は雪哉くんか、聖哉さん、どちらかとくっつけばいい、と思っているのかもしれない。


 どちらの梅乃宮くんもお隣が過ぎる。

 あたしは気まずい中、自分の席に座る。


 席に着くと駒塚がお水を注いでくれた。あたしはテーブルナプキンを半分に折って膝に乗せた。右にいた駒塚がいなくなると、あたしと雪哉くんはなぜか目が合った。雪哉くんがあたしを見ていたらしい。


 え!? さっきのこと、まだ怒ってるの? 


 あたしから顔を逸らした。 


「いやぁ、みんなで食べる朝ご飯は美味しいねぇ~」

 父が上機嫌で焼きたてのクロワッサンを食べている。


「ほんと、ほんと。楽しいわぁ。大家族みたいね!」

 母の言った言葉にあたしは吹き出しそうになった。


 大家族……。雪哉くんと家族になれたら、こんな感じなのかなぁ。


「こんなによくしていただいて、本当にありがとうございます。何もしないで置いてもらうわけには行きませんので、私にもなにか仕事を与えてください」

 鈴さんが申し訳なさそうに言う。



「ばぁちゃん、食事中にやめろよ。後にしろよ」

 雪哉くんが鈴さんに注意する。


「あらぁ、いいんですよ。梅乃宮さんにうちは昔、とってもお世話になったんですから。特にお母様にはよくしていただいたわ。さすがは梅乃宮家の人間だと思ったわ」

 母が鈴さんの申し出を笑顔で断わりながら、わけのわからない話を始めた。


「そうですよ。うちのほうが、もっと早くなにかしなきゃいけなかったんですよ。梅乃宮財閥にはお世話になりっぱなしだったんですから。いやぁ、あんなに小さかった御子息二人がこんなに立派に育って、梅乃宮家も安泰ですなぁ」

 父が喜色満面で、昔を懐かしんでいる様子で話す。


 その話に数字にうるさい兄が頷いている。兄もなんか知っている感じ。


 え? 梅乃宮財閥? ん? あの有名な財閥? ……なんの話?


「おじさん、その話はちょっと……」

 雪哉くんが父の話を止めた。



 は? はぁ? 


 も、もしかして雪哉くんも、聖哉さんも、あの梅乃宮一家の御曹司なの~ぉ!?   


 は、はぁぁぁぁぁぁ!? 日本、いや、世界進出までしている大企業なんですけど〜!!!?








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