「…………」
なにも話さない雪哉くん。完全に尾行したと思われてる。
「あたし、今回はほんとに後をつけてたりしないからね」
そんなあたしの言い訳の対して、顔を露骨にしかめた雪哉くん。
「お客様、ご注文はお決まりですか?」
あくまで店員口調でしか話さない雪哉くん。
それもそのはず、雪哉くんの後ろで先輩店員と思われる女性が怪訝な顔をして、こちらを見ている。会話の内容からあたしを不審者だと思っていそうだ。
「あ、じゃあ、今が旬のグレープフラッペソーダをください」
あたしは外の看板にあった美味しそうな、期間限定のフラッペを注文した。
「……こちらでお召し上がりですか?」
穏やかな口調で話す雪哉くんは、ここのベテラン店員みたいだ。
「もっちろん! ここでお召し上がりです!」
あたしは答える。雪哉くんの口角が上がり、少しだけ笑った気がした。
「では税率10%でお会計が、七百五十円になります」
テキパキとレジを操作する雪哉くんに見惚れるあたし。
幸い、あたししかお客さんはおらず、フラッペの仕上げをして雪哉くんが飲み物をあたしに渡してくれた。
「どうぞ、ごゆっくり」
にこやかに微笑む彼に、見惚れるあたし。
こんな笑顔が見れるなら、あたし、毎日でもここに通う! この笑顔は七百五十円以上の価値があるよ。
あたしはレジカウンターがよく見える席に座った。これで彼を眺め放題だ。
こんなにスタビの制服が似合うなんて、すごいよ、雪哉くん。そのエプロンはもはや雪哉くんのためにデザインされたんじゃないかな?
もうなにしても、ときめきしかないよ。
「よ! ストーカー星奈! まだ元気にストーカーやってんか?」
あたしの真横から、若い女の子の声がした。
「
あたしの友達の凛ちゃん。同じ高校で、彼女は今、大学三年生だ。あたしと違って頭がいい女の子。
たまに毒舌がキズだけど。
「元気そうじゃん、星奈!」
「星奈、相変わらず元気そうね」