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第38話

「それより星奈さぁ、まだ監視が続いているんだねぇ。お嬢様も大変よね。成人してまで続くと思わなかったわ」

 凛ちゃんがなにか訴えかけるような目で見てきた後、視線をあたしから隣の席に移動させた。


 そこには新聞を読んでいる中肉中背の中年男性の姿があった。甘党らしく、苺のドーナツが三つもテーブルに置かれ、アールグレイのフラッペを飲んでいる。


 見覚えのある、黒いポロシャツ……。ベージュのズボン……。


 あたしは立ち上がって、新聞の隙間から男性の顔をのぞこうとするが、男性も必死に新聞で顔を隠している。


植木うえき? 植木でしょう!?」

 あたしは語気強く言った。


「……はい、植木です。お嬢様」

 男性が観念したように新聞を下げた、そこにはうちの庭師の植木の姿があった。どこにでもいそうな普通のおじさん、植木。

 眉が下がって、すっかり困り顔になっている。


 なんてことだ。あたしも尾行されていた。今回の尾行任務は庭師の植木だったらしい。ストーカーする側もストーカーされていた。


「ほんと、過保護よね。星奈の家族。星奈かわいそう」

 冷めた声色の京香の声が聞こえた。


 ……そう、あたしは家族からこうしてずっと守られている。もう大人なのに、高校生の時となんら変わらない……。


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