「それより星奈さぁ、まだ監視が続いているんだねぇ。お嬢様も大変よね。成人してまで続くと思わなかったわ」
凛ちゃんがなにか訴えかけるような目で見てきた後、視線をあたしから隣の席に移動させた。
そこには新聞を読んでいる中肉中背の中年男性の姿があった。甘党らしく、苺のドーナツが三つもテーブルに置かれ、アールグレイのフラッペを飲んでいる。
見覚えのある、黒いポロシャツ……。ベージュのズボン……。
あたしは立ち上がって、新聞の隙間から男性の顔を
「
あたしは語気強く言った。
「……はい、植木です。お嬢様」
男性が観念したように新聞を下げた、そこにはうちの庭師の植木の姿があった。どこにでもいそうな普通のおじさん、植木。
眉が下がって、すっかり困り顔になっている。
なんてことだ。あたしも尾行されていた。今回の尾行任務は庭師の植木だったらしい。ストーカーする側もストーカーされていた。
「ほんと、過保護よね。星奈の家族。星奈かわいそう」
冷めた声色の京香の声が聞こえた。
……そう、あたしは家族からこうしてずっと守られている。もう大人なのに、高校生の時となんら変わらない……。