あたしは家族から信用されていないのか、まだ子供だと思われているのか。
菜奈ちゃんはとっくの昔に、一人暮らしをしているのに……?
今日の今日まで、まだ私の護衛がついているとは思いもしなかった。
『月縁堂』で和菓子を売り、和菓子を作り、税金を払い、もう立派な社会人だと……、家族からももう一人前だと思われていると思っていた。
「植木、帰っていいよ。もうあたし子供じゃないよ」
力なく、あたしは口にした。
二十一にもなって、大人、成人として扱われていない……。
「しかしお嬢様、ご家族はあなた様を大事に思って……」
植木にも植木の立場があるんだろう……。
「そ、そうよ、星奈。家族に愛されている証拠よ」
愛美がフォローしてくる。だが京香と、凛ちゃんは憐れみの目であたしを見ているのが空気でわかった。
中学も高校も雪哉くんと同じ公立に通わせてもらい、でもいつもあたしだけ送迎付き。同級生らがあたしをどこか遠巻きにしている時もあった。
これが子供の時から窮屈でしかたがないんだ。いつになったら、あたしも菜奈ちゃんみたいに、兄みたいにきちんと大人扱いしてもらえるの?
さっきまで盛り上がっていたテーブルは静かになった。友達の目にはあたしはどう映っているのだろう……。
時刻はもう午後七時半だった。
「じゃあ、そろそろ帰ろっか。お腹も空いたし……」
京香が言った。気まずくなったし、もう帰りたいのだろう。
尾行している側は尾行に気づかない説は本当だった。
しんとなったテーブル席を雪哉くんが見ているのが視界に入った。
……ねぇ、なんでこんな時だけ見てるの? 見ないでよ。
「ここ閉店も二十時だったわよね。そろそろ帰ろっか」
凛ちゃんが立ち上がった。
「そうだね。帰ろっか。植木も一緒に帰ろっか!」
あたしは目一杯、努めて明るく口にした。
植木が悪いわけじゃない、頼りないと思われている自分が悪い。