「星奈、大丈夫か?」
そこには先ほどと打って変わって、見たこともないぐらい優しい表情の雪哉くんが立っていた。
「!!」
あたしは雪哉くんにしがみついた。まだ脚が震えている。
「ごめんな。怖かったろ」
雪哉くんが謝るなんて珍しかった。
「……ううん。すぐ雪哉くんが助けてくれたから大丈夫」
雪哉くんの胸の中はあったかくて、案外逞しかった。
あたしの頭を撫でる雪哉くんはとても優しくて、今日という日は本当に夢なんじゃないかって思った。
「おまえのお弁当の効果、あったかもな」
なぜかあたしからパッと離れると、雪哉くんは歩き出した。
「お、お弁当、食べてくれたの!?」
あたしは彼の背中に話しかける。愛情をたっぷり込めた、朝四時起きのお弁当。
「……ああ。おかげで晩飯もうどんだけでお腹いっぱいだ。さっきのファミレスは弁当のお礼だかんな」
雪哉くんがあたしに合わせて歩き出した。
「ねぇ、まだ怖いから、手を繋いでもいい?」
あたしは上目使いで彼を見た。身長差でどうしてもそうなってしまう。
「ちっ! 今だけだからな」
雪哉くんが舌打ちをしたが、あたしが手を握ると握り返してくれた。
「だって、彼女なんでしょ!?」
さっき確かに彼はあたしを彼女だって言った。
「……おまえ、あれは仕方なく言っただけってわかるだろ。すぐに調子に乗りやがって……」
雪哉くんと駅まで手を繋いで、電車に乗った。電車でもお隣。調子という波に乗ったあたしはまだ彼と手を繋いでいる。
今までこんなに隣にいられたことない。感謝感激。
「おまえ、すっかり元気だな。ま、おまえらしーわ」
雪哉くんがあたしをみて、皮肉めいたことを言ってきたが、その表情はなぜか穏やかだった。