最寄り駅から家まで二人で歩く。
「おいっ! いつまで手を繋いでんだよ! いいかげん離せよ!」
雪哉くんとついに手を離した。
「えー。ケチケチケチ! もうちょっといいじゃん。またナンパされたら雪哉くんのせいだかんね!」
もう無理やりなこじつけだ、自分でもわかっている。
「今度はそうさせないよ」
雪哉くんが真顔であたしを見つめてきた。やっぱり今日の雪哉くんはおかしい。心臓に悪い。いつも塩対応なのに、突然こんなふうになったら調子狂うよ。
あたしはドキドキしながら、彼の隣を歩いた。彼からはいつもの石鹸のようないい香りがした。あたしの心拍数を上げる匂いだ。
普段と違う雪哉くんを意識したら恥ずかしくて、急に居た堪れなくなった。彼の方を見れない。
何気なく左側を向くと、昔遊んでいた公園が目に入った。懐かしい……!!
ブランコと滑り台しかない、小さな公園。
「あ! ねぇ、雪哉くん、ブランコ乗りたい! 寄ってこ!」
あたしは公園めがけて走り出した。
「あ、お、おい! こらっ!」
雪哉くんがあたしを追いかけて公園に入ってきたのがわかった。
***
「まったく、おまえは……」
「えへへ。大人になってから夜に乗るブランコって、なんだかワクワクしない?」
あたしは不思議な世界に入り込んだ気分だった。
雪哉くんと二人でブランコに乗っている。あたしは足を使い、ブランコを高く高く漕ぐ。
あたしにとって、夢のようなデートの時間だよ。初めてこんなに二人で過ごしている。
……だから聞けるよ、今なら、告白の返事を聞くことができる。
「ねぇ、雪哉くん。あたし、きちんと告白の返事を聞きたいな……。気持ちはっきり言ってほしい。付き合えるのか、付き合えないのか……」
自分でもびっくりするぐらい自然に言えた。
「!!」
雪哉くんの顔に明らかに戸惑いが混じった。まさか今、こんなところで言われるとは思ってなかったらしい。
「あたしと一緒に住んでるからって、遠慮とかいらないから。そういうの、いらない……」
あたしは雪哉くんのほうを見れない。怖い……。
心臓が早鐘を打つ。イヤな感じでどんどん早くなる鼓動。
「星奈……」
雪哉くんは言葉に詰まっていた。
「いいの。もう片思い十五年して、いいかげんけじめつけなきゃ、って思うし」
ほんとは聞きたくない。このまんまでいたい。
「じゃあ言うわ」
雪哉くんがブランコを漕ぐのをやめて、あたしをまっすぐに見つめてきた。
「……うん」
あたしもブランコを漕ぐのをやめて、彼を見た。彼の大きな涙袋からなにか出てきそうだ。