一等星だけが夜空に輝いていた。この街は明るすぎて、他の星は見えない。
「おれ、おまえのこと……」
雪哉くんの顔をまともに見れない。どんなことを言われるのか、ただ怖い。
「……うん」
「好きかわからない……。だから付き合えない。これがおれの答え」
「……はっ? わからない?」
「前にも話したけど、おれさ、多分、ひとを好きになるって感情がない。それがどういうことかもわからないんだ。それはおまえに対しても同じ」
雪哉くんは
「え? ドキドキしたり、胸がこう熱くなったりしないの?」
「しない……。だから多分、そういう機能も不全だったんだけど……」
彼はあたしから顔を逸らした。そして言葉を続けた。
「でも、最近はそうでもないんだよなぁ。なんでだろうなぁ……」
今度は雪哉くんが高く高くブランコを漕ぎ出した。
「え? 治ったの? なんで? なんか治るようなことがあったの?」
あたしは彼のカミングアウトに驚いた。
「……おまえには、おまえにだけは言わない」
彼は懸命に立ち漕ぎをしながらあたしに言った。
「おまえといるとイライラもするし、うるさいし、いつでもどこにでも現れるけどな。だけど、おまえといると退屈だけはしない。それにおれはおまえのことがきらいじゃないらしい」
「……らしいってなに?」
「……さぁな。おれにもわかんない」
口を真一文字に結んで、それ以上彼は話す気はないようだった。
しばらくして急にブランコから飛び降りると、雪哉くんは『もう帰ろうぜ』と言って歩き出した。
さっぱりわからない答えだったけど、『きらいじゃない』から『好きかわからない』に昇格した気がした。
……それと同時に雪哉くんの男性機能はよくなっているらしい? ん? これに関してはデリケートな問題だから深く聞くのはやめようと思う。
付き合えないか……。まぁ、それに関しては想定の範囲内よ! 星奈! 今夜は大きく前進したわよ!
あたし、完璧に振られるまで、い、いや、完璧な答えをもらう、その日まで頑張る!
未来なんてわからない、悪い思考は捨てて、あたしは雪哉くんといる未来を想像するんだから。
「あたしさ、まだ雪哉くんのこと、好きでいていいの?」
それが今、一番聞きたいことだった。
「……好きにすれば?」
一瞬立ち止まって彼は言った。こちらを見てはくれなかったけど、その背中は前よりも近い気がした。
その日帰ると、雪哉くんが父と母にこんな話をした。
「星奈さんももう大人です。本人の自立のためにも監視や護衛は不要だと思います。星奈さんが大事なのはわかりますが、僕自身も出過ぎた真似をしてるとは思いますが、一度彼女のために、なにが一番いいのか考えてあげてください」
彼はあたしの気持ちをわかってくれていた。子供扱いされて、落ち込むあたしに今夜は付き合ってくれたのかな……。