「え……、菜奈ちゃん、雪哉くんのこと、す、好きなの……?」
あたしの嫌な予感は的中した。そして菜奈ちゃんは何故か距離を詰めてきた。
ずんずんと迫ってくるこの感じ、雪哉くんと似てる……。
……宣戦布告だろうか?
菜奈ちゃんはあたしを見てクスっと笑った。
「そういう好きじゃないわよ。医学的に興味があるのよ」
菜奈ちゃんの黒い瞳は輝いていた。楽しそうだ。
「え? どういうこと?」
「彼って完璧だけど、どこか冷めてるじゃない? なにを考えているか、まったく見せないし……」
「そ、そうかな?」
菜奈ちゃんがあたしを見て、首を傾げた。
「星奈鈍いわね、やっぱり、ニブチン! あの貼り付けたような、つまらない笑顔。大学でもそうよ。迷惑かけられても怒ることもないし、あんなに感情を見せない人間も珍しいわ。天然記念物よ」
菜奈ちゃんの言葉にあたしは戸惑った。
……あたしにはあんなにいじわるなのに。菜奈ちゃんはそういう気持ちかもしれないけど、雪哉くんは菜奈ちゃんのこと、好きかもしれないじゃない。あたしには笑ってくれないよ。
「鈴さん、私もしばらくここにいるから、また散歩しようね。今日は暑いから、中に入ってお茶でも飲みましょ」
鈴さんに声かけをして、菜奈ちゃんは鈴さんの隣を歩いている。
大学での雪哉くん、見てみたい……。どんな感じなのかな……。想像つかないや。
***
あたしが部屋で寝転んでT Vを見ながら、脚痩せのストレッチをしていると部屋がノックされた。
このノックの仕方は菜奈ちゃんだ。高速ノックだからすぐにわかる。
「はぁい」
あたしが返事をするとドアが勢いよく開いた。
「あんた、またそんなストレッチしてるの? 効果あるの、それ? ねぇ今から本屋行かない? どうせヒマでしょ?」
あたしはヨガマットを敷いて、寝転んで腰だけを思い切り上げるストレッチをしていた。
あたしの予定はまるで無視だ。菜奈ちゃんの毒舌は本日も健在だった。